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#193 スクールランブル考:八雲座敷童子(ざしきわらし)説
投稿者:LD <2007/04/18 02:18>
……え〜っと?いきなり突拍子もない表題を書いてしまいましたが……本人わりとマジなんで物を投げないで下さいw
「スクールランブル」第7巻まず何でこんな話になっているのかというと、僕が「スクールランブル」という作品を読んでいて「ん〜。もしかしてこの作品って恋愛が主体の作品ではない?」という着想を持ったからです。
無論、普通に読めば、主人公の塚本天満が烏丸大路にどのようにその思いを伝えるか?そしてもう一人の主人公である播磨拳児がどのように塚本天満にその思いを伝えるか?そこに焦点がおかれてこの物語が紡がれて行っているように思えます。また連載の早くから結城つむぎの花井に対する動向に目をつけていた僕としては、次第に彼女の行動が表層化して行く事に醍醐味を感じています。これを恋愛が主体ではない?という読みをするのはなかなか難しい。
しかし、同時になんとな〜く付き合い始めた美琴と麻生が特に何もないまま、なんとな〜く別れてしまったり、あれほど播磨に入れあげていた沢近さんが、ある日ふっとスイッチが切れるように播磨に冷めてしまう…。
いや「漫研」のチャットに参加してもらっているいずみのさんのお話や、その他の分析で、キャラの構成として理解できるところまでは落とし込めてはいるんですよ?(ここでは細々と語りませんが)しかし、同時に正直に言えば「そんな事言ってもズッキンドキドキを期待した、俺様のピュア・ハートは一体何処へ行けばいいの?」という払拭し難い思いを抱えてもいたわけです(汗)
…で、もうちょっと別の角度の視点、有体に言えば“恋愛じゃない視点”を確保できないかな〜?と考え一から単行本を読み解いてみる事にしました。
これ、既知の人には今更何を…と思われると思います。実際「スクールランブル」の中に“恋愛じゃない視点”はそこらじゅうに散見されます。…そしてこれも全く既知の事ですがその中心に塚本八雲がいたと。今回はそ〜ゆ〜話です。


まず、僕が「スクールランブル」を再チェックして目についたのは「♭シリーズ」でした。本編の外伝、番外編、あるいはストーリーの補完的に描かれている「♭シリーズ」ですが、このシリーズの主人公は塚本八雲と明記されています。完全番外で全く八雲と関わりのない物語が描かれる事もあるのですが、それは(天満を主役ととらえた)本編についても同じ事が言え、かつラストのコマなどになるべく八雲を登場させるなどの配慮がなされており主人公としての体裁が整えられています。
そしてこの「♭シリーズ」はかなり超常的な事件もかなり起こっています。本来、この超常現象は本編には侵食しないように配慮されているのですが、「♭シリーズ」が本編の捕捉、裏打ち的な性格を持っている事もあり、どうしようもなく漏れ出てしまっている事もあります。この「♭シリーズ」から検証の始点にしたいと思います。

■矢神市は神霊地
「♭シリーズ」を検証する前にまず舞台設定の確認をします。「スクールランブル」の登場人物たちが生活する矢神市は、神社・寺社が大きな存在感を持っています。元々、神社の名前である「矢神」がそのまま地名となっている土地ですし、学生たちは散歩や待ち合わせの場所にかなり選んでいるらしく場面転換の合間合間にしばしば神社・寺社の風景は描かれています。また、♭12[Vol.2]において多数の獣を匿う場所として矢神神社が選ばれています。
八雲が伊織を探して気がつくと矢神神社まで来ている描写が何度かある事を考えると塚本家の所在地は矢神神社にかなり近い場所(すぐ裏?)にあると思われます。周防家にも近いとの事ですが……矢神神社の敷地がかなり広いって事かなあ?
他愛もない情報に思われるかもしれませんが、僕はこれを重要視しています。つまり「スクールランブル」の舞台には山川と森林があり、古き物が多く残り、そこは神霊の宿る社によって見渡されているわけです。何か不思議な事があっても不思議じゃない。…そういう舞台設定になっています。ちなみに実在の矢神神社は茨城県にあって大和武尊を祀っているとの事ですが…矢神市の景観その他は鎌倉がモデルという情報があります。
「スクールランブル」第10巻
■怪奇!伊織は化け猫
さて「♭シリーズ」の検証に入りますが、まず一番手は何と言っても八雲と最初に接触した伊織でしょう。単刀直入に結論から入りますが伊織って化け猫だよね?人間的な意志を持つかのように行動し、自らの精神と他者の精神を幾度となく(♭17[Vol.6]、♭26[Vol.9]、♭43[Vol.16])入れ替え(特に嵯峨野のおばあちゃんを単独に載せる♭26[Vol.9]が大きい!)、後述の幽霊少女が創り出した空間(♭29[Vol.10])に閉じ込められた八雲を救い出しました。これだけの超常現象の焦点となっている彼が普通の猫というのはいささか無理があります…よね?w
彼はおそらく矢神神社を根城として、食事は塚本家のお世話になっています。八雲以外の幾人かのキャラにも懐いていますが、その視線は絶えず八雲の方へと向けられています。

■恐怖!幽霊少女は八雲を狙う
先の伊織と違って幽霊少女(幽霊という事になっているけど多岐の能力を持ちもう少し上位存在に思えます)は明らかに超常現象である認識がされていると思います…あるいは八雲の深層心理が生み出した幻影と解釈する事も可能なのでしょうがここでは、実際に起こっている現象として考えます。状況的に考えても八雲を取り巻く環境にはそれらが起こり得るものとして並列されているのは確かだと思いますので実際の現象と考える方が妥当でしょう。
この幽霊少女、何故、八雲を狙うのでしょうか?恋愛しない娘が恋愛する方向に(いささか脅しを入れながら)導く事を趣味としているようですが、サラでは駄目なのでしょうか?あるいは沢近さんでは駄目なのでしょうか?…まあ実はその理由は明言されていますよね。彼女(?)は八雲の持つ「特殊能力」に引きつけられて八雲に取憑いています。滅多に登場はしませんが、その視線は常に八雲を監視しています。

※それと幽霊少女は「あなたは一人ぼっち」という言葉を八雲に投げかけます(♭29[Vol.10])が、この指摘はあまり正しい指摘とは言えません(少なくとも一人だけの空間に閉じ込め暗にあなたはこういう状態よという程には…ま、八雲自身にも反論されているんですが)。彼女が注視している「恋愛」という視点をはずせば、八雲はそれこそ人間・動物・もののけの垣根を越えて他者の追随を許さぬ圧倒的交友関係を誇っています。明らかに顔が広いwしかし、その恋愛のみに注視する幽霊少女の視点は序文で述べた僕の視点と合致します。それはこの作品を読むに辺り頭から否定される視点ではない事を指し示してもいると思います。
…それとは別に実はこの「一人ぼっち」の指摘はあながち的外れではないかも?というのが本論なんですけどね(!)w
「スクールランブル」第9巻
■衝撃!ドラキュラ参上
♭25[Vol.9]において吸血鬼がゲスト登場します。このエピソード「まぁた、小林先生は思いつきで適当なネタ描いてんな?」とか思った人はいませんか?…僕は思いました(汗)しかし、適当かどうかは置いておくとして、この作品において彼は登場し得る人物だったという事を指摘しておきたいです。この他にもピョートルや空太など動物ともののけの狭間にいるようなキャラも登場します。けっこうここらへんの読者のボーダーって人によって違うと思います。「ピョートルはいい。空太も許そう。しかしドラキュラは許せん!」とか「幽霊少女は恋愛感情を問う役割を持っているからいいんだ。しかしドラキュラは何もない!」とか…まあ、ピョートルあたりからスルーしちゃう人もいると思います。僕はドラキュラは大半の読者に無視されているんじゃないかと思っています。まあ僕もそれほど重要なキャラには思っていません。でも、居るんだからどうしようもないwついでにフランケンもいるらしいですw「居る事」は無視できませんw
まあ、それはそれとしてこのドラキュラ、八雲の血を問答無用に吸おうとします(未遂でしたが)。まあこの場合、サラとかは自分の正体がばれているのでは?という懸念から慎重になったのでしょうけど…いずれにせよ矢神市で起こる超常現象の多くは八雲に向かっている事が分かります。

■戦慄!超能力少女八雲
最後は八雲自身の超能力「自分に好意を持つ相手の心が読める」話に移ろうと思います。…とは言ってもこれこそ周知の塚本八雲の設定そのもので、好意の範囲が「ちょっとクーラーを修理に来たおっさんの興味もこれに当たる」という恐ろしく広い物だとか言える程度なんですが…。
補足として八雲のこの能力は基本的に「♭シリーズ」の中に留められているのですが、本編において播磨にそれを言い当てられるエピソードが存在します。しかし、この時も能力が発動するシーンは慎重に「♭シリーズ」の中に隔離されました。しかし「♭シリーズ」で描かれる「八雲の世界」が本編(現実世界)を浸蝕する一例と言えます。
あと読心能力以外に気になるところとして、幽霊少女が現れた時、八雲曰く「姉さんかと思った」というシーンがあります。とりあえず僕は今回「幽霊少女の気配を既に感じていた」ととりますが……多分、違いますよねえ?なかなか意味深な言葉です。もう少し検証の必要があるように思います。


さて一通り「♭シリーズ」の超常現象の検証をしましたが、僕の主張は簡単です。これだけ超常現象に囲まれて自身も超常なる力を発現しているのに、彼女が人間だと思う方がむしろ不自然じゃない?というものです。どうでしょう?w
まあ、まったく逆に超常現象の多くが「♭シリーズ」に隔離される傾向にある事から、読心能力や幽霊少女など全て八雲の「空想」と解釈する方法もあると思うのですが、これにつては後述しますが、八雲のキャラ格の高さや「♭シリーズ」の本編への浸蝕力を考えると、あまり採用すべき解釈にも思えません。

少年マガジン2007年14号じゃあ彼女は何なのか?まあ表題に書いたように、とりあえず何かの「もののけ」かなあ?と僕は考えているわけです。……はい。物を投げないで下さい。ぶっ飛ばされても話は続けちゃいますよ?…「座敷童子説」を上げているのは、民家に棲んでいる「もののけ」って何だろうなあ?とか。塚本家って古い蔵があって(矢神市では珍しくないみたいですけど)おそらく何代か続いている家なんだろうなあとか。その家を栄えさせる(幸せを願う)もののけ…?とか考えたり、矢神神社(神霊地)にも近とか。「座敷童子」って好き放題外で遊ぶ妖怪ですけど、基本的には人に祀られる「神様」でもあるんですよね。そこいらへんイメージと合うかなあと。まあ、ぶっちゃけ適当ぬかしてるんですが。……はい。物を投げないで下さい。どんどん話を続けますよ?…いや「八雲立つ」名にちなんで神無月に出雲に戻られる神様そのものでもいいんですけどね。まあ、そういう「人間でない何か」という話になります。
そうやって考えた時に何かが弾けたというか、パラダイム・シフトが起こったというか、それまでの八雲の行動の全てが「分かる」気がしたわけです。いや今までも八雲は理解不能解釈不能な行動をとって来たわけではないんですけどね。恋愛に不器用な女の子、または恋愛に臆病な女の子、あるいは恋愛に無関心な女の子、と言った観方以外の別の「八雲の見ている世界」が見えてきた気がしたのです。
言ってしまえばゲゲゲの鬼太郎にとって「僕はユメコちゃんが好きなんだろうか…?」という問題がどれほどのプライオリティを持っているか?って話でもあります。彼はある意味恋愛沙汰なんかよりよっぽど面白い目にあっているし、それは八雲も同じである事は検証済みです。そしてバックベア−ドが来襲しようが、ぬらりひょんが跳梁しようが、鬼太郎にとって一番の関心事は「父さんの茶碗風呂をいつ沸かすか?」であって、それは八雲にしても「姉さんに気を利かせて「三匹が斬られる!」の録画予約をしておく」事は何より優先すべき事でしょう。

勿論。も・ち・ろ・ん!「八雲は(ちょっと特殊能力があるが)普通の人間の女の子でただ単に不思議な事件が回りで起こっているだけなんだ」と考える事もできます。というかそれが普通です。しかし、ここで、もう一方の根本的な問題を上げますが、なんで天満と八雲の姉妹あれほど似ていないんでしょうね?姉妹が全然似ていないなんてよくある話ですか?ただ、八雲はお姉ちゃんが好き過ぎて恋愛感情から遠ざかってしまっている事を否定する人は少ないと思います。しかし普通、血縁者を好きという感情は潜在的なもので他人を好きになる事の障害にならないはずです。(実際、姉は両立している)
でも、八雲には障害になっている。僕は「八雲はただ単に異常なほどお姉ちゃんが大好きな娘」と考えるよりは、その(恋愛に障害になるほどの)強い感情が血縁とは別のところから来ていると考える方が、塚本八雲という人間(?)が理解できるような気がするのです。

まあ理詰めっぽく語ってもどんどん胡散臭くなるかもしれませんwただこのヒントを元に八雲を取り巻く超常環境、超常能力を再確認してみると、僕にはもはや彼女を「それでも人間でなければならない」という理由を見つけることはできなかったわけです。少なくとも「彼女はお姉ちゃんの事が(恋愛が手につかない程)大好きで、偶然不思議な現象と不思議な能力を持った女の子」と考えるよりは「彼女は人間ではないが塚本天満が幸せになる事を願っている。また彼女がこの後人間とどう付き合って行くか?好きと思える男がいたとして、その男と恋愛をするかどうか?は、彼女の中の数ある選択肢の一つに過ぎない」と考える事の方が、ずっと腑に落ちたわけです。

また、その視点に立つことで「スクールランブル」という作品の俯瞰図が見えてくるような気がしています。

ちょっと長くなってしまったんで、一旦切ります。次回はここから「八雲の世界」の作品全体の支配力の検証と、できればもう一人の謎の人物・烏丸くんの考察。それから播磨の考察ができればなと思っています。
  • Re:スクールランブル考:八雲座敷童子(ざしきわらし)説 投稿者:みやも <2007/04/19 02:02>
  • #194 Re:スクールランブル考:八雲座敷童子(ざしきわらし)説
    投稿者:みやも <2007/04/19 02:02>
    <<<親記事]
    はじめまして。独特の八雲考察、とても面白く拝読いたしました。

    >これだけ超常現象に囲まれて自身も超常なる力を発現しているのに、
    >彼女が人間だと思う方がむしろ不自然じゃない?というものです。どうでしょう?w

    個人的には八雲が「巫女として選ばれた」存在だと考えておりましたので、八雲自身を人外と推察するアプローチには驚きつつ深く感銘を受けました。その発想はなかったです!(笑)
    「うしおととら」でいえば鷹取小夜とみるのではなくオマモリサマとみたらどうか、ということですよね。とても刺激的な視点だと思います。
  • なるほど。巫女ですか。 投稿者:LD <2007/04/19 11:42>
  • #195 なるほど。巫女ですか。
    投稿者:LD <2007/04/19 11:42>
    <<<親記事]
    みやもさん、はじめまして。レスありがとうございます。

    > 個人的には八雲が「巫女として選ばれた」存在だと考えておりましたので、

    成る程。巫女ですか・・・僕は直ぐに人外の感想が降りて来て逆に巫女という発想はなかったです。でもワンクッションとして然るべき観点ですよねえ(汗)
    巫女ですか・・・・・・・・・あっ、矢神神社って大和武尊つまり男神を祀っているんですよね。(実在の矢神神社は)・・・で八雲って自分に好意を持つ男の心が読めるんですよね?w
    なんかか巫女になりますねえ・・・・ってそういう話でもありませんでした?w

    > 「うしおととら」でいえば鷹取小夜とみるのではなくオマモリサマとみたらどうか、ということですよね。

    僕のイメージはそれに近いですね。物理的霊的な力関係は八雲>天満だけど、確かに天満が八雲を守ってもいる。そういう意味で巫女というお話は僕はむしろ天満に感じていて・・・巫女というより八雲が憑いて然るべき存在(小夜みたいな)という話ですが。
    その意味で八雲が幽霊少女に投げかけた「・・・姉さんかと思った」は何故姉さんと思ったのかと、けっこう気にしていますね。