投稿者:ルイ
題名:デルトラクエスト
一言:☆☆☆☆:(第52話・七つの宝石の輝く時)・・・「なんだかんだいって、ちゃんと4クール観てきて良かったな」と感じさせてくれる話が続いていますね。途中の退屈な時期も、全て思い出として演出にエネルギーを与える、かなり理想的な4クールアニメだったと思います。って最終話次回ですけど。漠然としていつつも、明確な構成がいいんですよね、この作品。初期〜中期、明らかに物語を引っ張るエースは紅一点のジャスミンで、その見立て通り武術大会に勝ち抜いたり、リーフ&バルダの危機を何度となく救っていた。けれどリーフとバルダが成長するにつれ、そのジャスミンのエネルギーはかなり健全に彼らに流れ込む形がとられ、気付くとジャスミンは「リーフ!(喜)」「リーフ!(哀)」「リーフ!(楽)」「リーフ!(心配)」・・・といった反応をする、リアクション担当『お姫様キャラ』になっている。終盤ジャスミンが捕らえられたりするあたり、まさにその「関係図の変化」を象徴していて、心地良かったです。で、今回のエピソードに関しては、人によっては「出来事だけ追っかけた急ぎ足で淡白な回」と感じる人もいるかもしれません(ベルト完成→銀河万丈大王速攻打倒→国復興開始、ですから)けど、元々デルトラってそういう「ちょっと離れた所からの、透徹とした視点」が窺える作品だったので、個人的にはしっくりくる・・・という控えめな表現に留まらず、正直「凄く好きな回」でした。演出やセリフが極端に絞り込まれて、俳句のような美しさになっている。多分原作にあまり手を入れてないんだろうな、という気もするんですが・・・端的に象徴しているのは「エンドン王」と「バルダさん」ですね。3クール以上鍛冶屋ジャードと偽ってきたエンドン王については、退場の仕方がすっごく綺麗だった。彼は死んでしまうのだけれど、彼自身の口で死ぬ前に玉座に座り「幸福な結末」と口にするんですよね。小さい頃から波乱に富んだ物語が好きだった。そういう物語は、幸福な結末を迎える事が多いから好きだ、と、これから死ぬ人が言っている。自分が死ぬことすら「デルトラにとっての幸福な物語」と自己宣言することで、リーフたちがどれほど救われ、この物語自体もどれほど救われているか。そして我らの愛すべき3枚目→奇跡の二枚目へとクラスチェンジを果たした愛しい愛しいバルダさんも、何も言わず墓参りを済ませる所から描写が始まる。前回のエピソードでバルダさんは宝石の力を借り、かつて守れなかった母親と邂逅し、悔いを払拭し、怪鳥アクババを一刀両断(これはバルダさんスキーにとっては、涙が出るほどの名シーンですた!)した・・・このエピソードで積み上げたものに自信があるから、ここで「母さん・・・」と呟くor頭の中でしゃべる事すら、既に作品として蛇足なんですよね。何も描写されてないけど、エンドン王の墓だなんて、誰も思わないわけですよ。・・・と、いう風に。この辺の研ぎ澄まされた脚本が美しい回でした。バルダさんをはじめ、4クールを経たからこその輝きを見せる「育った」キャラ。愚直に強さのインフレを見せず、ただただ宝石を集める事にエピソードを費やしてきたからこそ、宝石を並べる時の各回想は等価に輝きを持つ。いや、良いと思います。好きです。インフレに支配されがちな日本ファンタジー文化では、なかなか味わえない領域じゃないですかね。素晴らしかった。
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