投稿者:kichi
題名:魔法少女リリカルなのはStrikerS
一言:★★★★☆:(全26話) 見た目いかにもな萌えオタ狙いな美少女バトルアニメなシリーズの3期目なのですが、しっかり燃えて泣ける良質なエンターテイメント作品でありました。もっとも、せっかくの設定を充分には活かせず盛り上げ切れてなくて勿体無いと思う部分も多々ありましたし、深遠なテーマを描いてるとかいうわけでもないですから、諸手を挙げてお薦めできる大傑作とか言えるわけではないです。でも個人的に前半は毎話のように泣けてしまったし、最後までなんだかんだ言いつつものめりこんで観て堪能できたのは間違いなくて、その要因はどこかなぁ?と考えた時、一番大きいのは1期2期での「積み」を真っ直ぐ、しかし約10年後という思い切った形で受け切って描いたその効果かな、と思っています。このシリーズにおける基本的な「積み方」って上へ上へと真っ直ぐに、文字通り「積み上げ」ていくようなタイプなんですよね。たぶん、もっと「幅」も広げていくような方法(クールなキャラの優しい面を見せるとか、いろんな面を見せることでキャラの厚みを増していく)の方がキャラ積みの在り方としては効果的だし一般的だと思うんですけど、例えば主人公のなのはからして、最初のイメージの時点で精神的には結構完璧超人気味で、その後大きく変わることってなかったと思うんですよ。でまぁ、完璧超人なキャラっていきなりは受け入れ難いというか、嘘くさく感じてしまったりもするように思うんですが、繰り返し繰り返しそういうキャラとして描いていき、ブレなくそういうキャラとして積み上げていくことで、段々とそういうキャラとして受け入れることができるようになってくるものだと思うんですね。完璧超人までいかなくても単純な形での「優しさ」ってそういう積み上げがないとなかなか実感が伴わないものだと思うんですが、この作品、優しさの描写を丁寧にたくさん積み上げているという点ではかなりのもので、たぶん一番の強みな部分だと思うんです。これ、キャラ単体でなく作品世界ごと効いてくるものでもあると思うんですよ。漫研的には専用圧縮モジュールを自家生産してる、みたいな言い回しするといいんでしょうか?w3期で初登場したスバルやティア達には開始時点でそういう積み上げはないはずなんですが、なのはやフェイトのような充分優しさが積み上げられた人物がいる世界という後ろ盾があると、ちょっと優しさの描写を入れただけでその優しさが信頼に足るものだとあっさりと受け入れられちゃうものだと思うんですよね。少なくとも私は、1期ではなのは他のキャラ達の優しさにそれほど深くは感情移入できずにいてやや冷めた視線で眺めてたものなんですが、3期ではスバル達新キャラにも開始直後から感情移入しまくりで泣きまくり状態になってましたw それからもう一つ、前述の通り2期と3期の間には約10年という時間経過があるのですが、これがこの積み上げタイプの積み方と非常に相性がいいのです。幅を広げる積み方では、時間を経過させたとしても自然にキャラの厚みが増すなんてことはないので、結局増した幅の描写をきちんと描いていくしかないのですが、積み上げタイプの場合その最初のベクトルのまま、経過した時間分どんどん積み上げていったであろうことを容易にイメージできると思うんです。「最初のイメージと大差ないならいくら積み上げてもあまり意味ないんじゃ?」と思うかもしれませんが、10年、しかも9歳から19歳へという時間経過は登場人物の立場を大きく変えるものです。心の根幹部分、本質的な目標等は揺ぎ無く変わらなかったとしても、立場や環境の変化に合わせて行動や具体的な目標等が変わっていくのは当然で、そこの描写を上手に行えば真っ直ぐに成長していった結果の姿であるという確かで気持ちのいい実感が得られるものなのですね。1期2期では基本的に目の前の事件に取り組むことで精一杯であったなのは達が(それはそれで視点が絞られていて魅力的ではあるのですが)、3期では「組織」と積極的に関わり、重要な、あるいは指導的な立場に立って目標(平和な世界という実にありきたりながら大き過ぎる目標なのですが)の実現に向けてより具体的未来を目指して歩んでいる、その成長の実感はめざましいもので感動的ですらあるのです。しかも、なのははエースオブエースと呼ばれるようになっていたりと躍進を遂げているのも痛快な嬉しさを感じますし、1期2期での積みから外れることなく、しかし非常に大きな成長感は得られるこの3期の設定の仕方はとても秀逸だと思うのです。厳しく見れば粗も多い作品であることは承知してますが、そんな辺りを中心に個人的には大満足な作品でありました。

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