![]() 「地上最強のロボット」のエピソードで“戦士”として選ばれた7人のロボットたちを語る上で外せない、ある意味一般的なバトルマンガと一線を画す点がある。それは彼らが戦闘そものとは別の本分を持つ職業に従事していた事である。 モンブラン = 山岳案内人 ノース2号 = 執事 ブランドー = 力士 ゲジヒト = 刑事 ヘラクレス = 国宝(?)ヒーロー(?) エプシロン = 保父 アトム = 小学生(この頃は中学生かな?) という具合である。敢えて言えばヘラクレスは戦闘のための強力な槍、竜巻を起す盾、そして空を飛ぶ戦車を持ち、かなりプルートゥと同じ目的を以って造られたロボットだったかも知れない。しかし他のロボット、力士のブランドーや刑事のゲジヒトにしてもある程度戦闘力を持っているかもしれないが、それはスポーツとしてもモノだったり、犯罪者を取り押さえるためのモノだったり、基本的に相手を殺す(破壊する)ところまで及ぶものではない。プルートゥはそんな彼らに強制的な戦闘を挑んだのであり、それはやっぱり“地上最(偉)大のロボット”を決めるなどという崇高なものではなく、やはりただの犯罪行為に他ならなかったと言えるのである。 ![]() しかし、よくよく考えてみれば、保父、教師などをロボットに任せようと思ったら、確かに最高の技術力がいるかもしれない。人間の幼年の感受性豊かな頃をまかせようというのだから、人間の無秩序な思考や感情を相当に理解していなくてはならないといえ、また他のロボットたちと違って決められた事をただこなしていればよいというワケにはいかない。エプシロンはそれらを見事にこなしている人物として描かれる。そして確かに単なる保父としては明らかにオーバースペックなパワーを持つエプシロンだったが、その優秀さは彼の頭脳や精神性であったことが描かれるのである。 まず彼はヘラクレスのもとに現れて(もちろん謙虚なエプシロンはヘラクレスこそ世界最大のロボットだと持ち上げるのを忘れない!)共闘してプルートゥに対抗する事を申し入れる。これは英雄的精神を持つヘラクレスの方が断ってしまうのだが、実に当たり前の提案で、最も事件解決の近道であったことは間違いない。しかし、プルートゥの凶行が世界の知るところとなった後も、何故か他のロボットたちがそれを思いつく事はなかった。アトムさえもそうはせず、遂に天馬博士の誘惑に負けて自らを百万馬力に改造してしまうのである。少なからず国の威信をかけて造られたであろう彼らにとってそんな選択はなかったのかもしれないが、それでも本当の意味で戦いを望んでいなかったのは唯一エプシロンだけと言えるのかもしれない。 ![]() 2003/08/24
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