私の愛した悪役たち VOL.2
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ウルフ金串 征服王マーダル 幻竜王ドラム 意味なし番長 コロス
ミスターハブ マゾ 銀天狗 怪盗クモ男 V号
第11回 ウルフ金串 (あしたのジョー)
「あしたのジョー」には力石徹を筆頭にカーロス・リベラ、ホセ・メンドーサと魅力的な敵役が数多く登場する。そして、その作品性からか彼らには、主人公のジョーも含めて常に悲劇的な結末があたえられていた。ウルフ金串もそんな中の一人である・・・が、ウルフ金串が好きだという人はあまりいないのではなかろうか。(いる?)秘密特訓をこっそり見に来たジョーの取り巻きの子供たちをスパーリングの実験台(!)にするという暴挙に及んだ上、結局ジョーのトリプルクロスに敗れ去るその様はどうみても「やられ役」そのものだからだ。しかしウルフにはもう一つ忘れ得ぬシーンがある。
力石が死んだことに打ちのめされたジョーは放浪の末、ウルフ金串と再会する。ジョーにボクサー生命を断たれ、チンピラの用心棒になり下がったウルフは、ヨタヨタと入った喫茶店で引き連れた子分たちに「本当なら世界チャンピオン」「あの時あと1センチパンチが早けりゃ・・・」と延々と過去の栄光にしがみつき、愚痴を続ける男となっていた。普通の少年マンガならダメ人間としてかたづけられるか、あるいは何か適当に励まされて立ち直るかするのだろうが、梶原一騎は、この敗北者を敗北者のままにある種の敬意を払っている。ジョーは「ヤツの目は死んでる」と笑う権藤を殴り飛ばし、しかしそれでも「ウルフのようにはなりたくない」と拳闘の世界へと戻っていく。きっとその後もウルフはちっぽけな過去の栄光にしがみついて無様に生きていくのだろう。しかし、だからといって顎を割られて再起できなくなったこの男を誰が一体笑えるのか?そして・・・また、食い入るように見てるんだジョーとホセの一戦を!!その万感の思いでジョーを見守るその顔を見ると、もはやウルフのことは嫌いになれるはずも無かった。
第12回 征服王マーダル (機甲界ガリアン)
クレセント大銀河を支配する、完全なる管理体制による感情無き平和社会「高度文明連合」を否定し「闘争こそが生命の存在意義」と信じて、ただひたすらに戦いを繰り返す異端者。その不屈の闘志は革命に失敗して全てを失い惑星アーストに落ちのびた後も失われること無く、惑星アーストを統一して再び「高度文明連合」に挑戦することを目論む。中世期世界に遺跡の超技術を持ちこみ、己がはた迷惑な野望のために否応無しに人々を戦いに巻きこんでいく征服王マーダル。しかしマーダルにとって「闘う人間」は敵だろうと味方だろうと全て『同志』であり「闘わない人間」こそが真の敵なのである。
「ガリアン」が始まった時点で既にぼくはマーダルにメロメロだった。主人公のジョジョの母親をレリーフづけにしてしまう『悪役』っぽさも良かったが、白い谷の軍に包囲され絶体絶命のとき、一瞬の間隙を突いて包囲を突破し、執念の追撃をするアズベス(じっちゃん)を尻目にとにかく徹底的に逃げつづけるシーンは「三国志演義」の赤壁の曹操を思わせた。そして最終回。故郷の惑星ランプレートに再起し高度文明連合の反撃を待つマーダルに届いた知らせは、やはり高度文明連合は戦わず、イレイザーを使って患部を切り落とすだけというものだった。マーダルほどの人間を以ってしても「何も無かった」ことにされてしまう、巨大な『停滞』高度文明連合に、今この時の敗北を認め、全てをジョジョに託して去っていくマーダル・・・その姿にぼくは涙した。
関係ないが「ガリアン」のサントラ、LPでは持ってたんだけどCDでは出てないよね?「カムイの剣」とともに
再販してほしいものです。
第13回 幻竜王ドラム (ハーメルンのバイオリン弾き)
(「ハーメルン」についてはマンガとアニメではストーリーラインが多少異なる。ぼくはそのどちらも好きなのだが、ここではアニメの話をしたい)「魔王ケストラー」の魔界軍は大きく四つに分けられそれぞれに「軍王」が存在する。bP冥法王ベース、bQ幻竜王ドラム、bR妖鳳王サイザー、bS超獣王ギータという構成。魔王の四天王というべきこの四人、なかなか頼もしいしい面構えと強さで、当時「いい『悪役』いないなあ」と嘆いてたぼくはすぐにこの四人に飛びついた。なかでも双頭トカゲのドラムさんと魔犬ギータさんは大のお気に入りである。
ギータさんについてもいずれ書くとして、今はドラムさんのことである。この人は桁外れの強さとそれに比例した頭の悪さがとてもよかった!「第二次スフォルツェンド大戦」で全軍指揮をまかされたドラムは(1)いきなり何も考えずに防御結界に体当たり→術者たちの方がドラムのパワーに耐え切れなくなって結界をひらく。(2)大神官クラーリィの最強攻撃呪文「天輪」をくらう→軍団の大半が壊滅するが本人は無事。「なにしろオレは強ぇからなあ!」(3)クラーリィに肉弾戦を挑まれ調子に乗って暴れるが、それは全くの罠で最強封印呪文「地界」をまともにくらう→身体から30匹の竜を出して強引に封印から出る「ふー、危なかったぜ!」(おい!あぶなかったんじゃなくて、モロにひっかかとるんじゃ!)(4)ホルン女王の命を削る退魔結界によって石にされる→双頭のドラムは命が二つある。そのうち一つを使って石化を破り、ヒドラの本性を出して暴れる。(5)ケストラー化したハーメルに殴られ滅殺される→それでもまだ生きてて、ボロボロのところをギータにやっと、とどめをさされる。(6)最終回、ドラムの能力を吸収したはずのギータの体内に、ちゃっかり生き延びていてギータを食い殺してしまう。なんたるしぶとさ!しかもたたかれる度にさらに強くなって復活するところがいいよな!ああ、本当にこんな「ワルワルのメチャ強」の『悪役』見られなくなったなあ。ドラムさんにはキング・オブ・中ボスの称号を与えたい。
第14回 意味なし番長 (とんち番長)
「サルでも描けるまんが教室」のマンガ内マンガ「とんち番長」の最終ボス。黒とんちを使った人類の抹殺をねらうとんち教団の首領にして、主人公とんち番長の父である。このキャラクター、もし実際に少年誌に連載されて登場したなら文句なく少年マンガ史上最強の敵であったろう。ではその恐るべき正体とはなにか?「とんち勝負」を信条とするこの物語で「ゾウを飲んでみよ」という出題をとんちではなく、ただそのままに象を飲み込んだ首領。愕然として説明を求めるとんち番長たちに対し返した答えがこれだ。(あまりに良いセリフなのでなるべく原文そのままに)
「説明、説明!説明!!・・・なぜ説明が必要なのだ!?どうして人間は何事にも説明を求める!?では、この宇宙がなぜ存在しているか、説明できるか?なに?神が造ったと申すか?よろしい、では仮に『神がこの宇宙を造ったから』だとしよう。では、その『神』は一体誰が造った?なんのために『神』は存在しているのか?どうだ、説明できまい!しょせん『説明』とはそんなものだ。限界があるのだ。なぜなら『説明』とは人間が『造り出した』ものに過ぎないからだ。イヌやネコが『説明』を必要とするか?『説明』を必要とするのは人間だけだ!!人間という生き物はあらゆる物事に説明がないと『不安』になるのだ。その『不安』を克服するために『説明』を造り出した!!本当は『説明』などない。ただ『結果』があるだけなのだ!!人間が生きていることも、この宇宙が存在することも、全ては『結果』としてあるのであって理由などないのだ!!(中略)私はこの『真理』を悟り、意味なし番長として生まれ変わることによっていかなることもなんの説明もなしに結果だけ出すことが出来るようになったのだ」
こんな恐ろしい『敵』が今までいただろうか!?しかし、その意味なし番長にも弱点というか、一つ重要なポイントがある。それは誰かから出題されない限り、この能力を行使できないこと。人類を滅ぼすほどのパワーを持ちながら、それでも誰かが「人類を一瞬で滅ぼしてみよ」と『とんち問答』をもちかけない限りは一切手出しできない。そこが「とんち番長」の最強の敵たる所以であり、そこが好きだ。
第15回 コロス (無敵鋼人ダイターン3)
人類の宇宙進出を目指した科学者、破嵐創造によって造り出された強化人間メガノイド軍団。その最高指導者ドン・ザウサーの側に常によりそう謎の女性、それがコロスである。たぶんメガノイド(・・・!?)「ダイターン3」という物語はとにかく謎が多い。というより、ほとんど説明しないのだ。その語られぬ謎の中心核にいるのがドン・ザウサーとコロスであるから、この二人は本当に謎、謎、謎の謎だらけである。(ドン・ザウサーって破嵐創造じゃないの?違うなら一体誰なんだ?)でも、それでいいのだ。これは「破嵐万丈の復讐の物語」ではないから。毎回登場する、可笑しくも悲しいメガノイドたちに「涙」してもらうため、万丈にも退けぬ理由があればそれでいい。そして敵の設定を敢えて「おざなり」にすることでドン・ザウサーとコロスに敵役として一種独特な「凄み」を持たせている。
万丈のような破天荒なキャラが主人公なら、ボスキャラも「おのれ〜!万丈めぇ!」と毎週、地団駄ふんで悔しがるコミカルな悪役でもいいのに、ドン・ザウサーはヌボ〜っとしてるし、コロスはいつも冷静。その雰囲気が毎回の始めと終わりを引き締める。そしてコロスの「愛人がボケ老人になってもなお愛し続ける」という内に秘めた情念は、子供心に感じられたし、それはコロスのあの顔色の悪い肌に何ともいえぬ「色気」を与えていた。要するにただの子供向け番組ではなく『大人の世界』をほんの少し楽しませてもらっていたんだな。本当にいい作品だ。当時ぼくはコロスの南京玉簾攻撃に一発で参ってしまい、それ以来コロスのファンだった。
第16回 ミスターハブ (クレヨンしんちゃん ブリブリ王国の秘宝)
劇場用「クレヨンしんちゃん」の第二作目「ブリブリ王国の秘宝」は、大まかなコンセプトこそ当時のディズニーの大傑作アニメ「アラジン」を模して作られているが、その「ならでは」のキャラ性と練りこまれた演出・作動画で、一級のエンターテイメントに仕上がっており、その後の「クレしん劇場版」の方向性を決定づけた記念すべき作品である。(はっきり言って「クレヨンしんちゃん」はすばらしい!そしてその製作会社であるシンエイ動画もすばらしい!しかし、そのことを語るのは別の機会にしたい)
とりわけ、事件の中心人物スンノケシ王子の親衛隊長「ルル・ル・ルル」と黒幕アナコンダ伯爵の腹臣「ミスターハブ」の肉体を駆使した対決は白眉で、二人のアクションが物語のメインだったといっても過言ではない。そのミスターハブ(とアナコンダ伯爵)は、これまでもスペシャル番組などでしんちゃんの『敵』と言えなくもないキャラはいたのだが、それらとは一線を画す悪役であり、ぼくに衝撃を与えた。何と!彼らはしんちゃんのギャグがまるで通じなかったのだ!「ケツだけ星人」も「ぞ〜さん、ぞ〜さん」も彼らにはまるで無効!薄気味悪くニタリと笑うだけ。その時点で「クレしん史上空前」の悪役であった。「い、いかん!こいつらマジだ。こんな敵にどうやって勝つんだ!?」ぼくが物語に強烈に引き込まれていったのは言うまでもない。そして「お初にお目にかかる。私はミスターハブという者だが・・・」というていねいな挨拶で現われる、筋肉のつき過ぎでスーツがピチピチのミスターハブ。気がついた時には攻撃モーションに移ってるところといい、素手の格闘に武器を使って卑怯と罵るルルに「悪党は悪党らしくせんとな」と答えたり、魔神を呼び出す恥ずかしい踊りを躊躇なく踊ったり、うーん真面目だ!とにかく真面目だぜミスターハブ!その真面目さは『悪の参謀の王道』のままに愚鈍なアナコンダ伯爵を裏切り、だが哀れにも魔神の能力を手に入れた伯爵の操り人形となってしまい最後を迎えるのだ。そしてぼくは、伯爵を出し抜いて魔神を呼び出し「わ、私を、私を世界の王に・・・」と願いを唱えるその時の、今まで決して表情を崩すことのなかったハブの、一瞬の歓喜ともいえる表情が忘れられなかった。
第17回 マゾ (黄金バット)
かつて世界中を敵に回した国の天才科学者であり、生きのびて世界征服を企む怪人「ナゾー」。その忠実な部下として現れたのが「マゾ」である。何を隠そうぼくはこのマゾ様の大ファンなのだ。この物語のヒーロー「黄金バット」という奴、まるっきり無敵の『存在』(人間なのか?宇宙人なのか?あるいは幽霊なのか?まるで正体がわからない。ぼくは、ロボットという説を支持してる。あさりよしとうさんの「ワッハマン」はサイボーグかな?)で、対するナゾーもかなりの超人なのだが相手が悪かったと言うか、まるで歯が立たず、みっともない姿をさらしてしまう。言ってしまえばマゾはそのナゾーの後ろにひっついて一緒にあたふたしてるだけのキャラである。しかしそのあたふたと卑屈さの中に堪えられん愛嬌がある。(声をあてた内海賢二さんの演技も大きい)とにかく幹部は基本的にマゾしかおらず、毎週顔を合わせるのだからそのうち愛着もわこうというもの。そう思ってマゾを注意深く観ていると、パラシュート部隊を率いて先頭きって降下したり、変な歌をうたってヒマラヤの雪の中を行軍したり、ジャングル探検をサバンナルックに決めてインディ・ジョーンズばりの冒険したり、となかなか多芸に楽しませてくれる。「あ〜あ、これだけ色々な技能と知識を持ってば、普通の世界の普通の犯罪組織なら第一級のエキスパートなのに、黄金バットを相手にすれば逃げ足の速さを披露するだけか・・・」と苦笑してしまう。黄金バットに対抗できる唯一の武器「乾燥銃」を関係ないところで使い切ってしまったときは思わずテレビ画面に「マゾ〜!!」と突っ込んだっけ。
とにかく無敵に強い奴と対決するハメになった『悪役』の苦悩は推して知るものがある。(「イデオン」とかね)でも、いい『悪役』がいなければ『無敵』の話は成り立たない。「黄金バット」というアイデアいっぱいの作品を裏で支えたナゾーとマゾの健闘を称えたい。
第18回 銀天狗 (飛べ!イサミ)
世界征服を狙って今日も大江戸市内にお騒がせを巻き起こす、悪の組織「黒天狗党」は首領の「黒天狗」をはじめとして四天王の「ヨロイ天狗」「カラクリ天狗」「ゴールデン天狗」「銀天狗」南蛮天狗「カステラ」「カルタ」の幹部から「カラス天狗7号」「教頭先生」「59・63号」の末端構成員に到るまで、本当に楽しい『悪役』たちがひしめいてるという、すばらしい組織だ。その一人一人を全員紹介していきたい!・・・のだが、とりあえず今回は四天王の一人「銀天狗」でいきたい。(カラクリ天狗とどちらにするか迷ったよ!)その仮面の正体は田能久健という爽やかな青年。電光流(何かの武術?)の使い手で、そのパワーは暴走する列車の軌道を一撃で変えてしまうほど。なぜ数多の黒天狗党員の中から最初に銀天狗を上げたかというと、彼の「卑怯なことは許さない悪の大幹部」という性格が、もっとも「黒天狗党」という組織を体現しているキャラに思えたからである。ノリが良くって楽しいことが大好きで、「しんせん組」にしてやられても「ホウタイ男」にしてやられても、「いや、まいったなぁ〜(笑)」の一言ですませてしまって、まるで悔しがらない。『正統派』の悪役、カラクリ天狗などからすれば「やる気あるのか!!」と怒鳴りたくもなろうというもの。
でも、それがほとんどそのまま「黒天狗党」のカラーだよな。観ていると彼らは『お騒がせ』なことはするものの、なーんにも『悪い』ことはしない。それどころか組織の莫大な運営費は、表の顔である「芹沢グループ」の事業から得られた正当な収益によってまかなわれてる可能性が強い。そうやってお面と黒マントといういかにも『悪役』ないでたちで、地下に秘密基地をいっぱい造って、主人公のイサミ、トシ、ソウシたちの「さあ、何して遊ぼう?」という放課後に、夜遅くまで遊んでくれる気のいいおじさんたち(あぶないなあ)が黒天狗党なのだ。
ところで銀天狗、何か指令をうけて行動することはほとんど無いんだよね。一体何をする人かと観察してると、どうも会場の司会をしたり、映画を作ったりして、「構成員の士気高揚」というか「応援」が仕事だったみたい。あっはっは、銀ちゃんらしいや。
第19回 怪盗クモ男 (飛べ!イサミ)
「銀天狗」のことを書いた時点で、書き忘れてしまったキャラがいることに気がついた。その人についてどーしても!書いておかないと寝覚めがわるいので、続けて「飛べ!イサミ」を扱うことにしました。その、すっかり忘れてしまった『悪役』の名は「怪人クモ男」!どの組織にも属さず、宝石、美術品の盗みをつづける怪盗。その正体は一切不明で、道端でも刑務所でもその目立つクモのお面をとろうとはしない。(「飛べ!イサミ」の中でも一、二を争って好きな『悪役』なのに何で忘れてしまったんだ。きっと「黒天狗党」に属してないから死角に入ってしまったんだな)
最初クモ男を見たぼくはすぐに「おもいっきり探偵団・覇悪怒組」の「摩天郎」を思い出した。少年探偵団そのままである「しんせん組」と「クモ男」のめくるめく対決、もちろん「摩天郎」である「クモ男」の方が一枚上手で!その戦いの火蓋が切って落とされるのだな、とそう直感しワクワクした。しかし全然ちがったんだな!クモ男って奴は、マヌケで、変態でやたら筋肉見せたがるし、卑怯で、卑屈で、そのくせカッコつけで、何でマスクとらないのかって・・・ちくしょう!!こいつ主役にまるまる一本作品作れるじゃねえかよう!!「飛べ!イサミ」全話中、クモ男の登場はたった三話。しかしその三話すべてが傑作で、ぼくはクモ男登場のたびに狂喜した。ある意味「しんせん組」の相手は「黒天狗党」でも、「イサミたち」の相手は「クモ男」だったかもしれない。最終回の大団円のシーンには出てこなかったが、それもまたクモ男らしい。
第20回 V号 (バビル2世)
「バビル2世」の「ヨミ」は可哀相である。ヨミとバビル2世は能力的にかなり同じなのに何故か何をやらせてもバビル2世のほうが一枚上手、しかもこれに「三つの下僕」と「バビルのコンピューター」が加わるとその差は絶望的になる。絶対の硬度を誇り全身武器の塊である「ポセイドン」、音速の怪物「ロプロス」、そして塔の永久管理人「ロデム」。意外と知られていないのが「バビルのコンピューター」の偉力である。パンチ・リールのヨミの使ってるコンピューターと同じ型に見えるのだが、そこは超文明技術、超人ヨミの作戦をズバズバ言い当ててしまう限りなく神に近い存在なのだ。このように勝てる要素などまるでないのに、それでも果敢に戦いをバビル2世にしかけるヨミ様の『男』に惚れこみ、ヨミ様サイドで応援するのが「バビル2世」の正しい楽しみ方である。(笑)そのヨミがバビル2世に対し最大最強の反撃を行うのが「死のV号作戦」なのだ。
ここで使用された要塞爆撃機「V号」は、大きさはロプロスの4倍、マッハ5で飛行し、鋼鉄の100倍の硬度を持つ、とにかくロプロスとポセイドンに勝つために設計された超兵器で、バビルの塔を空襲して破棄するのを目的としていた。その火山口から「禿山の魔王」よろしく翼をひろげ、圧倒的パワーでロプロス、ポセイドンを蹴散らすシーンは、「これはひょっとして勝てるかもかも」と思わせるに足る迫力でヨミ様サイドとしては燃えに燃えまくった。結局はバビルのコンピューターの前に敗れ去ってしまったが、特攻をしかけてバビルの塔を半壊させた戦果は見事。その次の話「総攻撃バビル2世」でわりとあっさり壊れてしまったのが残念だ。ヨミは「ゴーリキ」というかわいがっていた下僕を「ゴーリキ2号」としてよみがえらせたことがあったので、最終回は是非とももう一度V号でいって欲しかった。
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