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「ハンターXハンター」に感じること

 少年ジャンプに「ハンターXハンター」というマンガが連載されている('98・6月現在)。かつて「幽遊白書」で一世を風靡したにもかかわらず、突然連載を終了して「逃げて」しまったマンガ家「富樫義博」が新たに奮起して描いているものだ。とりあえずの内容は主人公の「ゴン」が夢と冒険渦巻く「ハンター」を目指して超難関の試験に挑むというものだが、ここではかなり細かいところまで突っ込んだ話をするので、できれば単行本の第1巻とジャンプの連載を読んでほしい。長くなるので敢えて細かい説明をしない。
 富樫義博がついに週間連載をはじめる、という情報の時点ですでに多大な期待を寄せていたぼくは、その「HXH」の期待を裏切らぬ面白さにほっと胸をなで下ろした。まだ20回に満たぬ連載だが、ゴンの出会う人々は常に何かのメッセージを持って読者に語りかける形がすでにできていて、高い質を保っている。しかし、そのメッセージという意味で、ぼくはふと思い立ったことがある。
 「HXH」の「ハンター」とは実は「マンガ家」を指しているのではなかろうか?突拍子もないことに思われるかもしれないが、まあ聞いて欲しい。
 「ハンター」・・・夢と冒険に満ちてなおかつ最も「儲かる」職業。そのライセンスを得るための厳しい難関(何万もの応募、何人もの希望者が毎年挑戦し新人が合格するのは三年に一人)。「ハンター」たち自身が試験官をつとめ、しかも彼らは「ハンター志望者なら腕が立って当たり前、私たちが知りたいのは未知に挑戦する気概だ!」とか挑戦者を叱責する。
 これだけでも「マンガ家」と随分共通点を感じてしまう。それに加え登場するキャラクターたちの実力の違いをハッキリと描写しているのも気になる。「レオリオ」はたぶんハンター試験に落ちてしまうだろう、でも「また来年も来るぁ」と笑って去っていくと思う。「クラピカ」はどうだろうか?もし「レオリオ」と違ったモノを出すなら、もしかしたらレオリオより優れた能力を持ちながらハンターになるのをあきらめてしまうかも知れない。確実にハンターになれる実力を持ちながらなろうとはしない(ように思える)「ヒソカ」。おおくの志望者が血のにじむ努力をしてもなれないハンターの試験をふらっと受けてパスしていき、「何だハンターなんてこんなモンか」とシラッと言ってのける「キルア」。・・・そういったハンターを目指す人達の振る舞いは、一見、荒唐無稽なようで、実はあまりにリアルで真に迫るものがある。すべてぼくの思い込みに過ぎないが。
 昔、富樫義博さんが手塚賞の佳作かなにかをとったときプロフィールに「自分のやりたいことを殺しても読者に楽しんでもらえるマンガを描きたい」といったようなことが書かれていたと思う。そうまで言ってなりたかったマンガ家になりながら、「逃げて」そしてまた「戻って」来た今、彼が「マンガ家」という職業そのものに何の思いもないとは考えられない。ぼくがこじつけたような直接的な形ではないにしろ、富樫さんがそれなりの意気込みで描いている「HXH」は期待できるマンガだと思う。
 「ゴン」は必ずしもハンター志望者の中でトップの実力ではない。ぼくはそれが不満だったのが、しかし、そう考えると、もしハンターになりたい「ゴン」がハンターになれたなら、ハンターになろうとはしない「ヒソカ」よりもずっといいハンターになるであろうことにも納得できるのだ。
(No.14 まで鑑賞)
1998/06/21 LD津金

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