そんな中で、最近“魔球勝負”としていたく感動した勝負がある。今回とりあげる女子ソフトボールマンガの「ウインドミル」がそれなのだが、実はこの「ウインドミル」を“魔球マンガ”と思われてしまうと、っちょっと違うかな?という気がする(汗)どちらかと言うと先に上げた、女子高生球児たちの青春グラフティという趣が強い。にもかかわらずこの物語のクライマックスは“魔球勝負”で締め括られていて(笑)連載中、普通に楽しんでいた僕のボルテージはここに来て俄然盛り上がってしまったのだった(笑)
ピッチャーは本編の主人公・広沢滝。投げられる魔球は“滝ボール”。僕は魔球と呼んでいるが、実はそれほど魔球というレベルに達してはいない。すごいスピードで投げ込まれるナックルといったところだろうか?速くてブレるのでなかなか打てないが、当たる時は当たるといった程度のものが、“滝ボール本気(マジ)”になってようやく誰にも打てない、魔球レベルに達した状態のものだ。
バッターはオリンピック・アメリカ代表のジーン・マクレガー。バットを振った瞬間はぼ9割がホームランという怪物で、滝ボールは難なく打ち崩したが、“滝ボール本気(マジ)”に対してはノーヒットとなってしまう。そこで生み出された“滝ボール本気(マジ)”を破る解答が怪打法“メイジ・スマッシャー”だった。“滝ボール”が魔球となったのはむしろ相手役である“メイジ・スマッシャー”が生み出された時といっていいかもしれない。
“メイジ・スマッシャー”は、バッターボックス前面いっぱいに立ちさらに前に倒れこみ、“滝ボール”の変化が最高潮に達するその前にボールを叩くというもの。前方に転んだ状態になるので、もうホームランにするしかない!という打法である。あまり打つ機会はなかったが、これはほぼ間違いなく“滝ボール本気(マジ)”をホームランにするところまで行く。さて!ここからが本番で“滝ボール本気(マジ)”は間違いなく打たれると感じた滝が、次に編み出した魔球は“滝ボール本気本気(マジマジ)”。これは変化前のポイントをマクレガーから離すため、一度踏み込んだ足を後ろに踏み切って後方に飛んで投げるというもの。ここまで来るともうかなり魔球っぽい(笑)そんな無理な姿勢でまともな球が投げれるのかというと、投げれちゃうらしい。しかも魔球で(笑)(しかし、バク転するように投げるこの球は下手投げのソフトボールとマッチしていて、なかなか美しいフォームでハッタリも効いていると僕は思ってもいます(笑))そんなワケでこの“魔球勝負”。1ミリでも前に倒れこみたいマクレガーと1ミリでも後ろにのけぞりたい滝が、奇声を発しながら前と後ろにズッコケる異様な勝負へと発展して行くのです。
そして物語の最終回、試合も決勝の最終回、最後の一投において、不様に転んでユニフォームを汚していたこの二人は遂に互いに技を完成させてしまう!前方にコケていたマクレガーは、スパイクを地面に突き立てることによって身体を固定し完全なるスイングを生み出す。そして後方にズッコケていた広沢滝は、振り上げた脚がキレイに弧を描いてスタリッと着地する。勝負の行方は敢えて書きませんが、これがちょっとよかった。最終回に技が完成するってすごく感動的じゃありませんか。そんなワケで“魔球勝負”がなかったら「手堅い作りだね」くらいしか言わなかったであろう、この「ウインドミル」。ちょっとお気に入りの作品なのです。
ああ、それにつけても“魔球”が見たい…