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遊星より愛をこめて

 日本SF特撮不朽の名作「ウルトラセブン」のDVDシリーズがリリースされました。デジタル処理によるオリジナル・フィルムをブラッシュアップした映像は、ため息がでる程美麗で、また最近引っ越しで重い重〜い、LD−BOXをいくつも汗水垂らして運んで来た身としては、このDVDの“小ささ”には思わず笑いが出る…というより「今までの(狂ったようにLDを買いあさってた)僕って…何?」という腰の砕けるような感慨に襲われます(笑)もう一段階だけ“小さく”なるような気もするのですが、何はともあれDVD時代の突入です。
 フィルムでは劣化の避けられぬ運命にある映像たちを、デジタル情報化して保存して行くというのは非常に意義のあることだと思います。しかし伝えなくてはならないのは単純に画像だけではないはずです。製作者の熱意や、その時代の息吹、もちろんそれらのものは、その物語を通して感じられればいいものですが、記録としてはそれも併せて残す努力がなければ片手落ちでしょう。
 DVDを広く普及させるためのスペシャルプライスのためか、この「DVDセブン」の解説書はLDシリーズのそれと比して無くしてしまいそうな程、薄っぺらなものでした。そしてそれにはVOL.3の“11話と13話の間が何故抜けているのか”一切の説明がなされていなかった。多くの宇宙からの侵略を描き、侵略する者たちの様々な心情を、何としても地球を守らねばならぬ戦士たちの戦いを、そして時として地球人自身が破壊・侵略者となることを見せてくれた「ウルトラセブン」の“良さ”に触れれば触れるほど、この問題は看過できぬものになります。だから他の人にも知って欲しい。「ウルトラセブン」の面白さと、第12話「遊星より愛をこめて」が本当に“欠番”になるべき作品なのかを。

 ここまで偉そうに書きましたが、実は僕自身も“12話”は全く観たことがありません(恥)ですから、それについて本当の意味で語る術を持っていませんので、無礼は承知でLDシリーズ「ウルトラセブン」のVOL.3の解説「『幻の第12話』とは何か?」(安井尚志・会川昇)の文章をそのまま引用させてもらいます。(何かあったら変更します)


『幻の第12話』とは何か?
解説/安井尚志・会川昇

 現在、各出版社より“ウルトラマン・シリーズ”について様々な出版物が発行されているが「ウルトラセブン」第12話(製作No.9)に関する記述は、どの本にも見うけられない。むしろ、あらゆる出版物からその存在を抹殺されていると言ってもいい。この12話のサブタイトルは「遊星より愛をこめて」(シナリオ・タイトル「遊星より愛を」)という。この、「ウルトラセブン」LD第3集にも、この12話は収録されていない。まさに“幻の第12話”なのである。

 いったい、どのような理由で放映されることがなくなったのだろうか?それは、このエピソードに登場する宇宙人に、某出版社で発売された書籍等でこのましくない別名が付けられた。(セブンはOPに怪獣名をクレジットしないので、別名はないのだがあたかも原水爆実験の影響で怪獣化したと想わせる名前であった)
 しかし、これは世界唯一の被爆国で現在ですらその後遺症に苦しんでいる方がいるというのに、無神経な行為だったといえよう。この掲載された名称を学年誌・付録の怪獣カードから見つけた、中学生の少女の告発によって、関係団体の抗議は製作側の円谷プロにまで及んだ。そこで、円谷プロは、自粛という形をとり、この「遊星より愛をこめて」を、テレビにおける再放送はもちろん、出版物からも一切削除することにした。これによって、“セブンの第12話は欠番”ということになったわけである。
 第12話は、この問題の生じた昭和45年10月以降、再放送されることはなくなったわけである。しかし、スペル星人というキャラクターには問題があったものの、この12話は全編、美しい映像と音楽で彩られたシリーズ中でも印象に残る一編であった。脚本は佐々木守、監督は実相寺昭雄という名コンビで、特殊技術は大木淳があたった。この作品は「宇宙人と地球人」の信頼という大きなテーマが軸となっており、佐竹と名乗るスペル星人の愛を信じる早苗と、ダンとアンヌの触れ合いによってそれらが決して夢ではないことを暗示している。このテーマは言うまでもなく「ウルトラセブン」の最終回において、ダンとアンヌを通じて完成されるが、佐々木・実相寺のコンビは既にこの時点で、そのテーマの萌芽を見せていたのである。全49話を通しても、秀作として部類される出来であった。作品は15年以上たった現在でも公開することはできないが、そのストーリーを記すことによって、12話がすばらしい作品であったことを伺い知って欲しい。

 東京の街で、若い女性が貧血で次々に倒れるという事件が連続して起こった。被害者はいずれも、製造元不明の腕時計を身につけていた。この時計は地球上には存在しえない金属で作られており、亡くなった女性は白血球が皆無になっていく。その時計には人間の血液から白血球だけを微細な結晶として取り出す装置がし掛けられていたのだ…いったい、誰が?

 キリヤマ隊長から特別休暇を与えられた友里アンヌ隊員は、高校時代の友人、早苗(桜井浩子)の家を訪ねた。ところが、早苗はデートに出かける所で、さっかくの休暇も、早苗の弟・伸一(日下部聖悦)の遊び相手をさせられる始末だった。基地へ戻ったアンヌは、本部にあった問題の時計が早苗のものと同じであることに気付いた。そして、その時計が早苗の付き合ってる佐竹という青年からのプレゼントだという言葉を思い出し、佐竹に会うことにする。佐竹(岩下浩)は時計を購入した場所を答えられなかった。そこへ伸一が倒れたという連絡が入る。伸一は姉に内緒で時計をつけて、軽い脳貧血におそわれたのだ。アンヌは必死で時計を奪い返そうとする佐竹の態度に不信を抱き、本部からダンの応援を求めて二人を尾行、佐竹が早苗に気付かぬように腕時計をすりかえる所を目撃した。
 早苗と別れた佐竹は仲間の待つ洋館へ帰った。仲間の青年達は、佐竹と同じように若い女性と交際しては腕時計を与えて、血液を採取していたのだ。そこで、彼らは伸一の血液が女性のものより高純度であることを発見した…彼らは作戦を替えた。
 翌朝の新聞に『ロケットを描いて、宇宙時計をもらおう』という広告が入った。洋館の前に群がる子供達。ウルトラ警備隊が子供達を制止して、中ヘ踏みこもうとした時、彼ら…いや、スペル星人は巨大化して不気味な正体をあらわした。スペル星人は自らが開発したスペリウム爆弾の実験によって、その血液が著しく汚染されてしまった。そこで、自らの血にかわるものとして地球人の血を求めたのだ…

「実験は成功した、われわれスペル星人は、地球人の血で生きて行けるのだ!」

「まもなく、われわれスペル星人は大挙して地球におしよせてくるぞ!」

 その頃、伸一は佐竹によって連れ去られていた。アンヌやソガから佐竹の正体を知らされる早苗。しかし早苗は信じようとしない。伸一を保護するためにポインターは氷川用水池へ急ぐ。早苗の目の前で、ソガは佐竹にレーザーガンを撃った。爆発の中からスペル星人があらわれる。そこへ、かけつけるウルトラホークとウルトラセブン。ウルトラ警備隊の活躍で宇宙船は爆破され、巨大化した星人はセブンのアイスラッガーによって夕日に散った。

 しかし、早苗は佐竹の愛を信じ「夢だったのよ」と言うアンヌに対し「現実だったわ、私、忘れない。地球人も他の星の人も同じように信じあえる日が来るまで」と答える。そんな早苗の姿にダンはそっとつぶやく。
「そうだ。そんな日はもう遠くない。だってM78星雲人である僕が、こうして君たちと一緒に戦ってるじゃないか」と…

 (スペル星人のキャラクターは成田亨のデザインにより、高山良策によって造形された。白いのっぺらぼうのような体に小さな目と口があるだけ。成田自身が語る所によれば、ほとんどやる気のないデザインで大体のスケッチを描いて高山に渡したことしか記憶がないという。
 シナリオにある佐々木のイメージは、角があって、これと目から怪光線を出し、背中の羽根で空を飛ぶ。命名の由来は“スバル”のもじりで“スペル”となったがシナリオには“スペル”と“スバル”の表記がごっちゃになっており、“スペル”でおちついたようだ。

 どうだったでしょう?この件に関する感想はそれぞれにおまかせするとして。まあ、なんにしても「おたく」といたしましては、理由がなんであれ“観れない”という事には筆舌に尽くし難い悔しさがあります。観たいよう。やっぱり…(泣)円谷プロの倉庫に健在であることを、いや実はもうすでにデジタル化して保存してあることを祈って。
1999/08/12 LD津金

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