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『血笑鴉』

投稿者:LD Ml Hp ☆☆☆☆☆ [2001/06/20:01:49]
 え〜、まず僕、横山光輝先生のファンです(笑)…で、横山先生の作品のキャラって「赤影」か「バビル2世」のTV放送された作品の影響からか、ワリと“清く正しい”といったようなイメージがあると思うのですが、どうでしょう?
 まあ、あっても無くてもいいんですが、横山先生のキャラは“正義の人”といったような人物像とはちょっと違っていて、実際はすごく中立中性なんですよね。淡々としてるといってもいいんですが。言葉のうえで正義の陣営、悪の陣営といった色分けはハッキリしてるのですが、読んでて僕にはどうも正義の陣営はまあ正義としても悪の陣営に“悪”というイメージが湧かない。
 それだけ敵も味方も愛すべきキャラターたちという事なんでしょうが、“悪の理論”とか“善悪の逆転”といった相対的なイメージを持たせない。…要するに中立中性なんですよ(汗)「バビル2世」も「マーズ」も拠って立つものが違うわけではない。同じ線上にある物語です。それは無味無臭無感動という意味では全然なくって、何と言うか、受け止め方感じ方を、完全に読者にまかせてしまってるような…。横山先生は軽々と荷物を持ち運んでいるんだけど、子供(読者)が「手伝うよ、僕に持たせて」と言って手渡された荷物は実はズシリッと重かったような、そういう物語の重量感……う〜ん…。

 そういう横山世界の中で、この「血笑鴉」は、ちょっと異色と言えるかもしれません。今回の主役の“鴉”と呼ばれるこの男は、醜い猫背の小男で、金と酒と女が大好きで、自分が生き残るために他人を裏切る事を何とも思っていないという俗物のうえに悪党なキャラです。しかし、この男、殺人剣の名手で、誰もこの男の俗物ぶり悪党ぶりを止められない。いい人も、悪い人も、この男の目的のために斬り殺され、またたまに思いつきのように“情け”もかける俗物っぷり(笑)横山マンガの中でも、かなり異彩を放つ一編といえるのではないでしょうか。
 ………と言って締め括ろうと思っていたのですが(笑)今回、文庫本化されて読み返してみて、確かに異彩は放ってると思うのですが、これだけ一目で“悪”とわかるキャラ、アクの強いキャラがやっぱり横山マンガとして消化されているところ、中立中性な感覚にまとめられているところに(僕は中立中性という言い方をしていますが、つまり横山節ということですね)魔力のようなものさえ感じます。とにかくこの血笑鴉、とても魅力的なキャラです。それは間違いないところです。

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