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殿!ご再考を!

「ぶかつどう」の巻

「ぶかつどう」とは?
 「ぶかつどう」とは、週刊少年チャンピオンに連載された作・伊藤清順のマンガであり、その内容は、「さすらいの部活野郎」と呼ばれ、この世にあるあらゆる競技全てを超一流にこなす中学生「金田光正」の大活躍を描いたもの。金田君は通学する朱丘中のほぼ全てのクラブ活動から助っ人を依頼されており、そのスケジュールは半年後までギッチリ詰まっている。これをマネージャーの「浅倉のりこ」こと「のりちゃん」と共に、依頼をうけた部活の対戦する恐るべきスペシャリストたちの技を、さらにその上をいく技で粉砕していくのだ。
 ぼくの「ぶかつどう」との出会いは当然ながら少年チャンピオン誌上。(何しろそこでしか出会う場所がない!)巻頭カラーの第1回は無法な反則バスケチームとの対戦であった。演劇部との掛け持ちで(木の役をやっていたらしい)遅れてきた金田君が放ったその技の名は「ファイヤードリルダンクシュート!!!」ボールキープの状態でファイヤードリル回転(笑)をし、自らの身体もろともゴールに突き刺さるという、その途方もない技は、読者の心を一発で釘付けにするのに十分な迫力で、かくいうぼくも一回目にしてこのマンガの完全な虜となってしまった。その後も金田君は(思い出したところでは)[美術部対決]「オレのモチは食える!」[釣り愛好会対決]「コイの逆バンジー釣法(?)」など数々の荒業を連発し、当時抜群の痛快さを誇っていた。

しかし・・・
 そして「全央中十五人衆編」へと突入し、体育系では金田とほぼ同等の能力を持つ「スーパースター・京橋氷也」、文芸系の天才「円科」、通りすがりの「仲本」といったレギュラーも増え、全て絶好調に思われた「ぶかつどう」。しかし、ある日突然「ぶかつどう」は連載終了となる!(いや、本当は後ろの方に掲載されてて薄々「やばいかな〜?」とは思っていたんだけどね)全央中が富士の樹海に作った十五の部室を一つ一つ攻略していった朱丘中代表五人は、第四の部室「料理クラブ」の料理対決において、「のりちゃん」の作った料理を一口でも食べたいと集まった残りの十五人衆(「エックス」以外の)全てを「腹痛」で倒してしまい、あっという間に全ての部室を突破して最終ステージ「ゴッドの館」に向かうという怒涛の展開!(ところで「エックス」とは予算が下りないマイナークラブで最も好成績をあげたところがもらう部室であり、そのときは「無線愛好会」だったと思う。これも笑える)このあっけなさはこれでかなり好きなのだが,同時にそれはこのマンガの打ち切りを意味していた。最終回、自分とそっくりな男「ゴッド」と闘い「必殺金田固め」(「金」の字形を作る必殺ホールド。あらかじめ地面に「田」と書いておくのがミソ)で勝利した金田君は無敵無敗のまま、「ようやく自分が入りたいクラブが見つかった」と言って「のりちゃんファンクラブ」に入るのだった(笑)
 問題はここからだ「残念ではあったが終ってしまったものは仕方がない。後は単行本を買って友人に見せ『このマンガ面白いけど人気無かったんだよな〜』とか言って宣伝していこう」ってなことを考えて、割と気楽にその号のチャンピオンを閉じた。結果としてこれが甘かった。その後、秋田書店はこの傑作マンガを一向に単行本化する様子が無い!!!!まさか二十回以上続いたマンガが単行本にならないなんて誰が予想しよう。気付いたときには掲載された少年チャンピオンはあらかた捨ててしまい今ぼくの手元にあるのは12話と14話が掲載された二冊のみである。(涙)

熱血少年マンガのパロディ
 「ぶかつどう」は一昔前に氾濫していた『熱血少年マンガ』のパロディといえる。登場人物のそのほとんどがやたらとカッコをつけたがるのだが、その実カッコをつけること以外何も考えていない。たとえば「金田をあなどるなよ・・・!」「ゴルフ部の玉名!金田という男のことを知っているのか?」「いいや、なんとなく言ってみただけだ・・・」というような「その時その瞬間カッコをつけることができれば後はどうなってもいい」的な会話は「ぶかつどう」の特徴というよりむしろ「週刊連載の少年マンガ」の特徴で、「今だかつてこの技を破った者はいない」というセリフと共にくり出される実現不可能な必殺技や、ブラインドがかかってやたら数だけ多い敵幹部など、全て週刊連載という過酷な制限と読者との駆け引きの中完成した「矛盾も数多く内包するがそれゆえに面白い」という独特の世界で、そこを利用して自由に遊んでしまおう、というのが「ぶかつどう」の基本的なコンセプトといえる。パロディというにはあまりにカテゴリーが広く十分オリジナルとしての威力を持ち、少年マンガに対する『肩こり』がとれて、改めて読むマンガに新たな『発見』を与えてくれる良作なのだ。(誉めすぎ)

 そんなわけで昔の少年チャンピオン'95・40号〜'96・30号(くらい)まで残してる方いらっしゃいましたら是非御一報下さい。

(↑おかげさまで全話入手に成功いたしました。ありがとうございました)
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