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殿!ご再考を!

「白鯨伝説」の巻

ぼくは出崎ファンだ!
 「あなたの一番好きなアニメーターは?」と聞かれたら、ぼくなら真っ先に「出崎統」の名を挙げるだろう。「ガンバの冒険」「宝島」の二作品に出会わなかったら、この歳までアニメを見ていたかどうかわからない。原作ものをアニメ化した「あしたのジョー」「エースをねらえ!」「コブラ」も本当に素晴らしい。何かこう、「生き様」を描かせたら右に出るものはいない人で、「ノロイ」(ガンバの冒険)に怯え、「シルバー」(宝島)に憧れ、「ジョー」(あしたのジョー)に泣いたぼくは、とにかく、とにかく、影響を受けた。ぼくがアニメ作品を見るときの一つの大きな基準になっていることは否定できない事実である。と、個人的なことをつらつら書いたが、ぼくと同世代のアニメファンならきっとこの気持ちは通じると確信している!その出崎監督がBS放送で「おにいさまへ・・・」を経て新たにオリジナルTVアニメとして制作したのが、この「白鯨伝説」である。出崎・杉野ファンであるぼくが、何年もの時を経てなお変わらぬ「エイハブ船長」の「あの目」を、無視することなどできようはずもなかった!

重厚なドラマ
 「白鯨伝説」の主なストーリーは、開拓時代が終わりを告げた宇宙で、廃棄された亜光速で彷徨する大型輸送船や戦艦から再利用物を引き上げてくることを生業とする「鯨獲り」の船長「エイハブ」のもとへ、惑星を消滅させる超戦艦「白鯨」から自分達の故郷を守ってくれと「ラッキー」という少女が願いにくる。白鯨とは抜き差しならぬ因縁があるエイハブ船長だったが、ラッキーの願いをきいて頼りになる仲間とともに戦いの待つ惑星モアドへと向かう、というもの。これに何やら白鯨の秘密を握る「デュウ」というアンドロイドがかかわってくる。
 この作品の『面白さ』は何といっても登場するキャラクターの魅力。これに尽きる。特にエイハブ船長はいい。一挙手一投足、ちょっとした仕草や表情からもパワーが溢れ出し圧倒される。そして「苦しさも悲しさもひっくるめて人生を楽しむ」ことを知っている人だ。初め女であることを隠していたラッキーもいい。14歳といえば、だいぶ「ふてくされ」とか入る年齢だが、彼女は一途で一生懸命だ。11歳の「アトレ」も皆に認められようと一生懸命だ。やっぱ子供は「一生懸命」が一番だな。そして「自分の生き方」を決めてるからこそ、本当の意味で「優しく」なれる「レディーウィスカー号」のクルーたち。これらの人々が、アンドロイドの「デュウ」やラッキーの兄であり超能力者の「シロー時貞」といった、様々な人間とかかわることによって編み出される、見せかけじゃない、本物の人間ドラマが「白鯨伝説」なのである。

夢の対決
 同時にこの作品は、出崎作品の集大成的な意味合いがある。・・・というより、それが「ウリ」といえる。エイハブ船長と超戦艦「白鯨」の対決の構図は間違いなく「白イタチ ノロイ」VS「ジョン・シルバー」を意味する。これはファンにとっては、特撮なら「ゴジラ対ガメラ」、ハリウッドなら「ターミネーター対ランボー」に匹敵する、というほどの大事件で、それだけでもう滾った血を押さえ切れず「うおー!」と叫んでしまう。エイハブが白鯨の話で「そいつは雪のように白かったのか?」とか聞いたりすると思わずニンマリするし、第一話 でボクシングするラッキーが妙に「あしたのジョー」っぽく見えたりもしてしまう。
 しかし「白鯨伝説」は出崎ファンしか楽しめないものなどでは決してない。まあ、でも少し心配ではあったけど。小さな子供もちゃんと見ていて葉書を送ってきていて安心した。「ああ、ちゃんと観て楽しんでくれてるんだ」それは、この作品の『楽しさ』と『分かりやすさ』を顕わしていると思う。「人間ドラマ」というのはちょっと子供には難しいかもしれないが、そこはそれ後からじんわり解ってくるもので、ここらへん、名作といわれるマンガ・アニメの必要条件である。
 ぼくのお勧めは第12話(?)の「イージー・ライダー」という話。一話のみの登場だった「コバじいさん」は、声をあてた小林清志さんの熱演でほとんど主役のエイハブ船長を食ってしまうほどの「かっこいいジジィ」だった。

何故だぁぁぁ!?
 ああ、だがしかしそれなのに、「白鯨伝説」は放送中断のまま二度と放送されなくなってしまった。出崎さんは何事もなかったかの様に「ゴルゴ13」作ってるし。(もちろん買いますけど)どうも制作会社がつぶれた様なんですが、やたら総集編ばっかりやってて制作状況まずいんじゃないかとも思っていたんですが、それでもLD販売中止はねぇだろ!やってるとこまでちゃんと出せ!出崎さん、お願いですからこのまま終わらせないでください。(エイハブとシローの意見が食い違うとこまでしか見てないから、次の展開がやたら気になる)このままじゃヘビの生殺し状態です。なんとか再起して完結まで!


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