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殿!ご再考を!

アニメ版「レッドバロン」の巻

『あれ』とかぶってる!?
 TVシリーズ「ガンダム」の復活として話題を呼んだ「機動戦士Vガンダム」。その放送終了後に行われた「機動武闘伝Gガンダム」の予告編は、はっきりいってファンの度肝を抜いた。なにしろリアル・ロボット・アニメの代表者であり、そして今となっては最後の生き残りとさえ言えた「ガンダム」が、当時の格闘ゲーム・ブームに乗っかって(?)一対一の対決スーパーロボットものになると言うのだ。当然のように「もはや『ガンダム』じゃない!」「いや!これでよかったんだ!」といったファンの賛否両論が本放送前から沸き起こったが、その論争の影に隠れてひっそりと放送を開始した作品があった。それが今回紹介するアニメ版「レッドバロン」である。
 この作品、あらゆる意味で不幸であった。何よりまずストーリー展開が「主人公がロボットに乗りこみ、現れる様々な対戦者達と一対一で闘う」という、完全に「Gガンダム」とかぶっていたものだったために、同じコンセプトの作品なら視聴者は「Gガンダム」を見てしまうという不幸。これに大昔の特撮ロボット「レッドバロン」のリメイクという企画のショボさと、あまりに『当時ウケ』しないヒロインのデザインが拍車をかける。内容も『当時ウケ』しないものだったために、あらゆる人からそっぽを向かれ、おそらく超・低視聴率のままひっそりと放送を終了していった。(「Gガンダム」に対するぼくの評価は置いておくとして)しかし、ぼくは敢えて言いたい!「レッドバロン」は「Gガン」に文字どおり“勝るとも劣らぬ”作品であったと!再放送の機会があったなら再考を望む!

バカは燃えるぜ!
 その内容をかいつまんで説明しよう。ロボット同士のバトル「メタル・ファイト」のチャンピオンになる夢を持つ主人公「紅拳」は実は全くの貧乏人で乗り込むロボットさえ手に入らない始末。しかしひょんなことから謎の組織に狙われる少女科学者「冴場翔子」と知り合い彼女の造ったスーパーロボット「レッドバロン」のパイロットとなる。調子に乗った拳は「メタル・ファイトのために造ったんじゃない」と愚痴る翔子を後目にメタル・ファイトに参戦してあっというまにチャンピオンとなり、次々に現れる挑戦者たちも「根性」で蹴散らしていくのだ!というもの。「レッドバロン」の良いところは、とことんまで燃えるバカを追求しているところだ!主人公「紅拳」はとにかく何も考えていないバカで、理論無用のバカの一念が現実をモノにして行く痛快さを実に楽しくバカバカしく描かれているのだ。これにライバルにして師匠ともいえるメタルファイター「柳孔明」の登場でこの『バカバカしい路線』は完全に形が出来上がる。そのバカバカしい面白さは文面ではとても伝わるものではないが、わずかながらでも紹介したい。
【その1】人魚型ロボットの水中戦に苦しむ拳に孔明は「おいしい揚げ餃子は水につかっても水餃子です!」とアドバイスする(この人、何でもかんでも中華料理に喩えてアドバイスする人で、自分の愛機「神竜」が破壊された時はその残骸を燃やして餃子を作り、皆さんにご馳走したという強者!)。それによって「本当に強ければ水の中だろうと強い」ことに気がついた拳はそれまで水の抵抗で撃てなかった必殺技「エレクトリッガー」が突然撃てるようになって、敵を撃破してしまう。
【その2】脱出不可能の砂地獄を作り出すあり地獄ロボットとレッドバロンは砂漠で対戦する。「どんなロボットだろうと脱出不可能」と自信の笑みを浮かべる敵幹部「アシモフ」。砂地獄にものの見事にはまった拳だったが「流れに逆らっちゃダメ!」という翔子のアドバイスが聞こえたか聞こえなかったか、逆に中心にたどり着き敵を見つけ出してエレクトリッガー!を打ち込み撃破してしまう。
【その3】エネルギーを吸い取って敵を戦闘不能にしてしまうロボットと対戦し、またもやものの見事にはまってエネルギー0になってしまうレッドバロン。しかし、拳の叫びとともに再起動したレッドバロンは見事に敵を撃破!「なぜ、再び動くことができたのか?」と尋ねる記者に拳はにこやかに答える「そりゃ根性だぜ!」この答えになってない答えを一同特に気にも止めず笑い合う「あっはっは、拳さんらしいや!」

VAPさん、ご再考を!
 如何であろう?この作品のバカバカしい意気込みが何十分の一かでも伝わっただろうか?(うーん、やっぱり画面じゃないと・・・)ただ、こういった『バカバカしい路線』というのはあまり世間の承認を得ておらず、普通のアニメファンはマイナスイメージで見てしまうことが多い様に思う。物語の合間々々にちょっとした漫才を入れたりするのも(ぼくなどは逆に愛着が出てくるのだが)「余計な横槍」と見られてしまうようである。やはり「レッドバロン」が『当時ウケ』せず、現在もそれが難しい作品であることは否めないのかもしれない。しかし、肩の力を抜いて何より楽しむことを心がけて観れば『ウケねらい』でなく『エンターティメント』を目指したこの作品はもっと評価を受けていいことが分かると思う。そう、いくら売れなかったからってLD販売をVOL.1〜2まで出したところで生産を中止してしまう程、不出来な作品ではないはずですよVAPさん!!!誰が買わなくてもぼくが買います!限定注文生産でけっこうですから「レッドバロン」LD−BOXを出してください!お願いします!そして、この記事を読んだ人は、「レッドバロン」の再放送が(まさかとは思いますが)ありましたら是非観てください!何故か『人を選ぶ作品』として扱われていますが、本当は誰でも楽しめる良作なのです!


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