とりあえず背景はCG
さて、その概容は「とある文明のとある時代、人々のほとんどは、互いの体液が触れ合うと身体に異常をきたしてやがて死にいたる『ディーヴァ』という謎の疫病にかかっていた。文明の滅亡を恐れた政府は人々にSEXを禁じるという政策を打ち出す」というもの。ここに“ディーヴァ陰性”の娼婦「ココ」という女が主人公として登場し、重大な犯罪者であるココを付け狙う疫病管理局員の「キサ」と「エギュ」を巻き込んで、ディーヴァの研究と同時に、性的快楽を与える器械を専門に生産している巨大企業「FG社」の陰謀が次第に暴かれて行くのである。
最初にココが主人公と言ったが、正確には疫病管理局のキサの二人が主人公といっていい。“彼女ら”に面識はほとんどなく、「FG社」の陰謀に翻弄されて、全く別の場所をさまよい歩き、最後に「FG社」の本社ビルで邂逅する。ここらへんの展開がいかにもカルト(笑)
しかし、この作品の本当の見所は背景の全てがCGでできているところだ!背景以外にも移送車やバーチャルSEX装置などのいくつかの近未来設定的な機器もCGによって表現されている。ぼく自身はこういう、開き直りにも似たポジティブな映像表現は好きなのだが、低予算で済ませられるとはいえ、想像される懸けた時間と労力を嘲笑うかのようなチープな画面が、多くの視聴者のハートをつかむにはあまりに困難な作品となっている(笑)(みんなビデオ画面好きくないからねェ。「サイバーコップ」がダメだったのも、「シャンゼリオン」がイマイチだったのも、ビデオ画面だったってのは一因であることは間違い無いよね)
チープな画面って妙に楽しいよ!
しかし、これだけは言っておきたい。「シチリアの龍舌蘭」の毎週の緊迫感のある展開は、そのチープな画面のハードルだけクリアすれば必ず夢中になれる!次回が楽しみで仕方なくなる!何と言うか・・・「ブレード・ランナー」を毎週観ているようなものなんだよ!ただ、画面がちょっと安っぽいだけだい!あんまり安っぽい安っぽい言うと製作者に失礼だね、ここらへんで止めておこう。しかし、この全舞台オールC.G.のこのドラマ、当然出演した役者さんたちは何も無い暗いスタジオで“そこに物があるかのような”演技を強いられるのだが、その方がむしろ役者根性がうずくと言うか、(ぼくの拙い知識では)あまり聞いたことない役者さんしか登場してなにのに、物凄く熱の入った演技を見せてくれる。(ちなみにココ役の栗原恵美という人は何かのグループアイドルだった気がする。それから当時人気を博した子供番組「ウゴウゴ・ルーガ」のウゴウゴくんが、なんやよく分からん“超能力浮浪児”として登場していた)「みんな役者バカというか演劇好きなんだねえ」という好感が、ますますこのドラマを楽しみなものにしていってくれるのだ。
これからは、きっとビデオ・ドラマ、ビデオ・アニメが(好き嫌いにかかわらず)ますます製作されて行くことと思う。その歴史を振り返り、最初(・・・たぶん)に“全ての舞台をCGで構成したドラマ”「チシリアの龍舌蘭」と紹介された時、聞いた人が「何、それ?」と首をかしげたりされるのは、あまりに哀しい。あれは本当にパイオニアなんだ!再放送はあまりに難しく、何とかビデオなりLDなりで出して欲しい!このままあの作品を消させないで!