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#89 Re:西野は何故勝利したか?
投稿者:井汲 景太 Ml Hp <2005/08/17 01:37>
<<<親記事]
>加えて「漫研」として「週刊連載のライブ感覚の面白さ」として強調しておきたいのは上記した(1)〜(8)の流れがけっして真中と西野をくっつけるために編まれた流ではないという事です(笑)

うん、そう、そこは面白いですよね。この辺りの分析については、概ね同意できます。

> (※ その後、懸垂以前に真中を知っていたという話が入ったと思いますが、こーゆー後付けと言うのは読者にとって同じ誌面に描かれた事でも伝聞的で実目撃とは言い難く、話の積み上げにはならないんですね。

ですね。(とは言うものの、読み返すと、作中で初めて西野と真中が顔を合わせるシーンで、西野がじっと真中の顔を覗き込むカットが紛れてるんですよね。意味不明だから読み飛ばしちゃってたんですが、作者としては「西野は以前から真中を知ってた」という漠然としたアイディアは、最初から持っていたのかもしれません。それを具体化するのが遅すぎて意味ありませんでしたが)

> …で担当編集とどのような打ち合わせをしたかは分かりませんが西野さんには退場いただき、別のキャラで真中を東城さんと取り合っていただくという判断が下されたのでしょう。その結果が(2)となって現れます。つまり別れた後も同じ高校、あまつさえ同じクラスにいたのでは居た堪れないので、別の高校に行ってもらおうという事だったのでしょうね。

この辺りまではほぼ同じ読みです。ただ、「いたたまれない」というよりかは、単純に「このままフェードアウトしても問題ないし、3人で取り合う展開になってもどちらにも対応できるような無難な展開を選んだ」方が近い気はします。

> そしてそれは実行され、西野さんの後釜として北大路さんが登場するわけです。…しかし残念ながら北大路さんは東城のライバルとはなり得ませんでした。桃栗先生はメインと決めた女の子以外の娘を描くとあからさまに敗色濃厚になってしまうクセがあるのかもしれませんが(笑)元々、東城のように真中との共鳴点を持たず、西野のように実際に交際していたというアドバンテージも持たない北大路さんは、迫るは迫るんだけど絶対に真中に受け入れてもらえない憐れさが目立つキャラに追い込まれてしまいます。それで(5)でやはりここは西野さんに再登場していただこうという事になるワケです。

この部分もほぼ同じ読みです。北大路はかわいそうなキャラでしたね。汚れ役をみんな押しつけられた上、勝てないと解っている戦いを、孤独に戦い続けないといけない。

(最終話も東城・真中の成長ぶりのダシに使われるだけだったのが気の毒でした。東城・真中の成長を外見・内面両方にかけて描くことが優先され、それを際立たせる必要から北大路を始めとする映研の他のメンバーには基本的に成長がまったくないわけですが、これまでも描写がてきとーだった端本はいいとしても、北大路はねえ…。東城がもう真中のことをすっかり「いい思い出」として割り切って「いい女」になってるのと対比させるため、まあだ真中に未練のあるようなそぶりをさせるってのは、ちょっとかわいそうだよ河下センセ…)

> (2)の結論に到るまでは必死に西野さんの“キャラのテコ入れ”が行われていました(笑)連載からしばらくして西野さんは真中をズバーン!と思いっきりキックしたり、バチーン!と叩いたりする元気印を与えられ、他の細かな演出についても気合と注意が払われるようになります。

おお、そういうことか。それには全然気づいてませんでした。なるほどあれはテコ入れですか!

>まあ西野つかさ役に“北島マヤ”が選ばれたような状態です。東城綾役の人は白目をむいていたに違い有りません(笑)

これ面白いですね(笑)。東城と同じ顔のキャラは作者の他作品にも出てるみたいなので、彼女は河下水希の持ちキャラなんでしょうね。手塚治虫のスターシステムほど本格的なものではないにしろ。そう考えると本当に「白目むいてた」所が想像できて笑えます。

>…で(6)は色々迷いもあったでしょうが必然的な流れです。繰り返しになりますが西野は同じ学校に通っておらず、恒常的な登場を全て御都合で埋めるのは限界がありましたからね。

うん、ただ、御都合に頼っていたのは最所の頃だけだったように思います。「真中とバイト先が近い」という設定があるので、一度出会うとその後顔を合わせるのは容易で、それでも足りないときは真中の家までバンバン来ちゃってましたから、あの人は(笑)。そういう点で、偶然・御都合に頼らず「自力で」勝利を手繰り寄せる努力を惜しまないキャラでした。

(6)と(7)の間で気にかかるのは、やっぱり「西野がなぜそんなに真中に執着するのかの必然性が薄い」所なんですよね。最所の記事に戻っちゃうんですけど。ここは「(1)〜(8)の流れがけっして真中と西野をくっつけるために編まれた流れではない」ことが響いていて、そこの所は作者が先伸ばししていたため、(6)の時点で「西野がどうして真中(だけ)が好きなのか?」の理由付けが準備されていません。

作中で取られた作戦はと言えば、西野に「あたしは東城さんには絶対敵わない、だからあたしだけを見て欲しい、そうでないと不安で仕方がない」という態度を取らせ、健気さ・一途さを武器にして共感を呼ぶことなんですが、これはあまり得策とは言えなかった。どうしても「そもそも真中のことがそんなに好きじゃない(ようにしか見えない)んだから、そこまで真中に執着しなくてもいいだけの話なのでは?」「真中に与えられたものが多少はあるのは解るけど、でも真中以上の男にたくさん言い寄られていて、その中には明らかにもっと多くのものを与えてくれる奴だっているでしょ?」「自分だけを見て欲しい、と願うなら、真中は一番避けなきゃいけない相手であるのは自明。あなたを本当に苦しめてるのは東城でも真中でもなく自分自身で、苦しいのは自業自得なだけ」と、理屈の方が感情に先行してつれない反応ばかり浮かんできてしまいます。もちろんそれは東城に肩入れして読んでるから、という部分が大きいわけですが、でもマンガとして構成をしくじっている部分もあると言わざるを得ない(これがほんとに北島マヤなら、健気さ・一途さだけを武器に、超絶的演技力で有無を言わさず理屈をねじ伏せてしまうことも可能でしょうが(笑)、さすがにそこまでの神通力はなかった。えー、すみません、北島マヤじゃなくて姫川亜弓・姫川歌子級ということにしておいていいですか?(笑))。

もちろん、ラブコメのヒロインなんだから、「主人公を好きになる理由」は必ずしも必要ありません。ラムがあたるに「そんなにも」執着する理由なんか、これっぽっちも必要ないわけです。ただ、これまで東城には少なくとも「真中に執着する理由」「他の男じゃ代わりにならない理由」があることだけはしつこく描写してきたんだから、攻守所を変える展開になって東城を迎え撃つ形にするなら、読者に「東城に諦めさせたらこっぴどく泣いてもらうしかないけど、西野なら『自分から真中に愛想が尽きた』形にすれば大したダメージにはならないんだから、それで丸く収まるのでは?」と思わせてしまうような性格付けにするのはまずい。ほんとは(5)と(6)の間に西野にちょこっと性格改造を施して、ラムみたいに「へこたれない」性格にするか、あるいはどんなにベタでもいいから、西野側にも「真中がオンリーワンであって、とことん執着せずにいられない」理由を準備しなくちゃいけなかったんじゃないの?と思うのです(でもへこたれない性格だと北大路とかぶっちゃうのか…)。

> あのラストはつまるところは時間切れの要素が大きかったように思います。

いや、別にあれを時間をかけて東城逆転につなげて欲しかった、と思ってるわけじゃないんです。むしろその逆で、「東城は辛いけど真中のことを振っ切って前進する決意をしました」の方が最後まで執着し続けるよりきれいでずっといい。最終2話でいい描写ももらえてましたし。

だけどそこに持って行くならもっといいやり方があるだろうと(笑)。あんなに往生際悪くギリギリまで東城に未練を募らさせてたから描写の断絶が超不自然になる訳で、やるんなら逆にだんだんと諦めがつくようにさせていって、最後屋上だろうが雪の日の公園だろうが、お好きなシチュエーションで「2人は別々の道を歩んでゆく」でまとめればいいじゃないですか。そうすれば話数は半分で済むし(笑)、唯にだって最後出番くらいはやれたかもしれない(笑)。

そもそも、あれでもまだ最終盤パートは不必要に引き延ばしすぎだと思っています。「今週の一番」でも「これを評価するなら、遡及して西野さんの夜過ごしちゃった回を一番にしましょうよw」「あ、そうですね。実質あそこがクライマックスだった」と評されてる通り、あそこがきれいに終わる最大のチャンスだったんですよ。確かに真中の成長や留学問題なんかはケリがついてないんだけど、でも東城の本気告白を断った勢いで一夜も共にしちゃっているから、ある意味「ラスボスを倒した」状態になっていて、その辺りの問題点はすべて勢い任せでウヤムヤにできちゃう。(実際、あの辺りの号は「錬金」「Waq」と立て続けに終わっていて、私はてっきり「ああ、それじゃ来週『いちご』が終わって、3週連続連載終了で新連載陣の露払いをするわけね」とばかり思っていました(笑)。その後、2週経っても3週経ってもまだ誌面から去らない怪奇現象を目にして、もう自分の目が信じられませんでしたよ(笑))

その「最大のチャンス」を見送ってまで連載を続行したにも関わらずあの不味い内容だったので、ブツクサ言いたくなるのです。

> つまり…
「いちご100%」は……辻褄が合っている!
> という事です(笑)

あー、ちょっと誤解されちゃったかもしれませんが、その「辻褄が合っている」こと自体はよく解っていて、これと言って異を挟む気はないんです。【合宿が終わってからはもう西野で締めくくること前提】(途中から無理矢理東城に持って行くのはもう手遅れで、傷口を広げるだけだからやめた方がいい)ですし、【それに至る十分な理由もそれ以前に存在していたことも前提】だと思っています。

それよりも、その前提の下で、「骨格部分の辻褄が合っている」というだけで、内臓部の粗を見過ごしていいのか、というのが気になっている点………なのですが、考えてみればこのマンガにそんな腑分けしてまでがんばって読む価値があるかどうかは大いに疑問ですね(笑)。内臓部が粗だらけ、なんてのは世のマンガの8割くらいがそうなんだから、そんな所にこだわるより「にもかかわらず、骨格だけ見るとなぜか意外としっかりしていた」という部分だけを面白がって終わりにする、という割り切り方の方が利口で、「勝ち」なのかもしれません。私も見習った方がいいかな……………とりあえず、今は「錬金ファイナル」を楽しみにするのが勝利への近道ですか?(笑)(私が読むのは単行本になっちゃいますが………でもなあ。連載中盤以降は、「初期に私が期待した輝かしい姿」とは違う、あさっての方向に行っちゃったからなあ…)
  • Re:西野は何故勝利したか? 投稿者:匿名さん <2005/09/22 20:07>
  • Re:西野は何故勝利したか? 投稿者:LD <2005/08/19 05:47>