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#257 絵コンテチェック 演出チェック 夏目友人帳第6話
投稿者:LD [2008/08/19 05:39]
<<<親記事]

> 燕「夏目様、手を繋いでもいいですか?」



ちょっと、ここの演出についてルイさんと“読み”が違ったので、ここから書きますね。というのは、このシーンで先にビクッとなったのは僕は夏目の方に観えたからです。…で観直してみたんですが……判断むずいなw(汗)でも、僕から観ると、夏目が先に少し動いて、燕がそれに反応しているように観える。その後、夏目が強引に手を伸ばしますが…。この後、書く事にも繋がりますんで、この読みで続けます。
なんで夏目がビクッとするかって言うと、先に燕が「(自分の兄弟4人は)みんな私のせいで死にました…」っとちょっと不気味なセリフを吐くからなんですね。その後に「夏目様、手を繋いでもいいですか?」と来る。夏目はしばらく無視して歩くんですけど、立ち止まって手を差し出す。その後、握る瞬間も夏目はビクッとなって…でも、自分から強引に夏目と手を繋ぎます。

どういう事かと言うと、この時点では燕は何らかの厄を持った妖である可能性は否定できていないんですね。実際に、後半で夏目はタルサルに騙されて食われそうになっている。夏目は“そういう事がある”ことは充分識っているはずで。(そもそも最初は燕にも襲われている)だから「夏目様、手を繋いでもいいですか?」にも危険信号が出たと思うんですよ。でも繋ぐ事に決めた。ずっと夏目の側に佇んで、何もせず、ある人に会いたいという燕に何か感じるものがあったんでしょうね。…というかこの時点で既に「情が移った」んでしょうw

でも、繋ぐ瞬間、その恐れが掌に現われる。→それを感じ取って燕も反応する。→でも、夏目はそうすると決めた自分の意志に従って自分から手を伸ばす。→という順番かな?と。この夏目の恐れを燕が読むから、その後のセリフ…

燕「…(笑)夏目様はお優しい。そんなだから付けいられるんですよ?」

夏目「お前が言うな」

に繋がるはずで。(勿論、その後の「そうじゃない…冷たく気持ちがいいって言いたかったんだ…」にも繋がります)いろいろ全部、呑込んで妖と触れ合う事に決めた夏目の立ち位置が分かるシーンだと思います。また、それは燕が夏目に「どうして…俺にしか見えないんだ」と言わせ、その後に「どうして、俺は見えてしまうんだろう」と言う…心象の“順”にも繋がって行きますね。




…で、これは多分、原作のセンスなんだと思いますが、この燕のデザイン、目が隠れているところがセンスだなあ、と思ってその事を書きたかった。これがどういう意味を持つのかというと、たとえば燕は口もと、身体、そして柚木さんの声で、その心象を表現するんですが、全部は見えないんですね。顔全部が喜んでいるのか?(目はどんな表情をしているのか?)そうではないのか?分からない。観客の完全な、共感(シンクロ)を拒否している。…拒否っていう言葉はあまりよくないし、完全に拒否しているワケでもないんですが。

観客からは燕の感情にわずかに霧が掛かるんですね。

多分、この霧というか人間と妖の距離感って「夏目友人帳」のベース部分のはずで、そこから考えると女性(にょしょう)をしている分、むしろ燕は共感をして欲しいキャラであるとも言えるんですが…でも、薄皮一枚“霧”をかけているはずで。
きっと嬉しいのだろう。きっと喜んでいるのだろう。そう思えるんですが、その感情を分かち合えないというか…観客は夏目と一緒にそれを眺めている視点からはずれ込まないはずなんです。

その視点のズレとして、先ほどの「みんな私のせいで死にました…」の後に燕の笑顔がアップでくるのですが、実は目が隠れている事によって、この笑顔の意味が読み切れなくなっている。あのシーンはその後の展開によっては恐ろしいシーンなのかもしれないワケです。その入り込めない要素が、夏目と妖の間の霧と、そしてこの話の場合、燕の“孤独”を際立てる事に寄与しているはずです。孤独って言っても客観的な評価の孤独であって、燕はそんな事を感じていないかもしれない。…でも全部、強がりで本当は泣き出したいほど寂しいのかもしれない。…それくらいの“霧”がかかっているって事ですね。



燕「やさしいものは好きです!あたたかいものも好きです!だから、人が好きです!」

(画像から睫毛見えるかな?)だから、このシーンで燕の睫毛が観える事は、僕はすごく意味を感じていて、はっとなったシーンです。ここは今言った、夏目と燕の間にある“霧”を燕が払うシーンだと思います。全部、払いきれるわけではないと思うんですが、燕が自分の気持ちをなるだけ夏目に伝えきりたいと願い、その想いをぶつけているシーンですね。
…多分、これに合わせるためだと思うんですが、このシーンの前に人の姿をとれる着物を夏目が取る時、夏目は妖たちに混じるために、燕と非常に似た面布をつける。これは妖たちから視た夏目を意味し、夏目から視た燕と対になっている。…で、多分、これはマダラからの視点なんですが面布が破れて、夏目の目が観えるんですね。…マンガ夜話じゃないですけど(よし!)それはその分、夏目の心が伝わっているって事です。面布は取れませんけどね。

また、最後の写真のシーンも燕の面布はとれているんですが、今度はここでは瞳を見せない。それまでは口元でめいっぱい表情を見せていた燕が、今度はその表情自体を消しています。…これもいい画ですよね。中には「もっとめいっぱい喜んでいてもいいのに…(微妙な表情だ)」って思った人もいると思うんですけどね。でも、ここは「きっとすごい嬉しいのだろうなあ…」と“霧”の向こうにいる燕の心を読もうとする。読もうとさせる。…そういうシーンなんだと思います。