#307 {作画チェック}{演出チェック}{OPチェック} OPEDのハイエナ ドルアーガの塔 〜the Sword of URUK〜 OP 投稿者:ルイ [2009/02/11 04:12]
|
<<<親記事] |
公式サイト=http://www.druaga-anime.com/ 絵コンテ=千葉孝一 演出=高橋幸雄 作画監督=高岡じゅんいち 原画=赤尾良太郎・夏目真悟・瀬川真矢・藤澤俊幸・石川哲也・垪和等・塚田浩徳・千葉健二・外崎春雄・若林信・清水健一・西尾公伯・所二郎・武智敏光・加藤真人・小野和寛・柴田淳・池添隆博・永作友克・藤井慎吾・田中宏紀・森光恵・小田裕康・寺岡厳・樋口靖子 「ドルアーガの塔」2期OPです。作品の展開や構成自体にはコミック版「ウィザードリィ」の影響を色濃く感じるんですけど、あれを読んだ他の人もそう感じるのかな?ドルアーガ製作者遠藤さんとウィザードリィは切っても切れない繋がりがあるので、妥当な引き合いだとは思うけども…さて。 アニメ版ドルアーガを通して感じるのは「2000年代の憂鬱」…いや憂鬱という解釈はちょっと一方的でズルいんですけど(笑)物語を知り過ぎてしまったものゆえの悩みであったり。そういうものが色々感じられて、親近感を覚えながら鑑賞しています。 考える事が愉しさに繋がっているタイプだから僕らは言葉を操り思考をするけれど、一方で「思考に支配されたくない」とも思うわけです。単純に感じる、という事を蔑ろにしたくない。…でも、知っている事を知らないとする事もできない。凄く面白いゲームを遊んだり、物語に触れた後「忘れてもう一度楽しみたい!」と思った所で、現実的にはそれはほぼ不可能だという事と同じように。先ほど僕がコミック版WIZを引っ張ってきたのもまさに典型で、「○○のように」という言葉の使いやすさとその拘束力は強烈です。今、特にライトノベル作家にその「悩み」は多いんじゃないかと考えているんですけど、構成の賀東さんに限らず脚本家にラノベ作家陣がいるこの作品には、その悩みをストレートに感じます。 …まあ憂鬱・悩みというのは僕の主観の「角度」の問題で、本人達は自覚的に作劇を組む事を愉しいと思っているかもしれない。そこは知る事の楽しさと悩みはワンセットみたいなものなので、単純にどちらと言い切るのも難しいのでしょうね。既に知っていると自覚してしまった以上、自覚的にならない上では書けない作れない。その事を大きく捉えると、先ほどのような憂鬱・悩みというワードに繋がるんですけど、一方で「だからこそ出来る」事もあって…今の世代に周知の情報をショートカットして、更に先の物語に進もうとするのが「記号」をはじめとした情報圧縮術というものですし、お約束というものを細分化させた「フラグ」を上手に操るのも、また物語としての充実を生みうる。そちらを大きく取れば、悩みはそのまま愉しみ、憂鬱はそのまま喜悦にも変換しうる。この辺、どちらと言い切るのも野暮なのでしょうが…とにかく、「ファンタジー物語を知っている(知ってしまっている)僕らのファンタジー物語」というものに真正面から取り組んでいるのが、アニメ「ドルアーガ」なのでしょう。そんな作品ですから、OPが高次からの視点で作られているのも、やっぱり自覚的…作品に沿っていると思いますね。 ※ちなみに、そういう事を考えながら観ていると、上のワンシーンが物凄くファミコン「燃えろ!プロ野球」に見えてくる(笑)わざとドルアーガ原作と世代リンクさせているかな? 1期同様、キャラクターをそのまま現実世界に落としこむ手法で作られているこのOP、今回その割り切りがずっと良くなっています。OPの中で描かれるドルアーガ世界は、自主制作映画として映るスクリーンの中のみ(劇中劇中劇?w)。現実とドルアーガ世界の描写が織り交ざっていた1期と比べ、完全に現実世界に特化した分、逆に意味性は増していて、色々と「読みたくなる」OPに仕上がっているのですが、個人的に「これはいいな」と思うのは、一期から続くこの手法のパワーアップ。 一期からスタッフ表記の中にキャスト名を織り交ぜてはいたんですが、今回はそのキャスト表記を、ほとんどのキャラクターに対して行っています。スタッフは漢字、キャストはローマ字という使い分けがなされている…僕はこれ、アリだと思うんですよね。全ての作品がこうすべきだ!なんて事は思わないものの、キャストの皆さんも「OPに名前が載る」というのは単純にモチベーションが上がる…作品への参加意識が増すのではないでしょうか。一方で、作品世界に耽溺させるような作品には向かない(スタッフと違い、キャストさんは声=人と線が引き易いので、嫌でも作品世界の「外」が透け出てしまう)とも思いますけど…選択肢の一つであってもいいじゃないか、と。ドルアーガの専売特許にしてしまうのも勿体ないアイディアだと思います。 作中より先に顔とキャストを明らかにしている斎藤千和さん(一期でマイト・ザ・フール…レッドナイトじゃなかったっけ?)と、音響監督にしてメルト役なので、一石二鳥とばかりに漢字表記だけで済ませている郷田ほづみさん。このあたり、色々と遊びがあって面白いんですが… ジルのチーム側ベンチに、何と一期でお亡くなりになったはずのアーメイさん(左端)。胸に早水リサさんの名前があるのが泣かせます。ただし、どう捉えたものか迷うワンショットでもある。ここに登場したという事は、実は生きている?…その一方でユニフォームの上にブルゾンを着込んでいるわけで、「既に引退(野球と、物語から)している」と捉えるのが妥当なようにも思います。そうだとしたら、早水さん名前だけ出されてノーギャラ?登場損?w…ってまあ、忘れ去られるよりこうやって描いてくれたほうがずっとあったかいですけどね。アーメイは監督としてジル達を見守っている。いいじゃないですか。これはアーメイの生死とはあまり関係がなくて、だからこそ1期パーティメンバーだったメルトは審判であり、クーパはスタンドで応援してるんですよね。当事者から少し距離を置いた、という点で共通している。 で、まあ…単純にスタンスだけで楽しいOPながら、ポイントを挙げるとすると二点。野球の試合展開と、ファティナの位置。 作中展開同様、ニーバとジルの兄弟対決となっていく野球。ヘルメットにあるKとMという表記がちょっとわからない部分です。…名前ではないし、愛している女の名前でもない(ジルがFなら面白いのに!畜生!w)思いつくのは、K=カイ、カーヤ M=メスキア、マルカ(親父)などあるのですが、上手くKとMを繋げられないんですよね。Mチームはベンチを見ても、メスキア連合って感じなんですが、じゃあKって…カーヤ軍?ちょっと保留で…orz この試合、カイが投げている間にニーバのチームがボコスカに打ちまくって(先ほど画像でピースするカイがいたが、自信があったり決め球宣言でピースしていたわけではない。単に「ピースをしょっちゅうするキャラ」だからピースしていただけw)50点以上取っている。対するジルのチームは0点。で、9回裏。ランナーのいない状態でローパーに代わってジルが代打に(どんだけ!ローパー!w)。…勝負は決してますよね?「逆境ナイン」ならここから大逆転劇が起こる所ですが、ジルの次にはフツーにこれまで抑えられてきた打者が立つわけで、どうにもならない局面に思えます。でも、そこに敢えて立つ事に意味がある、とジルをここまで押し上げたのは、ファティナ。 寝坊しているジルを布団ひっぺがして叩き起こすのもファティナ、バッド持って試合に急かすのもファティナ、ユニフォームも着てないジルの背中にペンで名前書いてあげるのもファティナ。 一期OPでもジルの幼馴染ポジションにいたファティナですが、ニーバパーティに収まっていた当時と異なり、今回は作中でも「一期ラストでニーバとカーヤに去られた後、メスキアで爛れていたジルとファティナ」という状況がある為、本編との位置シンクロが起きています。本編ではドルアーガへの再挑戦はジルの方が乗り気で、ファティナは渋々ついていくような関係なんですけど、このOPでは描かれ方が違う。おそらく、序盤に限らないもっと大きい視点で眺めているのではないでしょうか。ここでのファティナはとにかくジルを叱咤し、送り出すという立場が徹底されている。特にそこが映像として出ているのは、ここですね。 ニーバのフォークボールにあえなく三振したジルに「まだ諦めるな!走りなさい!」とばかりに大きな動作。ジルに気付かせるファティナ。キャッチャーの悪送球でボールが外野を転々とする中、今度は三塁ベースコーチャーの位置に立って腕を回しGOサイン。この三塁コーチャーの「位置」が、極めて象徴的ですよね。ジルはファティナの眼前まで走っていって、そこから全力で離れていく。目指すのはホーム、そして… ホームで間一髪セーフ、倒れこんだジルに駆け込むのは…カーヤ。文字通り「一矢を報いる」展開でしかなくて、だから野球の試合自体がどうなるというわけでもないのですが、諦めなかった結果が野球ではなく別の形、女性となって現れています。これはドルアーガ2期に通じている感覚で、2期開始時点がまさにこの9回裏、という事なのでしょう。 二枚目、ちゃっかりニーバとファティナが並び立っていたりするあたりが示唆的です。本編では一期ラスト、ジルとファティナを見捨てて幻の塔へと登っていったニーバとファティナ。描写からするとカーヤはジルのことを「大切だから残した」わけで、ジルに好意を持っているのは明らかなのですが、それからの日々で、ファティナもジルに惹かれだしている。一方ニーバはファティナにあんまり情を感じてないっぽいし(ま、パズズ戦で弔い戦とばかりにわざわざカリーのナイフ使ったりする男なので、それもポーズの分はあると思いますが)ファティナも特別にニーバに惹かれる理由が描写されていないので、どうしてもここは「ジルを巡る、カーヤとファティナの争奪戦」という図式が強く浮かぶのですが、その視点からするとこのOPでの「送り出す幼馴染」はいかにも分が悪い。 というか最後ジルとカーヤ見つめあっちゃってるし、EDはカーヤのプロモーションビデオみたいなものだしで(笑)…予言として強烈すぎるんですよね。フラグ外しもお得意のスタッフなので、この辺楽しみに見ると同時に…どう転んでも、一番美味しいのはファティナだとも思います。ジルに惹かれる彼女が、三塁コーチの境地にどう達するか達しないのか…愉しみじゃないですか。物語に漬かりきった作り手が、この三角関係にどんな味付けを加えるのか。恋愛成就が即ち「○○エンド」なんて、短絡的ですよ。うん。 ちなみにこのOP、ここまで徹底してスタッフやキャストの名前を出しているのに、ここまで大活躍しているファティナ…堀江由衣さんの名前が存在しません。一期OPでは、「堀江」ってユニフォームに描かれてたけどなあ?…それで怒られた(笑)?1人だけ有名だから免除された(笑)?と、この辺どう読んでも楽しい部分ではあるんですけど、どうなんでしょうねえ…ファティナから敢えて声優さんの名前を外す事で、ジルに限らず視聴者を叱咤し、送り出すという「作品の代弁者」そのものに仕立てたのかもしれませんね。9回裏50点差、諦めんなと。三振しても走れと。 …ちなみに、ここが田中宏紀さん原画パートですよね(笑)!←ここしかわかんなかった奴 |
[この記事にコメントを打つ>>>
|