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#288 {作画チェック}{演出チェック}{OPチェック} OPEDのハイエナ 続夏目友人帳 OP
投稿者:ルイ [2009/01/15 00:12]

公式サイト=http://www.tv-tokyo.co.jp/anime/zokunatsume/
絵コンテ・演出=竹内哲也
原画=奥野治男・川添雅和・小林美由紀・高田真美恵・竹内哲也・田中織枝・松野笑美子・山田起生


 「夏目友人長」は1期目も合わせて、OP・EDが非常に上手く作られています。以前一期EDを紹介しましてhttp://www.tsphinx.net/manken/hyen/hyen0246.html今回もEDは岸田隆宏さんによる美観溢れるもの。そちらも良いのですが、今回はこっち(OP)でしょう。現代のアニメーターの中でも、おそらくはかなりの重要人物である竹内哲也さんがコンテ演出を手掛け、原画にも参加しておられます。この方の功績は、単純な動きに「動きの魅力」を付加した事…とでも言えばいいでしょうか。例えば「かめはめ波」を放つなら、誰もがちゃんと、かっこよく動かしたいだろうし、力のある方が描けば皆それなりの魅力をかもし出すだろうと。でも竹内さんって、何でもない動作を「溜め」や「揺れ」みたいなものを使って、あと適度な誇張表現とちゃんとしたデッサン力のあわせ技で、何でもなくはなく、魅力的にされるんですよね。それは「日常の輝き」とでも言った、物語の1つの「小さな(しかし大切な)テーマ」と抜群の相性の良さを示す。あと、この方OP等を手掛けても良いものを残しますね…「ぽてまよ」のOPが記憶に新しい所でしょうか。http://www.tsphinx.net/manken/dens/dens0078.html#455今回はそれと比べても、映像表現としての巧みさを感じさせる、竹内さんの奥行きを感じさせるものになっています。


 このAメロ部分が竹内さんでしょうか。右上・笹田さんの振り返って指差しといった動きはまさに得意ゾーンですし、右下の北本と西村に至っては、制服の描き込みから何から。「かみちゅ」でもこんな皺付け見たぞ…。しかし!今回は竹内さんパートを探す事は、重要ではありません。このOPは、アニメOPというものへのアプローチ、その一つの答えを示している、と思います。

 アニメのOPは、ご存知でしょうが基本90秒、という縛りがあります。60〜75秒くらいのものも時たま見かけますけど、基本は90秒。個人的な嗜好の話ですが、自分は1950年代〜70年代あたりの音楽がジャンル問わず大好物なので…かつての「シングルに5分なんてあり得ない(3分以内がマナー)」というポップミュージックの美学に漬かっているせいもあり、この「圧縮」には肯定的な印象しか持っていません。言い方が悪いかもしれませんが、大したアイディアも乗ってない楽曲でも、90秒に「削ろう」とすればその曲のコアを汲み取り、構造もスムーズになる場合が圧倒的に多いと思っているからです。逆に言えば、余程の曲でもない限り長くて3分、せいぜい2分前後で表現できると思っている。TVサイズに聴きなじんだ後、フルサイズを聴くとガッカリする事の多いこと多いこと…そんな事を言っている自分が、こと語る段となると、削る事を避ける方向に走るのだから人間は面白い。って脱線しましたが、とにかく「90秒の主題歌」というものは、既に俳句や短歌のように、1つの表現たりえると思っているのです。

 その90秒の中で主題歌を成立させようとすると、多くの歌は2つのパターンに分けられる事になります。「Aメロ→Bメロ→サビ→(短い間奏)→サビ」か、「サビ→Aメロ→Bメロ→サビ」。「続夏目」のOPは、その後者の作りを表現に活かしたものになっています。



走り出せ前向いてかじかむ手で空に描いた
※左が冒頭のサビで、右が2度目のサビ。

 一見なんでもない日常が、既に妖怪とともにあるという表現として、この前後の差は秀逸です。時間を置いてサビが繰り返される事の「二周目」の良さを、映像として表現している。また、後ろのサビの方が音が高いですから…そちらに強い意味が乗る事も見越してのコンテです。更には、この後の部分が本当に素晴らしい。

君の未来に祝福の灯り







 冒頭と比較して、もっと遠景からの視点で捉えた三連ショットが「と」「も」「す」のメロディにシンクロして切り替わる。こちらのシーンには人間は映っておらず、もっと自然と一体化した「妖怪観」が現れています。特に素晴らしいのが「す」で、冒頭ではただ水滴でも落ちたかのように思われた波紋が、1分ほど経って妖によるものだ、とされるという認識の切り替えは、ハッとさせられると同時に大変美しいものでした。では、この間=Aメロ、Bメロに何があったかと言ったら、竹内さんパートでも抜き出した部分で…人との出会いなんですよね。



 一枚目の田沼は確か霊感を持っているのだけれど、それが大変弱いものである事もあってか、この描かれ方だと完全に「人間側(夏目にとっての)」になっていますね。それが徐々に切り替わっていって、5枚目の…祖母レイコさんに似てるけど、髪ちょっと短いし新キャラかな?と、名取さんというおそらく「妖怪との中間サイド」を描き、そこから冒頭画像のレイコ(妖力絶大)→夏目、という風に繋げていく。

 つまりは大雑把に人→妖怪という距離の遠い順を人物で並べたようなものになっているんですが(繰り返しますけど、田沼の位置がちょっと可哀想ですけどね。多分夏目にとっては妖怪を知る人間、という存在肯定の「きっかけ」としての友人であって、別に彼と妖怪を通じた物語を紡ごうとは思っていないのでしょう。木の葉背景のシーンは、全て等しく夏目にとっての「日常」と認識されている人たち、という事だと思います)…これは作品そのもののテーマ或いは語り口と合致する部分で、結局夏目にとって、妖怪も、人も、故人も、大差はないんですね。彼自身は間違いなく、妖怪から得たものを人間関係にフィードバックさせているし、逆に人間関係で得たものを妖怪との接し方に用いている。つまりは彼にとっては、もしくは「夏目友人帳」の世界観として、存在が違っても、「心」が同じならば分け隔てする意味はないといった多少楽観的な認識があるはずで…それをこのAメロ、Bメロが上手く表現しています。こうやって人々と接していき、レイコの想いを汲み取り、という日々を経た結果として、視聴者の目に映る認識も2つ目のサビの映像=夏目の認識になっていくという、このあたりの映像としての繋がりが気持ち良いOPです。そして、その2つ目のサビに持っていくのは、ニャンコ先生。

 ニャンコ先生が元の姿で空を駆け、その白い稲妻のような軌跡が空を割き、画面が光に包まれる事で2度目のサビ映像に繋がっていく。この物語がニャンコ先生と出会う事から始まった事をとっても、シフトの象徴として妥当な位置ですし、映像的な韻として、ニャンコ先生がサビ前に変身して空を飛んだ、一期OPも考慮に入れられていると思います。

 最後に、1つ面白い仕掛けの部分。



切り開けその手で 聞こえてるかいこの声が

 ここも「走り出せ」の部分と同じような演出を組んでるんですが、ちょっとした違いがあります。「走り出せ」の部分では、人間達と妖怪経ちは全く影響を与え合っていない。簡単に言えば、夏目の眼前にヒノエ達が存在していても、そちらに目を向けたりはしていないんです。日常に溶け込んでいるカタチですね。「ともす」の部分は先ほど触れた通り、人間が映っていない中の妖怪と自然の関わり。ではここは、というと、人間(と、現在そちら側に属しているニャンコ先生)は、皆妖怪の動きの影響を受けている。一段目では名取が柊たちが現れた事に気付いて顔を上げているし、二段目では通り過ぎる小さな妖怪たちに、ニャンコ先生は目を向けている。…で、三段目です。三段目の彼女は、先ほど触れた新キャラ?らしい帽子少女なんですが、彼女は冒頭サビ時は、他の2人(1人と1匹)と違ってリアクションを取っていない。ところが、2度目のサビではハッと振り返っている。後ろの歌詞は「聞こえてるかいこの声が?」
…ここがちょっとした仕掛けですよね。

 単純に妖怪いるいないの差異だけで演出を徹底させたいなら、この帽子少女は冒頭サビの時点で、絶対振り向きます。振り向かせるはずです。で、ニャンコ先生の空間への目線など同様こちらに「違和」を感じさせて、2度目のサビで答えを提示する。このやり方でいいはずなんです。…でも、ここはそういう描き方をしていない。恐らくこのカットだけ、ちょっと別の演出が仕組まれてるんですよね。通り過ぎる巨大な顔の妖怪が、妙に透けている事も含め、この少女が最も「妖怪を感じ取れる人間」としてのギリギリという立場として、二度目でようやくちょっと気付く(「聞こえてるかい?という気付きの促しとのシンクロ」)事が出来ていると。多分この辺、意図的に組んでると思います。既に夏目は、一期一話の頃言われていたような(いや、正直一話の頃からあんま感じなかったけどw)妖怪に対する苦手意識は無くなっているでしょうから、それを伝達するような相手として…夏目の道の後ろから歩いてくる少女、とでも言うような位置になるかな…?とは思っているのですが、まあこのあたり「続」の構成の1つポイントになると思うので、お手並み拝見といった所ですね。

 こういった細かい演出も含まれていると同時に、何よりTVサイズ主題歌に抜群に合わせた、良コンテです。歌詞に細かく合わせていくやり方とはまた違う、全体としての歌との適度な距離感が、なんとも言えず美しい。お見事です。
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