■[アニメ諸評][空の境界] ルイ >> ☆☆☆☆☆:(一章・俯瞰風景)原作者「奈須きのこ」の特別なファンではないと思っているし、原作も未読です。原作が手元にあるのに読まないようにしているのは、アニメを評価する時に、なるたけ普通に構えたいから。勿論原作買ったのが1年前などと言うなら、普通に先に読みますよ?調整次第でどうにでもなる差しかなかったから、そうしたんです。・・・と、大事に大事に「原作知りません」という位置を守り通してきたものの、正直な所1度でも奈須きのこ作品に触れていれば、真の意味での「初見」感覚は得られないという事に、一章を観て気付きました。それはつまり、この方の作品には通底する部分がしっかりと存在する(人はそれを「作家性」と言いますよね)という事になりましょうし、しかしこれが純正の奈須作品ではないという点に注目するなら、僕にその通底の実感を与えたのだから、このアニメ版もまた、原作世界をちゃんと汲み取っている、という事になるのでしょう。作品テーマが繋がっているかどうかは7分の1?だけに実はわかっていないんですけど、精神が・・・イメージで言葉を紡がせてもらうと、『精神の風景』が「Fate」を遊んだ時とほとんど同じ。特に主人公格の男(シキという女の子が主人公だとは思うけど・・・)、コクトーくんが口にする「もしもの話」。要約すると「ウィルスもちの自分が死んで100万の命が助かるなら、自分は死ぬ。でも、それは弱さなんだろう」。・・・どこをどう考えても、Fateの主人公、士郎エピソードの言い直し。状況的にはコクトー君のたとえの方が「是非もない」(つまり、たとえ死んでも・・という意志の問題どうこうじゃなく、自分が生きてたら100万死ぬし、自分が死んだら100万助かるという明確な線引きがされてる)ものではあるんですが、結果的にその「自己犠牲的な英雄精神」を一歩足りないものとして見つめている視線は同じ。既に弱いと言い切っちゃってる分、このコクトー君の方が人間としては出来上がってるんでしょうけど・・・。とにかく、奈須きのこ作品でした。原作未読で言うのも説得力皆無ながら、原作ファンは安心して観ればいいのではないですか(本当に皆無だなw)。奈須作品完全にノータッチの方は、一応大切な「ファーストコンタクト」になるのですから、じっくり考えて選ぶといいと思います。多分、文字のメチャクチャ多い小説か、Fateのようなノベルゲームの方がいいんでしょう。その核を掬い損ねないだろうから。・・・・・・・・作画としては、ufoテーブルお見事でした。線を統一させるのは固定ファンがいる人気作ゆえの配慮で、それはアニメーターの暴走を生まない→作画好きにはちょっと残念だったりもするんですけど、ufoなちょいロング目のレイアウトが作品の色にピッタリだったり、水・煙・光といったエフェクト系の表現に「らしさ」が全開だったりしたので、これもまた立派な「ufo作品」と呼べるでしょうね。作画的に良かったのは、シキが片手でハーゲンダッツを食べる動きと、屋上での戦い一連・・・特に、屋上から少し低いビルに飛び移った時の滑り→踏ん張りが良かったなぁ。原画には木村豪さんなどのufo組に加え、崎山北斗さんなんかもいらっしゃいました。…崎山さん多分設定画を全力で崩す人だから、こんな管理された作品には向かないと思うが・・・wせいぜい、ここのふんばりか、最後の敵が堕ちるあたりしか当てはまらないような・・・ま、いいか。多分意識的に「屋上」というシチュエーションと「俯瞰」を合わせてきているんですけど、それがユーフォ印レイアウトによって全力描写されているというのも、映像作品としての美しさに繋がっていて、素晴らしかったと思います。これまでこのビルで自殺した娘たちは「浮遊してみて」落ちちゃったから死んだんだけど、このシキは明確な意思をもって「飛行」したから、その先に待つのは固い地面じゃなく、少し低い屋上なんですよね・・・って、作家とか作画とか演出とか、色んなものに注目しすぎてゴッチャゴチャになっちゃいましたが・・・ワザとですスイマセンwこういうダダ長いの好きなんですw・・・それくらい情報量がある作品だった、という事です。とはいえ、情報量=観辛さにはなっていない。奈須きのこ作品にしてはセリフも絞り込まれてますし・・・これはオススメの作品。是非是非。 <2008/06/04 05:35> [返] [削] |
漫研ノート
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