■[映画諸評][トム・ダウド〜いとしのレイラをミックスした男〜] ルイ >> ☆☆☆:いやぁ驚いたなあ・・・トム・ダウドが、マンハッタン計画やビキニ湾実験に携わっていたってのは(笑)。ってトムダウドって誰やねんという話ですが、音楽のエンジニア、プロデューサーです。個人的にもトム・ダウドは初めて音楽の「裏方」を意識させてくれた名前であり、その名前は生涯忘れる事はない。タイトルにもある「いとしのレイラ」と、あともう一枚「つづれおり」が与えてくれたものは本当に大きい。この両作品のおかげで、僕は音楽を真に好きになれた。それまでも音楽は好きで聴いていたし、その中には今聴いても素晴らしいものもある。けれど、この二枚あたりを聴いた時に、音楽に接するこちら側の、奥行きが変わったんですね。楽器の主張バランスであったり、アルバム全体という一つの作品の為の、各楽曲の順番であったり。これ以降アルバムという表現の虜になってしまい、ベスト盤であるとか、ネットでの曲単品購入みたいなものに全然興味を持てなくなってしまった。だって、アルバムごとにミックスレベルから表現が違うのに一緒くたって時点で表現を一つスポイルしているし(まぁベストにはその面白さもあるんですが)、その前後の繋がりもないのに一曲聴いても、と。それは漫画やアニメで言えば、1話単体の評価に近い、と言われて納得できるでしょうか。でも、実際そういう面はあるですよね、音楽の深い森にあって、そういう触れ方は。…と自分語りをしたくなるほど偉大な人物、トム・ダウドの生涯を振り返るドキュメント映画。そこらへんに超大物の名前がポイポイ出てきて…やれレイ・チャールズにアドバイスだの、やれクリーム「サンシャインオブラブ」にダウンビートを織り込んだのは俺だの、やれ夜中にチャーリー・ミンガスがやってきて直立猿人を録音しただの・・・凄かったです。まぁ映画的には全然面白さなんてないんですが、終盤、「いとしのレイラ」をスタジオでもう一度ミックスしてみせているトム・ダウド翁の楽しそうな表情を観ているだけで、何か満たされる、感じ入るものがありました。レイラの曲のキーを担っているギタリスト、デュアン・オールマンは35年も前にこの世を去り、この映画の主人公、トム・ダウドも数年前に亡くなった。けれど「レイラ」は今もこの世にあり、僕のように、その曲が生まれた時に存在すらしていなかったような人に涙を与え、蒙を拓かせる。本当の音楽の素晴らしさと、それに取り付かれた男の素敵さを謳いあげた、音楽好き「だけ」にとっての名作ですね。いやぁ、当時のアメリカの大学の物理学研究が、最前線と比べて10年くらい遅れてて良かった。お陰で復学する気が失せたトム・ダウドは音楽の世界に来てくれたわけで・・・全く、世界は不思議で出来ていますね。 <2008/08/05 18:12> [返] [削] |
漫研ノート
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