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■[マンガ諸評][かりん] ルイ >> ★★★★:(全14巻)傑作アニメ「ネットゴーストPIPOPA」の木村監督&山田脚本コンビの原作ということで、アニメと併読して色々確認する為だけに・・・つまり「アニメの為に」読み出したんですが、気付けばアニメ置いてけぼり。漫画だけ読了。この作品、やっぱり構造が見事。構造ちゅか、ちゃんと言うと、生み出した構造への自覚が素晴らしい。凄く単純な事で、しかしながら難しい事だと思いますが、日常に何らかの非日常のエッセンスを一滴振り掛ける事で「物語」を駆動させるとするじゃないですか。超能力でも、なんでもいいんだけど。でも、その一滴の雫は、作品世界そのものに波紋を与えるはずなんですよね。想像力が欠如していると、その波紋を途中で封じ込めてしまうのだけれど、この作品はラブコメの体裁を保ちながらも、かなり自覚的に「増血鬼」という酒の席で生まれたような、ふざけた一滴の生み出す波紋を追いかけた。これはどういう事なのか?この事でどうなるのか?と…作者が巻末で、ネタ気味に何度も自らを「不幸フェチ」と称していて…額面通り受け取っていいものかどうか迷うけれど、多分その「不幸フェチ」が本作を良作たらしめたポイントなんでしょう。つまり真の意味で不幸フェチであるなら勿論の事、それがポジティブシンキングをしきれない人格の照れ隠しであったとしても、生まれた状況に存在する『闇』自体をしっかりと見つめないと、フェチ宣言が事実でも韜晦でも物語で不幸を強調する事は不可能なんですよね。終盤、ちょっとその「不幸フェチ」っぷりが過剰反応したか、色々と展開がギリギリなんですが・・・正直別の道も沢山思いつくけれど、まあこれもアリかな、と思います。家族の記憶を持ったまま人間として生きてもいいじゃないかって思うんだけど、多分そうなるとかりんにとって「滅び行く吸血鬼家族」を、これまでの自分の立場と正反対に「自分が取り残してしまう」と感じるはずで・・・特に妹。そこで「昼」と「夜」の板ばさみを与えるのは、せっかくウルトラC気味というかからくりサーカス的なw展開を持ち込んでまで1つの救済を与えた意味がない。その「救済」自体は正直好きではないんですけど、好き嫌いを別にすれば、これ、どんな救済があろうとなかろうと「選択」は訪れるんですよね。その辺「不幸フェチ」ですから、多分どこを歩んでも見過ごせないはずで、雨水くんとラブラブカップルになって今でも実家ともたまに交流してまーす☆実は今でも2階にいるのです☆なんてのは作家的に描いてる自分が信じられないだろうと。…じゃあ、この着地もむべなるかな。それなりに好意的です。もっとハードに追求したら、☆増えましたけどねwいやいや、良かったです。妹のアンジュが可哀想で可愛くてね。終わってみたら彼女の物語、というか「増血鬼を持ってしまった家族の断念の物語」になっていたという。で、その断念を受け止めて、雨水くんはかりんを幸せにしていくんですね。世界は全能感に満たされていない。何かを得る事は何かを失う事。・・・設定的な終盤の歪さはさておき、その倫理観は好みです。良かった。ホント、アニメのサブテキストのつもりだったんですが(笑)反省だな。  <2009/02/02 12:49> [返] [削]


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