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私の愛した悪役たち VOL.5

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乾俊一  ホセ・メンドーザ  ワムウ  辻井双一  シャンユー
パイカル  ウルフ・チーフ  ポルター・ガイスト  鬼門八人衆  董卓


第41回 乾俊一(六三四の剣)
 小さいころから剣の道を志し、ひたむきに修行を続ける少年「夏木六三四」とその仲間とライバルたちの青春群像を描いたものが「六三四の剣」の大まかなあらすじであるが、その中でも一際異彩を放ち、六三四の宿命のライバル「藤堂修羅」とならんで、いや場合によっては修羅をも上回るほどの存在感をみせたのが「乾俊一」である。示現流の「日高剣介」六三四の兄貴分「大石巌」修羅の父ちゃん「藤堂国彦」二刀流「古澤兵衛」強敵、ライバルがひしめくこの物語で乾は決して強いほうではない。(いや、もしかすると最弱かもしれない)しかしそれでもなお乾が特別なのは彼が「六三四の剣」唯一の『悪役』だからである!“母親に殺されそうになった”という凄まじい過去を持ち、深く暗く沈んだ独特の目つきで、わけも無く六三四を憎んで殺気の全てを六三四にぶつけてくる。実力的にはどうにも六三四の方が上らしく(笑)その憎悪の念に怯えた六三四にメッタメタに叩きのめされ、遂には事故で左腕がへし折れてしまう。後遺症が残り剣道選手としての命脈を断たれてしまった乾だったが、それでも強くなることを、六三四への復讐をあきらめず、右手に防御の小刀を持ち左手に攻撃の大刀を持って、融通のきかない左腕は必殺の一撃を振り下ろすだけの機能にするため鉄のように鍛え上げる「逆二刀」を考え出して、殺される覚悟で最後の二刀流の達人・古澤兵衛のもとへ師事に赴く。そして古澤老の二刀流を身につけて再び六三四と対峙するのだ!くー!燃えるシチュエーションだ!六三四も倒れても立ち上がる勇気をもった強い男だが、作中ここまでの不幸を与えられて、ここまで成長したキャラは乾だけだ!六三四に敗れた後「古澤先生!先生に授けられた二刀流は無敵や!敗れたのはオレの剣の未熟さのせいなんや!」と悔し泣きするシーンは良かった。(あれ程の努力をしたのに未熟と思えるんだもの、いい男だよ)「死にたがってるかのように剣を振るう」と評された乾だが、ぼくは乾が「生きよう、生きよう」ともがいてるようにしか見えなかったし、応援せずにはいられなかった!


第42回 ホセ・メンドーザ(あしたのジョー)
 「矢吹丈」最後にして最大の敵。パンチドランカーとなりもう1度頭部に強打を食らえば“死”すらありうる。(いや、確実に死ぬ!)リングに上がらないでほしいと泣きすがる「白木葉子」を振り払い、それでも戦わねばならななかった男。世界チャンピオン「ホセ・メンドーザ」には、そういったジョーの全てを受け止める義務があった!よくジョーは「丹下のおっつぁん」と自分が“野生児”であることを強調し、対戦相手を“コンピュータ”マシーン扱いして戦意をたかめていた。多分にもれずホセもコンピュータ扱い(笑)しかし、ホセがただのコンピュータなら、“真っ白に燃え尽きる”ジョーの情熱を真っ向から受け止めていく事など不可能だったろう。それほどまでにホセは最後の対戦相手にふさわしく強烈に強い男だった。「ホセは実は打たれ弱い、だからエキシビジョンではわざわざおかしなデモンストレーションまで見せて自分の打たれ強さを強調したのだ」という話がある。だが、倒れても倒れても立ち上がりつづけるジョーと最終ラウンドまで戦い「ダブル・クロス」「トリプル・クロス」を立て続けに食らって、なお立ちあがる男のどこが“打たれ弱い”のか?きっと、ホセに言わせればこういうことだろう「私の弱点?んーそうだな・・・打たれ弱いトコだろうか?普通の人の30倍は打たれ強いけどね。でも、パンチ力なら普通の人の50倍はあるし、防御力なんか100倍はいってしまうだろうから、敢えて言えば・・・ってところだろうかフフフ」(岡田真澄調)つ、強い!問答無用の強さだぜホセ・メンドーザ!ぼくはこのホセの“ただ単に強いだけ”という感覚が大好きで、下手をすると永遠のライバルといわれる「力石徹」よりも、お気に入りのキャラなのだ。


第43回 ワムウ(ジョジョの奇妙な冒険)
 「ジョナサン・ジョースター」の祖父「ジョセフ・ジョースター」がやっとのことで倒した吸血鬼「ディオ」。しかし、その吸血鬼たちを生み出す「石仮面」を造った恐るべき種族がローマ(とメキシコ)で冬眠していた。それが「カーズ」と「エシディシ」と「ワムウ」(と仮名サンタナ)だ!彼らを倒せるのは、ジョナサンの血が受け継いだ“波紋の戦士”だけ!といったところが「ジョジョの奇妙な冒険・第二部」の主なあらすじだが、ジョセフがサンタナを倒した後に現れる三人組の一番下っ端がワムウである。ただし、単なる身分か年功序列であろう。ワムウ自身はカーズ、エシディシの二人に妙にへりくだっているのだが、二人はワムウをサンタナと同じただの下っ端だとは思っていない。実際戦闘力は三人の中で一番高かったと思われる。もともと「柱の一族」は自分の肉体をどうにでも組みかえれる戦闘種族なのだが、ワムウはその戦闘肉体にできることできないことを実際に調べ上げ数々のオリジナル技を編み出した真に戦士なのだ。「姿を消す技」や「最終流法・渾楔颯」の技々の中でやはり特に良かったのが「必殺流法・神砂嵐」だ。この第二部の中で、“とにかく神砂嵐を食らったら負け”というルールが厳然と守られていたのが嬉しかった。“必殺”という技をくらっても“根性”で立上がるというような演出は(他はともかく)「ジョジョ」ではやめて欲しいからね。シーザーとの対決を一発で逆転し屠り去った技だけど、ジョナサンとの対決では結局一発も打たせてもらえなかったことになる(打ったときには“死に手”になってたから)。しかしワムウさん、あなたの本当の敗因は自分に喝をいれるために眼を潰したことに尽きるんじゃございませんか?眼が見えてれば明らかにジョナサンに勝っていたと思うんですけど・・・・・


第44回 辻井双一(伊藤潤二、恐怖読み切りシリーズ)
 基本的に短編マンガを主流に描いている伊藤潤二さんだが、いくつかその世界観が構築された“シリーズ”が存在する。死なない少女「富江」のシリーズ、異世界につながる屋敷に一人暮しの「押切くん」のシリーズ、そしてぼくが愛して止まない天然呪術師「双一くん」のシリーズだ。
 田舎のごく普通の明るい家庭“辻井家”に、やけに暗い目をした末っ子がいる。それが「双一」くんだ。おじいちゃん、お父さん、お母さん、兄の公一、姉のさゆり、他の家族は皆明るくていい人たちばかりなのに、何故か双一くんだけは根暗で意地が悪く、いつも何本かの釘を口に含んでそれを牙に見立て、とにかく気味の悪い子供である。しかし、この少年ただの根暗ではない!彼はどんな経緯かはわからないが謎の魔術の使い手なのである。一度怨みを持った相手には執念深く呪いをかけ、本人いわく「ホラーな目」に必ず会わせてくるのだ!わら人形の呪いは言うに及ばず、生活態度を改めさせに来た教師の魂を布人形に移し変え、西洋風の棺桶を作ってくれると約束したまま死んでしまったおじいさんを無理やり生き返らせて棺桶を作らせたり、お茶目な蜘蛛の着ぐるみでクラスメートを脅かしたり!どうも行方不明になった自称予言者のおばあさんの影響らしいが、辻井家のどこを見渡しても魔術など学べる環境は無く、独学というかほとんど先天的にこのような才能があったとしか思えない、まさに悪魔の申し子のような小学生なのだ!!だけど兄貴である公一や、またいとこの路菜にはまるで歯が立たないんだよなぁ!(笑)おっかしぃんだ!これが!この世界で双一くん以外の超能力者なんかいやしない。公一くんや路菜ちゃんも全くの普通人である。ただし絵に描いたような“いい人”。双一くんの意地悪な行為には断固とした態度でいどむが、こらしめたりした後に「ちょっとかわいそうだったかな?」とか懲りもせず考えちゃう人たちなのだ。また悪さをすに決まってるのに!(笑)次から次へと悪魔的な悪戯をはたらくが「人を呪わば穴二つ」を体現したかのような双一くんは、真面目で素直な二人には最後の最後で負けてしまう。それがなんともかわいい!一家団欒に加われずふすまの外で、何かぶつぶつ言っている姿を見ると「本当は寂しがり屋なんだね」と思わずニンマリしてしまう。あれだけ不気味なのに、かわいくてしょうがない少年なのだ。


第45回 シャンユー(ムーラン)
 ディズニー・アニメ初の“中国もの”「ムーラン」を観に行った。主人公の「ムーラン」や「シャン隊長」、道化役のチビドラゴン「ムーシュー」(声:エディー・マーフィー!)、そしてご先祖の霊魂たちなど、登場人物たちはみな魅力的で楽しませてもらったのだが、その中でも一際異彩を放つ!ぼくの“悪役好き”の魂をシビれにシビれさせた人物がいる!それが敵集団フン族の将軍「シャンユー」である。実はぼく、ムーランたちはほとんどそっちのけで、この人が登場する度に心の中で奇声を発してました!(笑)この人、とにかく無茶苦茶カッコいい!巨大でずんぐりむっくりとした身体、たくましい四肢、いかにもモンゴロイドだが同時に猛禽類を想像させる精悍な顔つき・・・つ、強そうだ!本当に強そうだ!回りを固めるフン族の戦士たちも、あるいはシャンユーよりも巨大、あるいはシャンユーよりも目端が利きそうで、ひとくせありそうな者ばかり、それを当たり前のように統率するシャンユー。黙ってると「亡者の箱まで♪にじり登った十五人〜♪一杯やろうぜヨーソロー」とか唄い出しそうだ!(これは脱線)そのシャンユーの一番のポイントは何と言っても彼が飼っている鷹だろう。まずディズニーならではの広大で美しい立体感にあふれた景色が展開する。そこへ一羽の鷹が飛んでくる。何者にも邪魔される事なく美しい弧を描くその鷹にぼくらは一瞬目を奪われる。そしてその鷹はふいに滑空して飼主の腕に停まる。そこまでやってドン!っとシャンユーが登場する!か、カッコいい・・・何故にそんなカッコいいの?シャンユー!彼が登場する前には大抵、その鷹の前振りがつく。そしてディズニーなら普通、ペットにはコミカルなキャラクターを持たせるのだが、その鷹はあくまでただの“獣”、黙々とシャンユーの“アイテム”なのだ。それがカッコよさに拍車をかけている。
 そして物語のクライマックス、すっかりフン族を全滅させたと思っている皇帝が、宮廷に集まった国民たちの見守る中、殊勲者シャン隊長に褒美の剣を渡そうとする。しかし突然滑空してきた鷹がその剣を皇帝の手から奪い取る!そして宮殿の屋根の上にいつのまにか潜んでいた黒い影に剣を渡す。受け取った黒い影はゆっくりと立ち上がる・・・・・シャンユーだ!やつは死んでなかったのだ!あわわわわわわわ・・・(シビビビビビビ)・・・シャ、シャンユー将軍!それ、まるっきりヒーローの登場の仕方やんかぁ!!もうぼくは、どうにもシャンユー将軍のとりこになってしまった!この凝りに凝った“登場演出”はむしろ日本的なものを感じさせる。とにかく、これまでのディズニーにはなかった全く新しいタイプの『悪役』が、ここに誕生したのだ!

第46回 パイカル(ルパン三世)
 ルパン三世にとって最大の敵とはいったい誰だろうか?やっぱり「マモー」なのだろうか?それとも「カリオストロ」伯爵?'98年現在も連綿と製作される「ルパン三世」、の作中でルパンはCIA、軍需産業、巨大地下組織といった世界を牛耳ってるような連中と何度も戦ってきた。(たぶん、マモーやカリオストロ伯爵のこともいずれ書くだろうが)しかし、それらの人々を押しのけて、ぼくの心中にルパンのライバルとしてひどく印象に残ってる人物がいる。それが旧作「ルパン三世」の第二話「魔術師と呼ばれた男」に登場する「パイカル」である。実は、ぼくは“ルパン旧作世代”ではない。それどころかバリバリに“新作世代”といっていい人間である。しかし旧作の再放送を観るまで、毎週のように見ていた新作ルパンは、言ってしまえば「サザエさん」のようなもので、ぼくがルパンを最初に一個の作品として意識し出したのは、旧作のこの「魔術師と呼ばれた男」を、見てからと言えるかもしれない。それほど「うーん、これは面白いなあ」と思ってしまった話なのだ。
 パイカルの具体的な正体は分からないが、たぶんルパンと同じく裏の世界では知らぬ者のいない男で、きっと“魔術師”と呼ばれていたのだろう(笑)指から炎を出して相手を焼き、空中に立ち、そしてマグナムもバズーカも効かない不死身の身体を持つ。そのパイカルが大切に保管する三枚のフィルムを狙って峰不二子がパイカルに接触してくる。そしてフィルムを奪った不二子はルパンの隠れ家に逃げこんでくる。そうして二人の不死身の男は不可避の対決へと向かって行くのである!指の炎は火炎放射器、空中浮遊は硬質ガラスと次々にパイカルの魔術のタネを明かしていくルパンだが、最後に残った最も厄介な不死身の身体は、パイカルが開発した人体超硬質化クリームによる作用という、タネも仕掛けもないところが何かよかった。結局ルパンにフィルムから同じ物を作られて敗れてしまうのだが、自分自身を魔術師に見立てたその演出めいた振る舞いにダンディズムを感じ、それ以来ただの1話限りの敵に過ぎないパイカルがぼくの心に残っているのです。

第47回 ウルフ・チーフ(侍ジャイアンツ)
 サムライ対インディアン。不撓不屈の精神を持った二人がぶつかり合えばどうなるか?「侍ジャイアンツ」の主人公「番場蛮」(んー何回聞いてもいい名前だ)と大リーグ・アスレティックスの「ウルフ・チーフ」の激突がまさにそれだ!でっかい巨人を食い破ると宣言して不吉な背番号「4」を背負う蛮ちゃん。(そして、ものの見事に川上監督の口車に乗せられて巨人の戦力として丸め込まれた。おそるべし川上!)迫害されたインディアンの復讐心を胸に同じく不吉な背番号「13」を背負うウルフ・チーフ。やはり番場蛮、最大のライバルと言えば眉月でも大豊でもなく、このウルフ・チーフをぼくは挙げてしまう。
 巨人が練習試合をしたアスレティックス戦で蛮とウルフはしこたまやり合い、その時の再戦の誓いを守ってウルフは来日!阪神タイガースの選手してバッターボックスに立つ!彼は蛮ちゃんとの対決のために「スクリュー打法」というものをを編み出していた。変なバットの振り回し方で打球に異常回転を与え、選手が捕球したが最後下手をすれば重傷を負うという恐怖の打法だ!これに対して蛮ちゃんはドラム缶の中に入って八幡先輩に崖の上から転げ落としてもらうというワケの分からん特訓で「大回転魔球」を身につける!“スクリュー”と“大回転”?・・・思えばこの時に気がつくべきだった。大回転魔球に手も足も出ないウルフが遂に攻略の糸口を見つけた最後の打席、ぼくが息を呑んで見守るそのテレビ画面には、想像を絶した世界が展開していた!「はあぁぁ〜!!な、なんかマウンドとバッターボックスでお二人ともグルグル高速回転してらっしゃるんですけど〜!!」な、なんて光景だ。しかし二人ともマジだ!目がマジだぜ!そうだよ、男と男の勝負にカッコ悪いもへったくれもあるもんか!ちくしょう、なんだか胸が熱くなってきたぜ!いけいけウルフ!蛮ちゃんも負けるなー!・・・と言うワケでウルフが好きですね(笑)実は大回転魔球をやぶるのは眉月の方でこの話もまた最高なんだけど、これはまた別の機会に。しかしそういった「侍ジャイアンツ」に登場する連中の飽くなき闘争心がぼくは大好きで、燃えに燃えた作品でした。

第48回 ポルター・ガイスト(恐怖新聞)
 読めば百日寿命が縮まり、死ぬまで購読を止められない、文字通り恐怖の新聞「恐怖新聞」!!主人公「鬼形礼」の元へ問答無用に毎晩配達される!しかもその記事の内容は、鬼形少年の生活に密接に関わるもので、サービス精神も満点でかなり“面白い”らしく、いつしか鬼形少年は恐怖新聞の熱心な愛読者となってしまう!(笑)うーん、今にして思えばすごい恐怖マンガもあったもんだ。しかし、当時このマンガを前に僕の背筋は凍りつきっぱなしだった!その恐怖新聞を配達する張本人が、今回の『悪役』、騒霊「ポルター・ガイスト」である。しかしこの人(?)と鬼形礼の関係はちょっと変わってる。除霊不可能なほど強力な霊である彼は決して他の悪霊が鬼形少年にとり憑くことを許さず、(おそらくは病気や事故も含めて)死に至る災厄のことごとくを退け守ってくれる。恐怖新聞以外の方法で鬼形少年が死ぬのは許さんというわけだ。そして、さっきも言ったように、鬼形少年は鬼形少年で恐怖新聞の織り成す怪奇ワールドに夢中になってしまい、また暫定的にしろ自分の頼もしい守護者であるポルター・ガイストに親しみさえ持ち始め「よーし、今晩ポルター・ガイストに聞いてみよう!」とか言っちゃたりするのだ(笑)それもポルター・ガイストの策略と言ってしまえばそれまでなのだが、「あんたみたいな強い悪魔に見込まれたもんはしゃーない。その代わりめいっぱい楽しませてくれな許さんで!」といった感じだろうか?実際、ポルター・ガイストは(少なくとも怪奇現象に関しては)物知りで、ユーモアもあり、ときに親切でさえある。僕もこの“スス汚れ”のような顔(笑)をしたポルターさんには『悪役』という認識はまるでなく親しみを持ち、少年マンガにどっぷり漬かっていたこともあって「やがてポルター・ガイストは鬼形少年を心から気に入ってしまい、とり殺すのを止めて霊界へ帰ってしまうのだろう。それがこのマンガの最終回」などとさえ考えていたのだ。皆もそうだったでしょ〜!?(泣)ああ、しかしそれは甘かった!鬼形礼は結局とり殺され、ポルター・ガイストは高らかに笑って去って行く!!そして今度は鬼形礼が新たな“恐怖新聞の配達人”となるのだった!あの衝撃は忘れられない。正直に言うと僕は今でもポルターさんに対して『悪役』という認識は無い。どういう関係であれポルター・ガイストは主人公の鬼形礼とパートナーだったと思う。しかし、まあ「恐怖新聞」を読んだときの僕の恐怖を紹介するために、敢えてここでは『悪役』として扱わせてもらいました。悪いねポルちゃん!(笑)

第49回 鬼門八人衆(獣兵衛忍風帖)
 アニメーター川尻善昭さんのオリジナルアニメ作品に「獣兵衛忍風帖」というのがある。はぐれ忍び「牙神獣兵衛」が疫病の廃村に流れつき、そこで公儀隠密と謎の忍者集団「鬼門衆」の陰の戦いに巻き込まれる、という話。これが、ものすごく面白い!特に獣兵衛と次々に対決していく「鬼門八人衆」の一人一人のキャラクターが、もうサイコーなのだ。その誰か一人だけ上げて紹介するには、あまりに八人それぞれが楽しい人たちなので、もう全員書いてしまおう。(別に一人、獣兵衛に毒を打ち込んで無理やり仲間に引きこんでしまう公儀隠密の生き残り「濁庵」も、なかなかの悪者っぷりなのだが、この人はまた次の機会に)
 まず一人目「鉄斎」、こいつは身体が岩石化してあらゆる攻撃を弾き返してしまう。二人目「紅里」、数百匹の毒蛇を自在に操り自身も“脱皮”して逃げたりする楽しい女性(笑)三人目は「蟲蔵」セムシの背中にスズメバチの巣を飼っていて数千匹のスズメバチで攻撃してくる。四人目「現夢十郎」盲目の剣士だが凄まじい剣豪。五人目「シジマ」影に入り込んで攻撃してくる厄介な相手。死体や意識のない身体を操る能力も持ってる。六人目「石榴(ざくろ)」、火薬の使い手で火薬をしこたま詰め込んだ“生き物”を使って、すんげぇ爆発を巻き起こす。七人目「百合丸」、相手に鉄線を巻きつけ体内発電で感電死させる。美童で首領の弦馬にベタ惚れ。そして八人目「氷室弦馬」、獣兵衛とは昔の因縁があり、殺しても殺しても生き返る“転生の術”を使う。どうです?僕はこういう奇妙奇天烈な人たちは昔から大好きでツボにはまりまくりなのだ!この中からさらに気に入ってるキャラを上げると鉄斎と石榴かな。鉄斎の使うワケの分からん馬鹿デカさの手裏剣はインパクト十分で、人間だろうと大木だろうと問答無用に真っ二つにしてしまう!それをいとも軽々と片手で使いこなす鉄斎の描写がまたカッコいい!それと勝生真沙子さんの好演が光る火薬使い石榴もかなり好きなキャラで、電気美童・百合丸に惚れていたんだけど振られてしまい、その腹いせの「おまえは紅里も弦馬どのに抱かれてることを知っておるのか?弦馬どのは男も女もだ!」という捨て台詞が何か好きでして(笑)それでも根に持ってて百合丸を消し飛ばしちゃうのも(獣兵衛に勝てたのに〜!)隠し金山の財宝を載せた船を沈没させる爆弾代わりにされちゃうのもよかったなあ(笑)やっぱり一番好きなのは石榴かな?あと大ボスの弦馬どのは声・五里大輔さんのゴツゴツにゴツいキャラなんだけど妙な色気が“両刀使い”っぽくってよかった(笑)

第50回 董卓(蒼天航路)
 「三国志演義」を読むと董卓という男は黄巾賊の討伐に引っ張り出されたが連敗し、劉備の義勇軍に助けられても平民とみてとると傲慢不遜な態度をあらわにし、偶然で権力を手に入れると悪逆非道の限りを尽くした暴漢として描かれる。しかしこれが「三国志」の正史を読むとなかなかの豪傑であり、異民族とも深く交わる侠漢、上司からもらった褒美は部下に分け与える好漢としての一面ものぞかせる、思うに国境育ちの董卓にとっては洛陽、長安はどこまでいっても“敵地”だったんだね。そんなワケで、正史をかじった人間なら「三国志」がマンガ化などされた時、"演義”の解釈で決定付けられたイメージに満足できなかったり、邪魔に思ったりする人も多いのではないかと思う。僕も前々から「董卓」と「袁紹」はもっとしっかり描いて欲しいと思っていた。まあそれを言うと曹操も長いこと『悪役』としてのイメージが定着しつづけ「劉備より曹操の方がカッコいいじゃん」みたいな認識が一般に広まってきたのも、長い「三国志」の歴史からすると、つい最近の事である。(本場中国ではどうかは知らない)恐るべきはフィクションで印象付けられる偏見。しかし、それを今度は違った描き方をして“新釈”として喜ばれるのも、またフィクションの面白さで、この新釈三国志マンガ「蒼天航路」を読んでると原作の李学仁先生からはそんな気迫がひしひしと感じられる。なかでも董卓は一、二を争って描きたかったキャラじゃないかと、元々『悪役』として董卓が好きだった僕は嬉しくなっていた。しかし欣太先生の描いた董卓はそんな想像を絶して余りある魔王だった!!いや、李学仁先生の想像という意味じゃなくて、僕の想像として(笑)それだけ、この董卓の一つ一つの行動に驚嘆させられた!なかでもシ水関で牛の大群を追い落としてそれを階段に断崖から降り立つシーンはド胆を抜かれた!その後のセリフ「我が後方の敵はことごとく首を刈り取りその首で塚を築けい、戦場で董卓の名を聞けばそれだけで臓腑を吐いて死ぬようにだ」というセリフにも!遷都の協議で反対意見を言っても賛成意見を言っても気に入らなければ死刑!堂々たる信念を持って自分の筋を通し、なおかつ董卓の味方でなければ生きる価値なし、という理念は“暴虐”以外のなにものでもないのだけど、それを無言のうちに実行して、そして滅んでいく董卓は最高にカッコよかった。死んで子供にチンポ突つかれてるとこも含めてね!(笑)

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