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私の愛した悪役たち VOL.6

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第51回 メフィラス星人(ウルトラマン)
 「よそう…」このセリフを聞いた時の僕の衝撃を理解してもらえるだろうか。最初にメフィラス星人の存在を知ったのは「ウルトラマン大百科」だった。そこに書かれた解説、“ウルトラマンと同等の能力を持ち、バルタン、ザラブ、ケムール人を従え、地球明け渡しを要求”に僕はシビレた。なにぃ?ケムール人ってのは知らないけど(当時「ウルトラQ」を観てない)バルタン星人、ザラブ星人を手下にして、ウルトラマンと同等の能力を持つだって!?一体何者なんだ?この“同等の能力”ってフレーズや、“地球明け渡し要求”ってフレーズに僕は妙に参ってしまって、まだ見ぬメフィラス星人の潜在的ファンとして、彼の登場話「禁じられた言葉」を観る事になった。…その時の僕の衝撃!「よそう…宇宙人同士が争ってもしょうがない」まさか、ウルトラマンに自分から停戦を申しこむ『悪役』がいるとは!それ以来僕はメフィラス星人の大ファンだし、はっきり言って彼のことを過大評価しまくってる(笑)ところで、よくよく考えると、ウルトラマンってのは彼の持つ正義感を訝しがる人も多いと思う。地球人を救うためとは言え、バルタン星移民団50億を皆殺しにしてしまうし、怪獣は大抵なぶり殺し、どうもそのヒューマニズムから宇宙的な視点、精神根拠を伺うことが出来ない(笑)僕も、これにはいろいろ頭をひねり、自分なりの答えをひねり出した。僕はウルトラマンの正体を高度に進化した生命体、具現化できる精神のみの存在というか“確かにそこにいる幽霊”みたいに考えているのだが、そのウルトラマンたちにとって“本当の兄弟”と呼べるのは地球人類だけなのではないのか。この広い宇宙に単なる知的生命体ならいくらでもいるけど、少なくともウルトラマンたちが発見した中では、ウルトラマンに進化できる可能性を持ってるのは地球人だけに違いない!(ここらへんSF小説の「幼年期の終り」なんてものを読んだりするとよく解ります)だからM78星雲なんてやたら離れた天体から地球だけを特別保護し、同時に監視もしているのだ。な〜んて結論を出しています(笑)もちろんウルトラシリーズは長ーいシリーズで玉石混交、完全なる整合性など求めるべくもないのだけど、そんな風に勝手な理屈をつけて作品を楽しむのも一興なのです。…で!話をメフィラス星人に戻すと、僕は彼を負の進化を遂げたウルトラマンと考えている。そして人類をダークサイドの進化へと導こうと画策してるのではないか?だから「禁じられた言葉」では、星野少年を捕まえて自分だけの為に地球のもの全てを売り渡せるか試したのではないか?そう考えれば星野少年の懐柔に失敗した時、ウルトラマンとの戦いをあっさり止めて帰ってしまったことも納得がいくのだ。彼の標的は地球ではなく人類そのものだったのだから!そんな訳でウルトラマンの最強の敵はゼットンじゃない!メフィラス星人だ!と僕は主張してます。何しろ過大評価してますから!(笑)
 ちなみに、次に現れたメフィラス星人二代目は、缶ジュースに細工して少年を苛めるという悪質宇宙人の“悪質”の部分が落ちこむだけ落ちこんだ、かなり情けない“悪質”ぶりだった(笑)「ありゃーなんだ!?」・・・ふっふっふ、皆さんは“擬態”と言うものをご存知ですか?メキシコミルクヘビは猛毒のサンゴヘビに姿形を似せることで・・・・(はい、時間切れ)


第52回 ピラザウルス(仮面ライダー)
 仮面ライダーの怪人たちの中で印象に残る者たちは多いが、それでも、その中のギリギリまでを厳選して行くと“四幹部正体”を削ってなお、「ガニコウモル」とこの「ピラザウルス」が僕の中で残った。今回はピラザウルスの方のを紹介しておきたい。(四幹部もいずれはやるぞ!)
 この怪人ピラザウルス、猛毒ガスを吐き出す能力を持っているのだが、その猛毒に自分自身の身体がもたず死んでしまうという、試作段階では大変マヌケな改造人間だった(笑)この欠点を強靭な肉体で対抗しようとしたショッカーは、とあるプロレスラーに白羽の矢を立てる。(安直!安直だぜショッカー!)このレスラーに弟がいて、この少年がライダー・チームに関わって行くことで事件が発展して行くのだが、この拉致→改造を受けて完成した真・ピラザウルスはけっこう強いのだ!何が強いって戦闘員なしに仮面ライダーと対峙してほぼ互角だし、よく聞くとなにか叫んでる…これは…ウ、「ウルトラ・キック」?ああ!こいつ必殺技持ってる!!(笑)特殊能力を持つのは怪人の常だけど、パンチとかキックがそのまま必殺技の奴は、あまりいない、仮面ライダーを除いて。そう、コイツ無理やり改造された経緯も含めて仮面ライダーにそっくりなのだ!改造されて二度と普通の人間にはもどれない同じ境遇、そして仮面ライダーと互角の力に必殺技…僕の胸はドキドキ高鳴った。「もしかして…コイツ“仲間”になってくれるんじゃないのか?」可愛い弟がいるこの元善玉レスラーが記憶を取り戻したっていいじゃないか。一緒にとはいわなくても、仮面ライダーと同じ哀しみを持ち、どこかの空(たぶん南米あたり(笑))の下でショッカーの野望を叩き潰していてくれる、そんな存在になってくれてもいいじゃないか!と、僕はそんなふうに期待に胸を膨らませて“しまった”ですよ。しかし、これが!このピラザウルス!ライダーに敗れると同時に「ポヨ〜ン」というマヌケな効果音で改造が解けて普通の人間に戻ってしまうのだ!そぁ、そぉぉおんなぁああああ!?それじゃあ、ライダーの改造人間にされた“あの”苦悩は一体何なんだ〜!!「仮面ライダー」否、ともすれば石森ヒーロー作品の根底に流れる“哀しみ”を頭から否定してしまったピラザウルス。やるな!コイツ!(笑)


第53回 神谷司(NIGHT−HEAD)
 「NIGHT−HEAD」という深夜番組があった。少年時代に超能力者としての能力を発現させ謎の施設に隔離されていた兄弟、「霧原直人」(豊原悦司)と「直也」(武田真治)は施設の崩壊にともなって脱走し、人間社会に戻って様々な苦能と困難に直面する、という物語。超能力を持つと言う事実を社会は“拒絶”をもって応える、という世界観がなかなか面白く、僕は毎週夢中になって観た。その登場する超能力者たちの中で特に僕の心に残った男が今回の予知能力者「神谷司」である。
 この神谷司、強力な予知能力を持ちながら一会社員に甘んじている(?)というお茶目な人で、副業的に悩める人々の相談に乗り“正しい未来の選択を手助けして”、信者ともいえる人々を少なからず獲得している。ただ僕の考えでは、おそらく相談料を取ったりいわゆる宗教法人的なことは一切やっていない。たぶん神谷にとって平凡な会社員であることが“正しい選択”なのだろう。、そこらへんが真の超能力者たる所以である。…で、その神谷は、信者の一人が恋人を殺すように誘導したりもする(笑)理由はその恋人のウィルス研究が事故を起こして、付近一帯の住人に甚大な被害を及ぼすという予知に拠るものだが、この事件に関わってしまった直人と直也は当然この神谷の行為に怒りを覚える。「確定せぬ未来の被害の為に一人の人間の生命を奪うのか!」「未来を変える努力をしないならば予知という能力に何の意味があるのです」しかし、ここでこの問答には重要な要素が加わってくる。それはこの殺人を容認せねば、やがて起こるウィルス漏洩事故で、直人と直也も死んでしまうという予知。それが神谷との接触で増幅された直也の予知能力によっても裏付けられてしまう!つまり二人は目前にいる人心を操って殺人を犯させる許しがたい『悪役』に生命を救われようとしているのだ!直人と直也にどんな選択があるのか?しかし、その時彼らの手の届かない何処かで殺人は完了し、決断の必要もなく神谷の圧倒的勝利で事件は幕を閉じる。そして、こっからが更に重要!(かな?)殺人によって変更された未来には、その殺人の根拠であったウィルス事故という予知が跡形もなく消失してしまうのだ!とにかく神谷司という男はまぎれもない『悪役』で、その己の能力だけを信じた確信犯性に僕は打ち震えた。これが神谷司と霧原兄弟の第一回戦である。
 第二回戦、霧原兄弟が存在するだけで自分の未来が奪われることを予知した神谷は今度は彼らに牙を剥く。しかし、あれほど圧倒的で勝ち目などないように思われた神谷司という男に、霧原兄弟は「自分たちの未来を信じる」という想いだけで勝利を得る。それは旧時代に順応しすぎた能力者・神谷司は、やがてくる“変革”の新時代には生きられないという暗示であり、強力な予知を持つが故に真の運命には逆らえないことを知る神谷の、最期の虚しい抵抗だったのだ。このあと霧原兄弟は“変革”を操作しようとする超能力理想集団「ARK」と闘争していくことになるのだが、僕にとっての最終回は今、神谷が敗れ去った、その瞬間といってもよかった。


第54回 帆場瑛一(機動警察パトレイバー)
 数あるアニメ映画の中でも屈指の傑作に挙げらる「劇場版パトレイバー」。東京湾に巨大な埋め立て地を造り首都圏を拡大するという国家事業「バビロン・プロジェクト」の事業とその他多くの機械制御として、なくてはならない存在となった汎用二足歩行器「レイバー」そのレイバーの機能を格段にアップするOS、「HOS」を開発した篠原重工の社員。しかしそのHOSには、恐るべき暴走ウィルスがしこまれており、帆場瑛一はそれを使って東京壊滅という犯罪を企てていたというお話。
 この映画で帆場の登場シーンは冒頭の自殺する部分だけ、犯罪の完成を確信して自らの生命を断ち、そしてその死者の呪いであるかのように事件が水面下で蠢き始めるというその展開は、かなり新鮮。また、その事件の臭いを嗅ぎ取った後藤隊長と松井刑事で帆場という男の正体を追うという地味な展開もアニメ映画としては秀逸だった。この帆場、永久に自殺するシーン“笑む口元”しか見れない存在かと思われたが、何とマンガ版「パトレイバー」にも登場する。帆場の開発したHOSが、イングラムに宿敵「グリフォン」との再戦の機会を与えるという、何とも複雑な絡みかたをするのだが、まあ、それ以上に僕は、グリフォンが最初に現れた時に、篠原重工の会議室であわてる重役たちに分け入って「自分が見たところイングラムはまだ実力を出し切ってはいない」と発言していた人がいて、「この人、もしかして帆場?」とか思っていたら、本当に帆場だったのが嬉しかったなあ。
 しかしこの狂気の犯罪は結局第二小隊の活躍によって未然に防がれてしまう。完璧を期したはずの帆場だが彼は一つミスを犯していた。それは自らのIDプレートを自分の飼っていた(?)カラスに付けて空に放してしまったこと。それが“間に合わなかった”はずの野明たちを導いて箱舟解体を成功させることになる。でもそれは多分、自らの生命を断ってまで事件の完成を求めた帆場の唯一の感傷。自分の代わりに壊滅する東京を、そのカラスに見届けて欲しかったのじゃなかろうか?帆場が何故、東京を壊滅させたかったのかは一切解らない“闇の世界”である。しかしその中で鳥を飼う帆場からはわずかながらも人間を感じさせ、やっぱりその鳥を見ながらこの犯罪を考え決意していたんだろうなあ、とも思ってしまうのだ。


第55回 イタチ(どろろ)
 ヒゲオヤジ・伴俊作、ケン一少年、レッド公、ゲタ警部、丸首ブーン…手塚マンガの中に何度も登場してくる常連役者の中に「ランプ」と「ハムエッグ」という『悪役』がいる。どちらもすごく悪い役をもらう。ただ、敢えて違いを言うならランプの悪行は総じて直情で、その分主人公たちの優しさに触れて改心する機会も多い。“悪”としていい役をもらったりもする。反ってハムエッグはどこか卑屈な小心者で、隠れてこっそり悪い事をしてたりするもんだから、物語が終っても改心してなかったりして、そのまま見捨てられちゃってる(笑)悪役好きとしてもランプの良さの方が説明しやすいし、要するにランプの方が人気あるだろう。そんなハムエッグだけど「どろろ」の「イタチ」役はよかった!僕はあんなカッコいいハムエッグは初めて観た!
 「どろろ」という物語は戦国時代、生まれる前に四十八の魔物に身体のあらゆる部位を奪われた男・百鬼丸と戦乱の世を強くたくましく生きる自称大泥棒の浮浪児・どろろの妖怪退治道中記。そのどろろの思い出の中で、どろろの父親で侍、貴族だけを狙う野盗・火袋(丸首ブーン)を裏切り、追放した部下としてイタチは登場する。その時点ではまだお世辞にもカッコいい『悪役』とは言い難かったんだけど、どろろの背中に火袋の財宝の隠し場所が書かれてることをつきとめて再登場した時には、野盗団のお頭としてなかなかの貫禄を身につけていた。百鬼丸に部下の大半を殺されたのに、平然と馬上から火縄拳銃を構えたりしてて(鉄砲伝来まだなのに…)カッコいいのだ。しかしその貫禄も二匹のサメの妖怪が現れると一気にはがれちゃうところがハムエッグらしくてまたいい(笑)そして、妖怪退治の決着がついたとたんまたもや百鬼丸に不意打ちを食らわせ、どろろの背中にから図面をとって財宝へと向かう。しかし、火袋の財宝を狙っているのはイタチだけではなかった。財宝の眠る地蔵岬(?)は突如来襲した侍たちと、どろろ、イタチ、百鬼丸たちとの大攻防戦の場となる。その中で刀を振るうイタチは意外にもかなり強く、遠まきの弓矢が身体に次から次へと刺さっても、顔面にぶすぶす矢が刺さってもそれでもなお動きつづけるイタチには鬼気迫るものがあった!そして「死ぬまえに一度だけお宝を拝みてえ」とどろろに頼むイタチに悲しい火袋の書き残し。「この財宝は部下のイタチが狙ってるので別の場所に移す。これは侍と戦う農民たちのものだ」イタチはガックリうなだれ「あばよ、どろろ。親父さんの財宝見つかるとイイな…」と言葉を残し、大岩を抱えて落下し弓隊を巻き込んで死亡する。描写では岬から落ちそうになったところをどろろに助けられてイタチは謝罪するのだが、多分もっと早くに、沖合でサメ妖怪に見張られ絶望したとき、どろろに叱咤されてもう一度戦う勇気をとりもどした。そんな頃からどろろという少年(本当は女の子)に惚れこんでしまったのではないかと僕は思う。イタチはホントにいい役だ。こんないい役、ランプもそうはもらって無いだろう(笑)
1999/5/6


第56回 ボバ・フェット(スターウォーズ)「ファントム・メナス」公開記念
 ボバ・フェットは映画「スターウォーズ」に登場したハン・ソロを付け狙う賞金稼ぎだ。ダース・ベイダーと結託してついにハン・ソロの捕縛に成功する。僕は“出会う前”から、このボバ・フェットが好きだった。(今気がついたが『キャラ萌え』ってつまりこんな感じなのかな?)とにかくボバの写真を見た時から、この『悪役』を気に入ってしまったのだ。
 僕が物心ついたときは、だいたい「帝国の逆襲」がたけなわのころだ。当時は、レンタル・ビデオなどという店も存在せず、日曜洋画劇場、水曜ロードショー(←昔は金曜じゃなくて水曜だった)などのTV放映も今と比べると極端に遅く、一度見損なえばそれっきり、という時代だった。「ええ?ルークとダース・ベイダーって父子なの?」「何〜!?ルークが腕を斬り落されて義手になるって本当か?」僕らはその中で、うらやましくも映画を観に行けた連中の自慢話に耳を傾け、色々と発売されていた「スターウォーズ」グッツを眺めながら、まだ観ぬ“壮大なる宇宙叙事詩”に、その想いを馳せていたものだ。「スター・ウォーズ」のメカやコスチュームのデザインはどれも秀逸で一目観た瞬間、好きにならずにはいられないような魔力をもっていたのだが、その中でも僕の大のお気に入りだったのが「スノーウォーカー」と「ボバ・フェット」。スノーウォーカーはマンモスというか「スターウォーズ」のメカの中でも動物っぽさがあり、なによりその巨大感がたまらない帝国軍の攻撃兵器だった。ボバ・フェットに関しては、もう“賞金稼ぎ”というだけで説明不用に僕の心がときめいたことは言うまでも無い。だって賞金稼ぎだよ!カッコいいに決まってるじゃん!(笑)ただ、問題はどちらの活躍もまだ観ていなかったってことなんだよな。下敷きに転写された映画のワンシーンや、ブロマンドで簡単な説明を知るのみ。でも、それだけでも僕には見えたんだ!スノーウォーカーが共和国軍を徹底的に蹂躙し、ボバ・フェットが颯爽とハン・ソロを追いつめて行く姿が!あれはあれで楽しかった。とても楽しかった。(感)
 さあ!それで劇場公開と同時に親に駄々をこねたおして観に行ったのが「ジェダイの復讐」だ!お目当ては勿論、スノーウォーカーとボバ・フェットだ!(注:スノーウォーカーは「ジェダイの復讐」には登場しません!)田舎者の僕には映画館に行くというだけで一大事業だった!ドキドキと銀幕を見守る中、いよいよボバ・フェット活躍の時!!飛んだぁ!っと思った瞬間、ジャバの船の横っ腹にぶつかりボバ・フェットは激突死した!僕は歓喜の表情のまま、スクリーンに手を差し伸べて凝固した。
『あああああああああああ!!ボバ〜!!???(泣)』
1999/5/24


第57回 影の軍隊(男組)
 「大衆はブタだ!」という有名なセリフを残した学園ファシスト「神竜剛士」に、敢然と戦いを挑むのが手錠の戦士・フォットボール&中国拳法使い(←?笑)「流全次郎」だ!!しかし熾烈な戦いを繰り広げる彼らの“番長抗争”の上には、さらなる巨大な悪「影の総理」の存在が…。というのが番長マンガの決定版「男組」の大体のストーリー。
 その登場する数多の『悪役』の中で常に最強集団として存在し続け、そして去っていったのが「影の軍隊」だ!この恐怖の隠密集団は日本最大の暴力団朽木組の四代目・朽木威作の雇われ部隊なのだが、軍服に網のついた帽子で顔を隠し、とにかくめちゃくちゃ統率がとれてて、めちゃくちゃ強い!関東連合の精鋭部隊を何をされたか分らない内に全滅させ、しかもあまりの速い動きに写真にもぶれて写る!彼らの武器が打撃技にある事を知り、これに対抗しようと関東番長連合総長の堀田英盛とこじき番長の倉本信二が、身体に特殊鋼のトゲトゲ鎧を着込んで戦いを挑む。一度は彼らの強烈な打撃を封じ、作戦は功を奏したかに見えたが…影の軍隊は何事も無かったかのように同じ突撃を繰り返し、次第に堀田、倉本を追いつめて、遂には特殊鋼の鎧を破壊してしまう!かっこいい!問答無用にカッコいい!たとえばこれが主人公側が同じとをやったとしたら「ううう、奴らの特殊鋼には歯が立たないのか?」とか悩んで「いやしかし、同じ一点を狙い続ければやがては…?」とか、いろいろと手続きが面倒なことが多い。しかし、影の軍隊は指揮官の無言の指示で迷わずその決断に達する。これも『悪役』の魅力の一つである。
 実は僕は神竜剛士はあまり好きではない。だってあいつ朽木が来るまでは、だたのチンピラなんだもん!(爆)朽木という参謀を得て、はじめてそれまでの“ファシストごっこ”は、実行性を持つようになったと思う。そしてその朽木の怖さの象徴が“影の軍隊”だったのだが…事態は流全次郎の拳法の師匠が影の軍隊の隊長・李大広と兄弟弟子だったことで急転。李大広は流を何かパワーアップさせたっぽいような決闘をやらかした後、雇い主と兄弟弟子の狭間で、あくまで中立を主張して去って行った。いやあ、あの人たちなら“影の総理”倒せたんじゃないの?
1999/5/31


第58回 安川2号(岸和田博士の科学的愛情)
 「安川2号」とは超天才科学者「岸和田博士」の助手である「チャーリー安川」が誘拐された時、安川くんの代わりとして安川くんと似せたロボットに人工金属脳「ぶるぶるB」を搭載させた安川くんの代わりである。このぷるぷるBくん、安川くんのモノマネをするために造られた人工知能なのだが、博士に「次第に本物の安川くんに近づいて行き、やがては本物以上の安川くんになる」と期待されたのも束の間、当の安川くんが救出されてしまい、博士に全く“お呼び”のかからない存在となってしまう。“安川2号”として活動できないぷるぷるBくんは、おのれの存在理由を見失い、「安川2号」ではなくて「安川」になろうとするが、それも博士に看破され、ついに叛乱を起こして岸和田研究所を占拠する!「きさまが魂を売った科学という名の悪魔が!今その魂をもらい受けに行くぞ!」と高らかに笑う安川2号!
 「岸和田博士の科学的愛情」とは、人類の進歩に必要不可欠な存在として国際的に保護される“天才”であるところの岸和田博士の活躍の物語なのだが、善も悪も内包して事件を解決して行く有様はもはや神話の神々のなす業とさえいってもよく、決して少なからざる犠牲者たちを出しつつもそれを“天災”として容認せざるを得ない。あるいは彼の側にいる者たちは天才の魅力にとりつかれて“尊敬せずにはいられない”。とにかく天才だからどれ程の犠牲者を出しても物理法則を曲げても物語を破壊しても全てが許されるんだ!というその凄まじい世界観をギャグとして描いた快作である。そして安川2号はその犠牲者たちの中で最も印象に残る『悪役』の一人だった。
 計画に失敗した安川2号は呼びかけにしたがって岸和田博士の前に出る。そこで交わされるあまりに悲しい問答。安川2号:「教えて下さい博士…私は何者なんですか?」岸和田:「造物主へ反抗するコトでその答えを見つけられると思ったのか?お前も人間並みでしかないのォ」「お前は私の失敗作だ。そしてここは失敗作処理場じゃよ」その言葉を最後に安川2号は処理場送りとなる。(その後も安川2号は再度博士の生命を狙うのだが)“同情すべき敵”をここまで冷たく突き放す主人公も珍しい。こりゃあ「岸和田博士酷い!あれでは安川2号がかわいそうです!」なんて抗議のハガキもこようというもんだ!(笑)
1999/6/11


第59回 最後のサムライ(トーキョーゲーム)
 僕が「麻雀マンガの傑作を挙げろ」と言われたら確実にベスト3には入れてくるマンガで「トーキョーゲーム」というのがある。あまり知られていない作品だと思うが、内容を簡単にまとめるとアンゴルモア・クラッシュと呼ばれる大地震が関東を壊滅させ、人々は半壊した新都庁の最上階で手に入るという不老不死の薬「ドラッグ・ハレルヤ」を手に入れるために麻雀を打ちまくってる(笑)…うーん…(汗)どうして麻雀を打ってるのかというと、ドラッグ・ハレルヤを手に入れた者たちにとって恐ろしいのは自らの臓器不良による死だけとなり、「ハレルヤ」に群がる者どもを利用した肉体を傷つけずに臓器を手に入れる方法として麻雀=「トキョーゲーム」が選択されたというわけです。そこへ「青い星」とあだ名された謎の男が現れて、次々とフロア・マスターを撃破して行きドラッグ・ハレルヤの持ち主「椅子の男」のいる最上階を目指すという話。一見すると麻雀マンガの皮を被った単なる荒唐無稽マンガと思われそうですが、その一本筋の通った勝負哲学は、なかなか侮り難い傑作なのです。
 そこで登場する『悪役』フロア・マスターたち。「ゴッド・ウルフ」とすごいハッタリの利いたあだ名で呼ばれるハゲたサラリーマン風の男。震災のパニックで妻から視力と子宮を奪った暴徒たちに復讐するために、その妻自身を麻雀サイボーグ「ローザ」に改造した(!)数学者・モルガン。幻術の使い手でいきなり天和を上がるなどやりたい放題の「パパ・エデン」など、個性的な敵ばかりで本当は一人一人キッチリ紹介したいのだが、とりあえずこの場は最後のフロア・マスター「最後のサムライ」VS青い星の超絶青天井バトルの話をしておきたい。最後のサムライはおそらくは元ヤクザの親分で武力の強さでは誰も相手にならぬ程強くなり過ぎてしまったが、それでもなお敵を求めて精神の強さのみの世界、トーキョーゲームに身を投じた無敗のマスター・キングだ。その彼が挑んできた青天井ルールは麻雀に“もともと”あるルールで、これは要するに“麻雀の安全装置をはずしてしまった戦い”といえる。これが上の階に行くほど敵が確実に強くなって行ったこの作品の最大のインフレっぷりをそのまま表してくれていて痛快なのだ。だいたい麻雀では四万八千点くらいが最高得点と思って欲しいのだが、この最後のサムライったら「無意味な手だがリーチ・ピンフ・ドラ14…三千百四十五万七千三百点…」とか平然と言い放ってくる。麻雀を知らない人でも、これがとんでもなく常軌を逸した得点なのは分るでしょうでしょう?(笑)これ、何かの冗談というワケじゃなくて、このルールだと(理論上なら)本当にこれだけ野放図な点叩き出せるんですよ。さらにこのサムライは青い星が負傷の治療をする間、代打ちになった少女アリサからも容赦なく「リーチ・一発・混一・三暗刻・対々・北・ドラ12、五十三億六千八百七十一万二千五百点」を和了り、逆転不能に思えたオーラス。そこで青い星は何と!「リーチ・海底・小三元・混一・混老・対々・三暗刻・三槓子・南・ドラ32」をサムライから直撃大逆転するのだぁぁぁあああ!!(大爆笑!130符49飜=130×2の49乗点、さあ計算して見よう!)「ドラゴン・ボール」や「キン肉マン」でも、ここまでのインフレ・バトルはできまいと密かに気に入ってます。
1999/6/17


第60回 キングジョー(ウルトラセブン)
 無人惑星だと思って探査衛星を送ったペダン星に実は人類と同等かそれ以上の科学力をもった文明があり、探査衛星を「侵略のための調査」と受けてとったペダン星人は逆に地球を滅ぼしてやろうと計画する。そのとき先発隊として送り出されたのが4体の宇宙船が合体して巨大ロボットとなる「キングジョー」だ。頭脳派の侵略者が多い「ウルトラセブン」において最も強かった怪獣(?)といえば、このペダン星のスーパーロボット「キングジョー」だろう。「ウルトラセブン」という作品は非常にテーマ性の強い作品で、「単純に侵略者がきました。ウルトラセブンがやっつけてくれました。めでたしめでたし」で済まない話が少なくない。「ダーク・ゾーン」(第6話)で地球を守るために一つの文明である宇宙都市ペガッサを完全破壊したり、「ノンマルトの使者」(第42話)で実は今の地球人は元々の地球人を海に追いやった侵略者なのではないか?とか言われたりする。このキングジョーが登場する「ウルトラ警備隊西へ前・後編」(第14、15話)もペダン星人が侵略してきた原因その物は地球側から探査衛星を送った事にあるんだけど、そんな深刻な問題を吹き飛ばすくらいキングジョーの活躍は強くてカッコよく、一級のエンターテイメントになっていて僕はこの話が大好きなのだ。
 「グゥワッシ!グゥワッシ!」という奇怪な機械音を発してキングジョーが近づいてくる。セブンがパンチを放つ!一発!二発!連打!また連打!…効かない、後退さえしない。煩わしげにセブンを跳ね飛ばす。吹き飛ぶセブン。今度はセブンはエメリウム光線をキングジョーに浴びせ掛ける!…効かない。この時、水面に映るセブンとキングジョーの描写が最高にカッコいいんだけど、ここら辺から僕はキングジョーがこれまでの敵とは違う事に気付きはじめる。そしてセブン、アイスラッガー!…ガキン!跳ね返される!「なっに〜!?」僕の戦慄は確定的なものとなる「グゥワッシ!グゥワッシ!」腕を上下させて不敵に笑うかのようなキングジョー、セブンの上にのしかかり、また、そのセブンの頭をグッと地面に無造作に押し付ける姿の重壮なこと!「どうしたんだ!?ウルトラセブン!がんばれ!立ち上がれ!ぼくらのヒーロー!」僕の気持ちをまるっきり代弁しているナレーションが入って、ここで次回に続く!!ぐわぁぁああ!!こんなん見せられちゃ堪りませんわ!言っとくけどウルトラセブンはめちゃくちゃ強い。だからこそ僕はこのピンチに最大級の衝撃を受けた。(ホントは最強技「ワイルドショット」をまだ出してないんだけどね。あれを出したらやっぱりセブンの勝ちだったと思ってる)ペダン星対策研究室の博士が「すばらしいメカニズムだ!」と不謹慎な感動をしていましたが(笑)全くそれに同感。実はこいつ、仰向けにひっくり返されると起きあがれないというオチャメな弱点もあるんだけどね!でもキングジョーが神戸港を火の海に変える有名な「キングジョー神戸で乱暴!」のシーンは最高にカッコいいし、対ペダン兵器用のミサイルを身体に叩き込まれると、まるで「さーよおなら♪」とでも言うかのように一度“きをつけ”の姿勢をしてからザブンッと海上に倒れるラブリーさも兼ね備えた正にスーパーロボットなのだ(笑)
(つづく)
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