#78 いちご最終回について |
はじめまして。みなさん呆気にとられていた最終回ですが、終盤の展開について思ったことを少し書いてみようと思います。※ 行きがかり上かなり真剣に文句垂れてる(特に作者に)ような文章になっちゃいましたが、実の所それほど真剣になってるわけではありません。本人としてはかなり冗談めかした調子のつもりで書いていますので、字面から受ける真剣味は7割ほど割り引いてお読みください(笑)。 まずは、最終回の少し前辺りの状況のおさらいから。 みなさんが「西野が最愛の人である、という具体的な理由はめちゃくちゃ乏しいですしね。状況証拠ばかりだし(笑)」とか「『いちご』の西野エンドの最大の問題点は真中が西野を選ぶ理由じゃなくて、西野が真中を選ぶ理由がまったく思いつかんことだね」とおっしゃっている通り、西野ってのは真中との精神的なつながりに乏しいんですよね。西野はオウムのように「淳平君が好き」と繰り返すばかり(それじゃ北大路とおんなじだよ)で、かつて不安に耐えられず真中を振った頃から心境の変化があったようには見えない(それではまたすぐに不安に耐えられなくなって、同じことの繰り返しになるのでは?その辺り、何の成算もなく告白したのか?)ですし、真中の方はと言えば、再度つき合い始めてからも西野に対しては「お客さん状態」が抜けず、「西野は自分のどこがそんなに好きなんだろう」と自問しつつ、自分より1歩も2歩も先を行っている西野に自信なさげに引っ張られているだけ。これはもともと西野が東城の対抗馬として作られたキャラでしかないことが祟り続けていて、路線変更して西野とくっつけることにした後もなお、作者がその頃の関係性を修正し損なっているわけですね。 で、だとするとこのマンガは最終的な狙いを「真中と西野の精神的結び付き」に定めて、そこに持って行くような展開にしなくちゃいけなかったはずです。そのためにてっとり早いのは「東城をラスボス化する」ことで、「未だ東城にも真中にも未練は残っていたけど、『俺はこうこうこのように西野が好きで、だから東城ではなく西野を選んだ』『あたしは淳平君のことがこうこうこのように好きで、その部分が東城さんを凌駕した』という具体的なエピソードを経てラスボスを倒す」展開ならすっきりしたことでしょう。ルイさんのおっしゃる「でもイマイチ釈然としないというか、カタルシス・・勝利感覚に乏しいのは(何故我らが勝利するのかw)、演出で西野さんが勝利を『積んだ』わけではないから」とか GiGi さんのおっしゃる「『決戦前夜』でテンション上がったせいでその気持ちの置き場に困るというw」というのも、だいたい同じことを指摘されているんだと思います。 で、家庭教師の回辺りではその「東城ラスボス化」を狙っているのか、それとも「ここから東城が巻き返す展開」を狙っているのか判断がつきかねる状態が続いていたのですが、まさかそのどちらでもない展開になるとは思ってもいませんでした。東城が自分からあっさり勝負から降りてしまうなんて、あの学園祭後の10回分ぐらいのエピソードには何の意味があったんだー!(笑)。ラスボスを失ったこの世界では、勝利条件を達成するためにはもう、車田マンガ風に「俺たちの真の敵は東城なんかじゃない、『未だに相手のことを深く理解しようとしない、臆病な自分の心』だったんだー!」という方向にでも持って行くしかないんですが、結局それはうやむやになっちゃってるんですよね。作者としてはたぶん、「あのカラオケボックスの『その後』で2人はついに本音で喋り合えるようになりました。めでたしめでたし」ということにしてくれ、と思っているんでしょうが、でもその具体的な描写からは逃げちゃってるので、読む方の期待感はどうにもこうにも置き去りにされてしまっている。 (いやまあ、作者が東城をラスボスから降ろしたくなった気持ちはわかりますけどね。路線変更で西野によって最終ヒロインの座から蹴落とされた償いに、東城には最大限いい役を振ろうとしたんでしょう。実際、雪の日に真中と訣別し、卒業式・同窓会と真中に心揺らす気配のなかった東城は、ストーリーにはもう絡めないけど、ものすごく愛情込めて描写されていたように思えます。でもそれはさておき。) 結局、何がいけなかったかと言うと、作者が最後ストーリーマンガにしようと欲をかいたことだと思うんですよ。もともと「彼女に振られて家に帰ったら、ベッドに幼なじみが半裸で寝ていました」という気の狂った(笑)マンガなので、最後までもうずっとパンツパンツで押し通せばよかったのに、何を考えたのか最終場面ではパンツを封印してまでストーリーマンガにしようとあがいている。だけどそれまでもストーリーマンガとしては非常にお粗末な所を多々見せていたこの作者には無謀な試みで、見事に馬脚が現れちゃってるのが終盤のエピソードなんだと思います。(だいたい、当初の予定を全面変更して西野を真中の相手にしようなんていう無茶をするなら、編集がブレーンとしてしっかりストーリーをフォローしなくちゃいけないでしょうに、何をやっていたんでしょう?それとも、サポートしてなおあの水準なのか?) というわけで、みなさんやけに「辻褄が合っている」と納得されてしまっているのですが、そこまで枯れなくてもいいんじゃないでしょーか(笑)。最終回「だけ」見るともう残ってる選択肢も乏しいので「枠内ではよくやった」と評さざるを得ない部分があるのは確かですが、終盤の展開全体についてはもっとぶうぶう文句を垂れてもいいマンガなんじゃないかと思います。 以下、個別のコメントに対する私見です。 ┃LD >>…しかも「別れてくれ!」なら真っ直ぐ東┃ ┃城に行けたかもしれないのに「白紙にしてくれ」なんて逃げ(もう┃ ┃一度西野に戻れる可能性を残す)を打った時点で実はそれの自縄自┃ ┃縛になってしまった(笑) いやあ、あの時点ではたとえ「別れてくれ」と言ってももう東城に行く目はないでしょう。作者としちゃああの「雪の日の訣別」で描いた東城の辛い決意を作中で無にはすまい、と決めていたんじゃないかと思います。 ┃ルイ >> 最終回にヒトヤマを期待すると肩透かし食うぞ、というこ┃ ┃とで。 ┃ 最終回にはもう期待できるような材料は残ってなかったんじゃないかなー。やっぱりあそこから東城を選んでしまうと、何のためにあの雪の日と卒業式の東城を描いたのかわからなくなってしまいますよね。 「東城を選ぶ」以外だと…私が最終回でひょっとしたらあるかも、と思っていたのは、こんな展開です。「雪の日の回で東城が真中から精神的自立を果たし、空港の回で西野が真中から精神的自立を果たした。そして、2人から距離を置いたことで真中も成長し、数年後3人はもうお互いを必要としなくなっていた。最終回、久しぶりに再会した3人。真中の側にいたのは『やっぱりじゅんぺーの側にいてあげられる女の子なんて、私ぐらいしかいないよ』と言って真中と結婚した唯だった」―――いや、これなら、ラスト数話音沙汰なかった唯にも出番が回って、きれいにまとまるかと思って(笑)。 何にせよこのマンガで何か手を打てるとしたらやはりあの「雪の日の回」より前で、後はもう決まった道を淡々と進んで行く手しか残ってなかったと思います。 ではでは。お目汚し、失礼致しました。 ※ ところで、LDさんは、昔 Cna-BBS に投稿されていたあのLDさんですよね。投稿されていた期間は私が web から離れていた間に当たるので直接のやりとりはありませんでしたが、その前後の常連投稿者の1人として、懐かしく思います。お元気そうで何よりです。 |
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