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#283 {作品チェック} 今日の5の2 TV版とOVA版を、演出で比較してみる
投稿者:ルイ [2008/12/06 01:21]
はじめに…この文章はかなりどうでもいい意識に支配された、どうでもいい書き込みです。但し、本人それなりに真面目です、オタク的に。きっと、どうでもよい事をどうでもよくなくするのがオタクなんです。おもしろき〜(略)

 TVアニメ「今日の5の2」が、予想より面白かった。個人的に原作が苦手だっただけに、それはちょっとした驚きでした…その為、OVA版を観てその理由・違いを模索しようという風に思い立ったわけです。単純に「原作読んでた頃より、オタクとして寛容になってるんだよ!」という「俺様成長路線」で済ませてしまってもよかったかもしれませんが、気にならないような所まで気にしてのオタクでしょう?w

 自分の悪癖で、基本観る前から答えは用意してあったんですね。「OVA版はHな二次性徴コメディという“ないしょのつぼみ”同様の押し方をしているから、TV版より視点がエロい!そこにTV版との大きすぎる違いがあったんだよー!」「な、なんだってー!」という類(なんだってーは要らない)。で、実際確認してみたところ、ある程度はイメージ通り、という結論に至りました。あくまで「ある程度」でしかなかったのが、誤算と言えば誤算ですが…とりあえずTV版・OVA版ともに存在するとある回でもって、その比較をしてみましょう。


「サコツ」
 TV版では第3話の一本目(9時間目)として、OVA版では第一巻の2時間目として放映されたこの一話。TV版は5分10秒ほど、OVA版は5分ほど。時間も基本的な展開にも大差がない為、映像作品としての比較が容易になっています。この回を、展開・或いは場面から大きく三つに分けると「エロ本(グラビア)で胸を見ている男子を批判する女子、話を振られて答えに窮したリョウタが“女ってのは鎖骨じゃないかな”と言う」のが第一段階。次に「公園で女子はバレーボールを使いながら、男子はタコさん滑り台で鎖骨談義。鎖骨教祖のリョータと鎖骨モロ見せのユウキが場を逃れる為水飲み場へ」ここまでが第二段階。最後に「水のみ場でユウキに先を譲るリョウタ、意図せず胸を見てしまうものの、ユウキは鎖骨を見られたと思い怒る」ここまでです。この三段階は共通している為、そのパートパートでの時間配分などに表現の違いが見えるかな、と。まず第一段階は、「鎖骨じゃないかな」と口にするまで。TVでは1分8秒、OVAでは1分8秒…なんたる偶然!?ほぼ同じ。ならば、そこでどんなカット割りをしているかに表現意図が出るはず。そうでないなら、アニメーションなんてこれこれこんな事があって…という展開を語るだけのものになってしまうじゃないですか。映像がついているものに対してそれは、もったいない視点ですよね。

・第一段階

 TV版。グラビアを見ている所、ユウキに見咎められるコウジと少年。

 一方OVA版。グラビア三連カット(笑)。観る前のイメージ通りで、楽しくなってきたぜぇ。TV版だと5分という時間を「圧縮目標時間」として捉えているから、グラビアを見ている、という情報を見せる為には1カットで充分という判断をしている。対してOVAはその職人的な焦り、削る意識がない。寧ろ「ちょっとH」で押しているのだから、ここはお色気カットの出し所だ!という見せ方をしている。この時点で、ある程度TVとOVAの差は出ているようにも思います。


男って胸ばっかだよね…
佐藤くんもそうなんだ…
サイテー…

言ってやれリョータ!
女は胸だと!
頼むー※OVAは(頼むよー)

女ってのは…その…鎖骨じゃないかな


 セリフ自体は同じながら、ここの時間を計ると大変面白い結果が出ます。TV版は、リョータがコウジに話を振られてから「鎖骨じゃないかな」という苦し紛れに至るまでが、40秒。一方OVA版だと、28秒。冒頭のカットが同じグラビアで、鎖骨といい終わるまでの時間もほぼ同じなのに、中で割いている時間がまるで異なる。しかもTV版はグラビアのカット数を削ってまでいるのに、寧ろここの時間は50%近く長いんですね。ここに現れているのは、少年キャラのキャラ積みをしようというTV版の意図。リョウタが男性陣と女性陣との板ばさみになり、苦悩している時間をかなり割いて(そしてそこに視聴者の意識を乗せて)、元々無茶なw展開への視聴者の納得力を高めようとしている。それと比べると、OVAのリョータはいくらかすんなりと「鎖骨」に辿りついている印象は拭えません。「女ってのは」と言い出してから「鎖骨じゃないかな」と言い終わるまでの時間、TV12秒、OVA6秒…現れてますよね。


 後は大まかな差はなし。「煙に巻く」を実際煙を描くことも、モアイのような顔でケムマキ成功を確信するリョータも同じ。(男子かっけえなあw)まあ、OVAの煙が蚊取り線香程度であるのに対し、TVの煙はボワッと爆発・拡散する景気の良い煙なんですが…そこは基本的な作画力の差かな。

・第二段階

 カズミとのドッヂボールに疲れ(カズミが最初の一撃に根を持って執拗に攻撃)、休憩をするユウキ。上着を脱ぐ事がラストに繋がる為、脱いだという事実自体は描写しておかないといけないけれど、それを典型的な上PAN一発で表現しています。冒頭のグラビアカットに通じる、コンテマンの意識が伺える所。TVだけ観ていた時は、この上PANだって多少エロい視点かな、などと思ったものです。そんな頃もありましたね、私にも。あはは(苦笑)  (ルイ氏談)。


 同じPANにいく前に、何・故・か!カットを他に二つ用意するOVA版。流石です。上にある「鎖骨」の文字演出の時のユウキはほとんどハッピ着た応援団にしか見えないのに、急にやる気マンマンの作画です。リソース割く場所わかってます。

 ところでこの第二段階、TV版は2分40秒、OVAは1分55秒と大きな開きがあります。上着を脱ぐカットはOVAの方が長いのに…それはTV版に、足フェチだうなじフェチだというオリジナルな脚本が存在しているから。その差があるのに全体の5分という時間に差がないという事が面白いんですけどね。

・第三段階


 TV版。リョータが「いいよ、先飲めよ」と切り出し、ユウキが「なんかよくわからないけど、エッチ!」と叫ぶまで(つまり、水を飲むユウキにエロスを感じてしまい、それがバレるまで)を三段階目の更にコアとすると、ここの時間は約35秒。最初の下PANがTV版特有のリアルモード(?)にも助けられ、そこそこのエロさもあり。テンポよくオチを描いた35秒です。


 OVA版。まず最初の二枚がダブルで下PAN。最後のハッとするユウキも上PAN。何より、この間約1分。いかにネットリPANしているか、という事の表れなんですが(笑)リョータが変な顔したあとの胸カットも、TV版と一見同じようで…その実角度がエロいですねえ…。TV版が、ここに割いている時間の短さからもわかるように「オチ」としての役割しか求めていないのに対して、OVA版は確かにここも一つのハイライトだと考えている。尺の違いで明白です。

 とりあえず少しでもエロさを感じる所には時間を割こう、というOVAの意識が見えると同時に、その後で生まれたTV版が、キャラクターデザインも含めてそのあたりを軽く、軽く処理している、というのがTV版を楽しめた理由なのかもしれません。最初に書いた通り、「サコツ」の総時間には大差がない。そして第二段階に書いた通り、TV版の方がオリジナル会話もあり、脚本としては長いはずなんですよね。けれどその分エロ視点を短く抑えて、日常会話やリョータの悩みといった感情部分を積み上げる事で「お子様日常モノ」としての視点を強調している事が、TV版の特徴であり良さなのでしょう。

 ただ、そうは言ってもOVA版もそれなりにその「お子様日常モノ」としてのほのぼのとした視点も持っている。そのことがよく現れているのが、EDです。

左がTV版第一ED「secret base〜君がくれたもの〜」で、右がOVA版ED「約束」(以降、左はTV、右はOVA)

TV版、まさかのひと昔前の大ヒット曲ですよ。共に夕暮れの帰り道なんか描いちゃったりして、綺麗な「過ぎ去りし日々」の匂いをかもし出しているんですね。TV版第一話を観ていた時、EDが始まったとき、かなり悩みました。「ずるいなぁ」という批判的感覚と「でも、EDに至る道筋は作れているなあ」という肯定的感覚が自分の中でせめぎあった。前者だけが先行したなら、悩まなかったはずなんです。でも確かに作品として、「日常描写」を「萌え」に先行して意識しているという姿勢、或いはシチュエーションの面白みよりも個々のキャラクター描写を意識しているという姿勢が伺えたから、悩んでしまった。そして話数が進むほどに、2つの感覚の争いは、後ろの感覚が勝っていきました。

そこで「カーッ!このロリペドアニメ、EDにsecret baseなんか流しちゃって手前の本来的な魂の汚さをごまかしてるよ!終わり良ければ全て良し気分ですよ!賢しいね!狡いね!唾棄すべき作品だよ!」と言えてしまえば楽だったんですがw(そして頑張って「再生」ボタンを押したとき、まあそういう感想になるかなとも思っていたんですが)、それだと、外観で悟ってしまう決め付けの罠と大差がないという…見て面白いと思えてしまった以上、それはオタクとしては取るわけにはいかない姿勢で。その事が、OVA版もほぼ同じ形でEDを組んできた事で、ハッキリわかりました。…OVA版の方が、もうちょっと素直にそう(カーッ!このロリペド…以下略w)思えました(笑)。本編に砂かけて、匂いを消す行為に見えたわけです。

 恐らく「5の2」という作品自体が「エロさ」と「懐かしさ」を併せ持っている。例えば「よつばと」に対し、エロさを懐かしさ(架空の、ですが)と同じくらい感じていたらちょっと君俺と一緒に汗流そうぜ、とか思うんですがw本作に関してはそれは自然な事で、寧ろ原作とOVAに関しては、エロさの方が先行していた。懐かしさも排除はされていないものの、明らかに従格で…だからこそ、僕のような「二次性徴終了前の幼児へのロリペドはノーセンキューなロリ」(太字で言う事か?)にとっては、苦手な作品だった。その上下関係を逆転させたのが、TV版「5の2」なのだ、という事なのでしょう。でも、あくまで「逆転」なので、視点自体は残っているんですね。そこがこう、ピュアピュアボーイな僕を悩ませてしまう部分なんですが…でも、僕の中の質実剛健ルイ君が「じゃあなんでブルマなんだよう!ええ!?おうおう!」と正直な意見を述べると、キャストインタビューで高垣彩陽さんが

「駄菓子屋さんが出てきたり、女の子がブルマだったりと、とても懐かしい雰囲気をもった作品だなと感じています。」

 なんて言っちゃってたりなんかして、あれひょっとしてブルマである事にエロ意図を見出す俺が単に汚れてるの?ねえそうなの?orzと別の悩みを持ってしまったり…そんな切ない押し問答を心の中で繰り広げながら、TV版は楽しく鑑賞できています。
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