娯楽のハイエナ

議論用のツリー式掲示板です!
日頃疑問に思うこと不満に思うことの
書き込みにお使いください。



表紙 ツリー作成
#169 「昴」と「capeta」
投稿者:LD <2007/01/13 12:54>
柘榴さんや、いずみのさんの発言を読ませていただきますと、曽田作品にまつわるある程度の前提条件は端折って書いても(曽田作品が好きな人には)通じるかな?という気がしましたので結論等先出しにして書いて行こうと思います。

まずいきなりですが、僕は「昴」という作品について「これは曽田先生の描きたいものではなかった」という感想を持っています。もう少し正確に言うと「当初、イメージしていたものはあったのだろうけど、それとは微妙に違ったものになってしまった」というべきでしょうか?
ただ、これは“史観”とも言うべき見立てで、たとえば「capeta」と比較したとき、昴の持っているエッセンスは、まず全て勝平太に移植されていると思います。故に「『昴』と『capeta』は同じ方向のものだ」という見立てが出ても、僕は不思議には思いません。あるいはその方が自然なんでしょう。
しかし、僕自身は「昴」の連載が始まり、その物語が何回か進んだ時点で「…あ、これは曽田先生の描きたいものじゃない」という直感を持ち、連載中周りにはその事をずっと言い続けそして「昴」が完結する事なく終わった時、その事を確信しました。そして空かさず「capeta」の連載が始まり、読み、その回を追うに当たってその確信はさらに強固なものとなっています。

ところで「昴」最後に出てくる、FBIのあいつw あれ、今にして思えば「デウス・エクス・マキナ(終りを告げる神)」ですねw そして終りの神に連れて行かれそうになる昴を「あんな奴じゃなくオレと付き合わないか?」と繋ぎとめようとするあの黒人のメガネいましたよね?あれ、間違いなく曽田先生ww
イメージしていたこのとは違ったものになってしまったと僕は言いましたが、自分の生んだ娘を愛していないわけがありません。だから曽田先生(←もう決め付けてる)は昴に告白するんです。

しかし、告白した瞬間、曽田先生は即座に「げ、現実感ねええええ!!」と言ってしまうw
そして自分の事は何とも思わず終りの神の元に走り去る昴を描いてしまう。
曽田先生は「天才」の中に「怪物」の面を見出し、それに魅了されました。しかし、レシピの違いとも言うべきなのかもしれませんが「怪物の中の天才性を描く」事と「天才の中の怪物性を描く」事は大きく違うものだったのでしょう。この2者は要素としては天才と怪物という二つの要素を持っています。だからそれは「同じもの」と言えるかもしれません。しかし僕は違うものを感じたし、上記のように昴は「デウス・エクス・マキナ」に召されて“突然死”を遂げた事からも「曽田先生も違うものを感じたのだろう」と思っています。

「昴」のどこかで観客が「生まれ変わったら昴みたいになりたい」というようなセリフを言っていますが、多分、勝平太のレースを見た観客が「俺も生まれ変わって勝平太みたいになりたい」というセリフを言う事はまず無いと思います。これも昴と勝平太の違いだと思います。
言ってしまうと曽田先生は昴の中にも共感するものを描きたいと思っているので、そういった観客のセリフが出てくるのですが、その事を「げ、現実感ねえええええ!!」と感じていたから「生まれ変わったら」というセリフになってくるのだと。
曽田先生は「天才(=怪物)」を追求した作家さんだし「大吾」や「昴」を見て僕も「天才(=怪物)が描きたいんだろうなあ〜」という受け止め方をしていましたが、多分、曽田先生が本当に描きたかったのは「英雄」だったかなと思います。「capeta」見ると本当にそう思う。「英雄は天賦のもの故に天才故に怪物(人間ではない)」…という三段論の中で「自分の魅了された部分が天才(=怪物)性だったのでそこに特化した描写になった」という捉え方にもなるかと思います。それは「昴」も「capeta」もそうです(しかしレシピがブレた)。

ここで僕が漫ろに思いついた「昴」属性(あるいは「昴」が目指すべき世界)の作品をあげて見ます。
・「聖マッスル」(←ここで「聖マッスル」キタ――――!?)
・「ダビデの星」
・「地獄の家」(←この例が一番しっくり?)
・「哭きの竜」
………かな?首をかしげられそうですがw いや、その首傾げられる部分とかが、そのまま曽田先生のブレにもなっているという論旨なんで(汗)

ついでですが「capeta」属性の作品も少し…。
・「がんばれ元気」
・「キャプテン」(イガラシ編)
・「ガラスの仮面」(元々はそうだったけどマヤに“あった面”が姫川にシフトした)
・「YAWARA!」
…というかですね「属性」的に言うと所謂、努力型熱血少年マンガに入ると思います。ただし多くの努力型マンガが「僕らと同じ人間が努力によって夢をかなえる」というメッセージを送るのに対して「そうじゃない!あそこまで行ってしまう人間は僕らとは違う人間なんだ!」と言ってしまう違いになりますよね。
その意味で「がんばれ元気」は「capeta」に凄く近い存在です(元ネタとさえ言ってもいいかも)。あれもデビューと同時に無敗全KOで世界チャンピオンまで勝ち上がる少年・堀口元気と、その少年を待って10年間無敗であり続けた帝王・関拳士の対決を焦点に「普通の人生」を歩む人たちが、元気に夢を見ながら容赦なく普通の日常の中で生きて行く姿を如実に描いた作品ですが、実は「capeta」と微妙にキャラの動きが符号したりしていて、何か意図するところがあるかも??

あと「哭きの竜」を「昴」の類似に上げましたが曽田先生と能條純一先生との対比は面白いかもしれません。能條先生は元々、哭きの竜のような“怪物(=天才)”を描きたい人で、それがスピリッツに連載するにあたって、自分でそう思ったのか編集部から「もう少し目線を下げてみては?」と言われたのか、ちょっと「capeta」方向に振れてる(振れてるか?)「月下の棋士」があります??ww
哭きの竜も凄い怪物(=天才)ですw なにしろどう打とうが絶対に勝てるヒキを神様に約束されていて、尚且つ自分が次に何をツモるか全部知っている男ですからね。だから竜に肉迫する雨宮にシビれるわけですが…。
しかし、竜に拳銃向けている構成員が竜のヒキを見て「おお!俺も生まれ変わったら竜みたいにひきてえええ!!」と思うわけがなくってね。生まれ変わったって無理w 同じように昴も無理w そして竜はある日突然殺され都市伝説となって幕を引くのですが、昴もやるとすれば同じような終わり方が相応しかったように思います。

で、今回の勝平太(ナオミ・クラッシュ!)ですが、僕は「天才(=怪物)が先に行ってしまう」話だと思っていますが、怪物(=天才)の顕し方によっては物語が変わる可能性もありますね。ちょっと目が離せそうにありませんね。
  • ちょっと閑話を入れてみる 投稿者:LD <2007/01/15 20:37>
  • Re:「昴」と「capeta」 投稿者:GiGi <2007/01/14 14:24>
  • Re:スバルトカペタ 投稿者:LD <2007/01/14 13:40>