| | (左)読切り登場時の雨宮(右)連載時のデートに誘われた雨宮
……orz 読切り雨宮、人相悪いなあ…。
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ではそろそろ始めるとしよう。
己の運命に立ち向かった戦士の物語を。
■「ななか6/17」連載開始まで
「ななか6/17」は当初、少年チャンピオン誌上(2000年17号〜18号)に読切りの作品として掲載された。これが概ね好評を博したと見られ、準備期間をおいて翌2001年より本格連載が開始された。その内容は、ある日突発的に実年齢の17歳から6歳児の精神年齢に戻ってしまった霧里七華が、周囲の軋轢に晒されながらも、幼馴染みの凪原稔二の協力と、子供ならではの天真爛漫さで成り行きで任されてしまった文化祭の実行委員をこなして行くというもの。元々勉強一辺倒でクラスメートから嫌われていた七華は子供の心に戻る事で、クラスメートの気持ちを和らげ、以前とは少し違った世界を手に入れている。
基本的な構造はかなりの形で、本格連載時に踏襲されており、内容についての解説は後述にまとめるのだが、読切りの時点で既に「雨宮」が登場している事は述べておきたい。当初、雨宮はクラスのまとめ役であり、協調性がゼロの七華を嫌って、七華いじめを指示するグループのリーダーとして設定されている。ただし、完全な悪役というわけではなく、最後には折れて七華の協力をするといった役を与えられている。
本格連載に移行するにあたって、いじめの首謀者という事はなくなったが、最初は七華にはかなりキツくあたるという展開は踏襲され、クラス委員として周りから一目置かれながらも、同時に物腰自体は柔らかいものの内に秘めた戦闘的な性格を恐れられている存在として描かれる。
そして雨宮にはもう一つ……
「6歳の七華と同じ頃に既に稔二に恋をしていた」という設定が与えられる。
「序列の二位」として……それがこの物語の始まり……。
■雨宮のキャラ位置
連載時の作品解説に入る前に少しデータを示しておきたい。(※また、これ以降は6歳の七華は「ななか」、17歳の七華は「七華」と表記します)
| 話数 | 稔二 | ななか | 雨宮 | 嵐山 | 九里子 | 五月 | 七華 | ヒロ
| 第一部(1〜8巻) | 70話 | 70 | 68 | 40 | 10 | 10 | 5 | 27 | 0
| 登場率 | - | 100% | 97% | 57% | 14% | 14% | 7% | 39% | 0%
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上は、第一部における各キャラクターの登場率である。他にもセミレギュラーと呼べるキャラクターは何人か存在するが、彼らよりも登場回数は少ない。セミレギュラーの登場率があまり高い数値を示していないのは「ななか6/17」という作品の性質が、ななかと見知らぬ人との出会いを描く物語である事を示している。
当然ながらこの中でトップの登場率を示しているのは、ななかの監視役である凪原稔二である。これに正ヒロインにして主役である「ななか」が続く。…というより、ななかが登場しない時は七華が出現している時であり、霧里七華の登場率は稔二とならんで100%と言える。「ななか6/17」においてレギュラーと呼べるのは完全に彼ら二人のみという事なのだろう。
これに対してセミレギュラーの中では断トツの登場率を誇りながら、レギュラーである稔二とななかには完全に後塵を拝しているのが雨宮である。数値としては40回をカウントしているが、この中で雨宮の登場が“扉絵のみ”(※←左画像は雨宮が扉絵にのみ登場している2回分のもの)だったり(逆に言えば表紙のみでも出すという要求があったと思われる)、1ページ(1、2カット程度)しか登場していなかったりする回は7回に及ぶ。1ページ以上でもほとんど顔見せ程度という回も多数あり、実質33回(47%)以下と考える事もできる。ここらへんは実際に単行本を読んでもらえれば数値以上に雨宮の出番が少ない事が実感できるはず。
逆にななかは、表紙のみの登場というような事は一切無い。登場した回数はそのまま活躍した回数である。つまり、数値としても霧里七華と雨宮ゆり子の「序列」は非常にはっきりした形で現われていると言える。これが第二部に入ると以下のように変化する。
| 話数 | 稔二 | ななか | 雨宮 | 嵐山 | 九里子 | 五月 | 七華 | ヒロ
| 第二部(9〜12巻) | 35話 | 31 | 28 | 26 | 7 | 5 | 7 | 19 | 13
| 登場率 | - | 89% | 80% | 74% | 20% | 14% | 20% | 54% | 37%
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…雨宮の比率が稔二とななかに対して猛追をかけているのが分かるだろうか?wまあ、はっきり言って第二部は雨宮のターン!なんだけどね!!w…とか言いながら実際は七華(および七華の第三の人格であるヒロ)の登場率も上がっておりクライマックスに向けて主要人物達の物語がより濃密に描かれるようになっている事を意味している。また、猛追とは言え僅差で(数字的には)雨宮の二位は動いていない。
むしろ稔二の登場率が89%に落ちている所に注目したい。これは実は、ななか=七華の物語に稔二が登場しないエピソードが出現し始めるからなのだが、それはつまり「七華の稔二ばなれ」を意味しており、それがそのまま「雨宮の物語」とは別の「ななか6/17」という物語の解答になっている。
■「ななか6/17」の構造
さて、第1回〜第2回かけて述べてきた螺旋戦士たちと同じく、雨宮の想いを阻むものは「序列のルール」に他ならないのだが、より具体的な障壁として凪原稔二の連載時の設定変更がある。それは稔二が「怒髪の稔二」と恐れられる、常に何かに苛立ち、明けても暮れてもケンカばかりしている不良だったという事が物語の発端に設置されている事だ。どうやら父親の死を無理に乗り越えようとして心が荒んでしまったようなのだが……七華はそんな稔二を見て「…子供よね。稔二って」と呟く。この性格は七華が6歳児になってしまう事によって、それどころではなくなってしまうのだが、元々は普通の学生で単に幼馴染みという行き掛かりで、ななかの面倒を見る事になった読切りの稔二と違い、この設定は「ななか6/17」のテーマと密接な関わりを持っている。
これは「七華と稔二が一緒に大人になるために付加された設定」である。ななかと稔二の二人が大人になる冒険は、二人の二人三脚によって為されて行くべく設定されている。その事は先に述べた登場率データが如実に物語っている。
そして稔二にはもう一つ、楔が打ち込まれている。それは読切り時には七華の病気は、ある日突然七華を襲う形で現われたのに対して、連載時の七華はキレた稔二の一言によって事故を起し、精神だけ6歳児になってしまうという症状に見舞われる。これが何を意味するか?
これは、子供で不良の稔二が七華の面倒をみるように与えた「負い目」である。まあ、実際にはこの出来事は稔二が七華を病院へ連れて行く以上の機能は持たなかった(潜在的にはあったと言う言い方は可能かもしれないが)わけだけど、連載時の変更点を突きつめるとそういう事になってくる。付け加えるとこれは稔二から見た話であって、七華から見た場合、この事件は稔二に拒絶された事で、これまでの自分が何かを間違えて歩んでしまったと潜在的に気付いた…という話になる。
いずれにせよ、連載初動時において制作者はかなり強固に「七華と稔二の物語」を意識している事が見て取れると思う。これが、全部、そのまま、雨宮の壁なのだ!
実は「ななか6/17」は“物語を終わるためのテーマ”と“物語を続けるためのテーマ”という二重構造のテーマを持った作品だと言える。これは「銀河鉄道999」などが代表的で、本質的抽象的には「人生の物語」という一つのテーマで貫かれているのだが、より具体性を持った、メーテルとは何者なのか?そして終着駅では何が待っているのか?という“物語を終わるためのテーマ”と、旅の途中に訪れる不思議な惑星とそこに住む人々という“物語を続けるためのテーマ”は別と言える。言ってしまえば劇場版「999」のように前者は特化して尺短く作る事が可能なのに対して、後者は如何にしてず〜〜っと連載を続けるか?という機能を持っている。
「なかか6/17」もこれと同じく、まず“物語を終わるためのテーマ”は先に述べた「七華と稔二で一緒に大人になる」その答えを見つける事である。そして“連載を続けるためのテーマ”……それは「心が6歳児のななかが、子供の心の勢いまかせに、毎回ハチャメチャな騒動を巻き起こす」というものである。これは完全に、いくつかの“変身魔法少女系作品”にある「主人公の女の子が魔法によって大人に変身し問題を解決する」というパターンの逆の形でのオマージュで、実際に「ななか6/17」は劇中作品としてある「魔法少女まじかるドミ子」という作品が重要な位置づけをされている。
基本的に「ななか6/17」はこの両輪で物語が進んで行く。しかし、一見堅牢に見えるこの構造は実は既に突破の因子を含んでしまっていたのだが、その解説は後に回して、次は「雨宮の物語」の解説に入ろうと思う。
■雨宮ゆり子の物語
事故により精神が6歳児になってしまったななかと、ななかがそのまま高校生活を送れるように、ななかのフォローをする事になった稔二。この二人の最初の障壁として雨宮は登場する。合唱コンクールのピアノの伴奏役と目されていた雨宮を差し置いて、ななかは全く弾けないにも関わらずピアノ伴奏に立候補したためだ。最初は特訓と称してななかを苛めていた雨宮だが、子供心のひたむきさでピアノに打ち込むななかを見て心を許し最後にはななかに正しくピアノを教えるようになる。そして、しばらく経ち、風邪をひいて診察しに行った病院で、ななかの秘密を知る事になった。
この後、雨宮は稔二にななかの秘密を守り、彼女が高校生活を送って行くことに協力してくれと依頼され、一度は断るのだが、その後なし崩し的にななかと稔二を陰日向に助けて行くことになる。稔二が病気の七華に対してしか目が行っていない事に気づきつつ、延々と稔二への献身をつづけるのが雨宮の人気の原動力となっていったはずだが、雨宮のキャラクターについてもう一つ押えておきたい事がある。
雨宮が稔二の事を好きになったのは子供の頃苛められていたのを助けてもらったからだ。彼女はず〜っとその想いを忘れず抱き続けていた。…よっぽど嬉しかったのだろう。そして彼女が一度は拒否したななかを助ける事を決意するのは、クラスメートの女子たちにななかが苛められている現場に居合わせるからである。その時も、やはり彼女は昔苛められていた記憶〜しかも今回は稔二はおらず、友達だと思っていた子も助けてはくれなかった〜を思い出し、目の前で苛められているななかと自分を重ねてしまうのだが、要するに彼女は昔いじめられっ子だったのだ。そして稔二の事をず〜っと覚え続けていたというのは、稔二以外の人から、助けてもらった事はただの一度もなかったのだと思われる。(ある程度日常的にいじられていないと稔二の事を覚えている事や、その後、ななかを思わず助けてしまう流れが見えてこないのだ)
しかし、高校生になった彼女の立場は一変している。クラス委員であり、発言力を持ち、仏頂面の腕組みという、どこか周りを威嚇するかのようなポーズを決め。実際に周りからは一目おかれ恐れられている。ななかへのいじめも彼女がななかとの関わりを避けるようになった隙をついて始っているのだ。このギャップを埋める物語は作中では決して描かれる事はなかったが、何があったかはハッキリしている。彼女は自らの力でいじめられない自分を勝ち取ってきたのだ。稔二もいない。誰も助けてくれない世界で。一人で戦い、自分でなんとかしてきた。それが彼女のプライドであり、行動の原動力のはずである。そして彼女の戦う姿勢、自分の力で何かを掴み取る姿勢は作中でも一環して貫かれている。
それが、苛められるななかを無視しようと思ったのに、それでももう一度ななかを見直してしまった時「…なんで、自分はこの子を助けて上げられないんだろう?」と考えてしまった。そこに打算はなく、あの時誰も助けてくれなかった哀しい思いを自分は知っているのに、何故、それを今、見送ってしまうのか?という純粋に自らの原動力によって突き動かされた結果、彼女は「稔二と七華の物語」に関わりを持ち始める。(そして、本当に一にらみで苛めを蹴散らしてしまうんだな!…カッコいい……)
そして戦乙女のように攻撃的な鎧を身にまとってはいるが、心の中身は昔の頃と変わらない、内気に、ずっと稔二の事を想い続け、時々乙女チックな空想を楽しみ、そしてやっぱりすぐに泣いてしまったりする女の子である事が稔二の前では、次第に明らかになって行く。ここらへんの内面描写が稔二と同量か、ともすればその上を行き、ライバルであるななかや七華を凌駕してしまっているのが、そのまま雨宮ゆり子のキャラクターの「強さ」に直結している。その後、出番こそ少ないものの、雨宮は細かくななかと稔二のフォローをし続けている事が描かれる。それは描かれていない部分でのフォローも妄想させwそれがそのまま雨宮の「強さ」の積上げになって行く。
そしてまともに出たら出たでななかや稔二に対する想いを葛藤させ悩む少女としての複雑な内心描写がモロに描かれてしまう。…つまり、この時点で雨宮はちょっと(恋愛的には)ななかでは対抗できないくらい「強い」キャラになっているのだ!
■突破の因子
上項で雨宮の「強さ」の解説を行ったが、雨宮の物語は単純に雨宮の「強さ」だけで成り立っていたのではなく、そこには相反して七華の「弱さ」が働いていた事も重要な要素である。……というか序列二位のヒロインが「強く」出てくる原因は、大抵、二位ヒロインの「強さ」と一位ヒロインの「弱さ」がワンセットでなんだけどね。…しかし、それでも霧里七華の弱さは歴代序列一位ヒロインとしては群を抜いて弱い位置にいたことは否定できない。
それは「ななか6/17」の構造に直結している。基本的にこのパターンの物語は「ジキルとハイド」や「ヤヌスの鏡」と言ったような“二重人格もの”にジャンル分けされる。そして本来的には“二重人格もの”は第二の人格には何らかの問題があり、それが元の人格に戻る事によってオチがつくという構造を持っている。ところがこの物語の第二人格となるななかは問題がないキャラクターどころか、むしろ愛され歓迎されるキャラクターとして機能している。相反して七華の価値は落とされている。……というかたまに登場すると稔二はじめ、すんげえ〜気まずい雰囲気になるwえ?七華起きちゃったの…?みたいなwそして出番を6歳児のななかが占有する事によって七華が大人になってゆくフェーズは極端に制限されたものになってしまっている。稔二はななかを保護し、雨宮さんと協力して大人(っぽいもの)になって行く一方に対して、七華は停滞を強いられている。……なんか書いていて七華が可哀想になってくるんだけどw実際に連載で描写される七華は、登場するとここらへんの鬱屈が一気に吐き出されて、すんげえ〜怖かったんだよねwなんか変な負のスパイラルが起きてしまっている。本来、自らの分身である6歳のななかを敵視して抹消を目論んでおり、今で言えば霧里七華はヤンデレに分類しても何ら違和感はないキャラになっている。
それは連載作品の本能から考えても伺い知れる事である。元々、ななかは「連載を継続する為のテーマ」を持ち、七華は「連載を終わらせるためのテーマ」を持って作品が組み上がっている。(↑「ななか6/17」の構造、参照)つまり、七華が成長すればする程、一歩、一歩、終わりの時が近づいてくるのである。“作品の見えざる力”がこれを本能的に避けてしまうのは、全く無理からぬ話で、なんとかこのスパイラルから序列一位ヒロインの“はず”ではる七華を復帰させるべく、軌道修正の努力も見られるが、僕が観る限りはあまり上手く行っていない。また「ななか6/17」のキャラクター人気投票において、霧里七華(6歳ななかではない)が雨宮ゆり子を差し置いて第一位に輝くという(作者も訝しむ)快挙を成し遂げているのだが、この時、全国の「ななか」ファンが一斉に「うそつけ〜!!!」とツッコンだことは想像に難くない。あり得ん!それは!w…というか言わせてくれ!敢えて言わせてくれ!!これは奴らの陰謀なんだよ!奴らのやり方はいつもこうなんだ!……まあ、真相は分からないし実際に七華人気はあったかもしれないのだが(なんか綾波レイっぽいところあるし…)これで七華のキャラの構造的な「強さ」が上がるわけもなく……結局のところ、終わりの時が近付く中、作品が七華に対して「稔二離れ」をさせる事に気がついて、ようやくヒロインとしての道を歩み始める事になっている。
しかし、その間も雨宮は様々な葛藤の中で稔二とななかに一喜一憂する悲喜劇を続け
「雨宮の物語」はガンガン積まれて行ったのだ。
■そして幕は降りる…
しかし、それでも「序列のルール」は彼女を阻むのだ!
霧里七華を人気投票で一位にする、何かの力が!(爆)雨宮の突破を認めようとはしないのだ!……第一部の終盤において雨宮には“留学”という話が降ってくる。…この情報は最初にななかと和解した雨宮が、ななかの真っ直ぐな心に学んで「自分もあきらめずにピアニストを目指す」と言った、その言葉をずっと実行していた事を表わしている。稔二とななかのフォローを続けながら…相変わらず描かれないんだけどさ!いずれにせよ、そこから雨宮は“留学”という時限装置を持って行動をする事になる。
「ななか6/17」の構造は連載が半年〜1年弱(単行本3〜4巻)程度であれば、続けるためのテーマ(=ななか)と終わるためのテーマ(=七華)がいい配分で終了できるのではないかと思われる。しかし、人気を博して連載が続くと次第に終わるためのテーマである「七華の物語」は圧迫を受けて比率を落として行く。ここに雨宮の突破の一穴があったのだが、同時に、これまで雨宮は物語を続ける世界における「序列一位」であるななかには勝つ事ができなかった。彼女の作品全体の支配力は圧倒的であり、稔二の視線は間違いなくそっちを向いていたのだ。
そして彼女は物語を終わらせる事はできない。彼女はななかを消す事はできない…ななかを消せるのはただ、七華のみなのだ。その誘いに彼女は乗ってしまう。終盤のこの流れは、留学の設置含めて、雨宮が「序列二位」である事の限界を徹底的に見せつける展開になっている。…ヤンデレでも、傍若無人でも、物語を終わらせるテーマは七華が持っており、その玉璽は彼女が完全に掌握している。つまり、やはり七華も物語が終わる世界においては、どうしようもなく「序列一位」なのである。(※ななかが消えるというのは、やはり嫌な展開であり、それを七華が一人で背負っていたという視点もある)
そして、やはり彼女にはななかを消す事はできなかった。七華のように物語を終わらせる能力は持ち合わせていなかった……そのまま失意の内に雨宮は“留学”の道を選ぶ。最後に七華は彼女に「…逃げるの?」と声をかけ、彼女は「…そうかもしれない」と応える。
……この“留学”という展開に何かを思い出さないだろうか?そう、本稿の第一回で述べた「翔んだカップル」の杉村秋美さん、雨宮と同じ螺旋戦士の彼女が最初の退場を迎えるのも、やはり同じ“留学”なのだ……だからね!僕は敢えて言うよ?これだよ!これが奴らの常套手段なんだと!突然の転校!留学!これまで奴らはこうやって邪魔な「下位ヒロイン」をお手軽に葬り去って行ったのだ!ギャグマンガがバトルマンガになろうとも気にしない奴らが、何故か「序列のルール」だけは覆してはならない」という不可解な思い込みを持ち、上位を覆すおそれのある強い下位ヒロインには苛烈な展開を与えて「序列一位」のヒロインを守ってきた!雨宮もその処分をモロに喰らったヒロインなのだ!
そうして雨宮は退場して行き、物語は稔二と七華の物語によって終幕を迎える。杉村さんのような、強すぎた下位ヒロインの意地が働いた時のように、二人の行く末は曖昧なままその幕は下ろされる……。いつもなら…いつもならば…、この可哀想な「下位ヒロインの物語」はここで終わりである……。これまでずっとそうだったのだ……。だが「雨宮の物語」はこれで終わらなかった。いや、そうではない……
ここからが「雨宮の伝説」の始まりだったのだ。
…それは「ななか6/17」が終了した、次号の少年チャンピオン誌上で告げられる…。
2008/05/26
第四回につづく
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